国立天文台ハワイ観測所は12月20日、米国航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機とすばる望遠鏡などの地上望遠鏡の観測データを組み合わせて、木星の対流圏上層部の温度を過去最長の期間にわたって追跡調査した結果、木星の気温が四季とは関係なく一定の間隔で変動することを発見したと発表した。

同成果は、NASA ジェット推進研究所(JPL)のグレン・オートン上級研究員、英・レスター大学のリー・フレッチャー博士、国立天文台ハワイ観測所の藤吉拓哉博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

木星の対流圏は大気の低層部に位置し、同惑星のトレードマークともいえる、色とりどりの縞模様の雲を形成するなど、地球の対流圏と同様にさまざまな気象活動が起こっている。それらを理解するためには、風・気圧・湿度・温度など、さまざまな特性を調べる必要があるとする。

木星の気温については、1970年代前半にNASAが送り込んだパイオニア10号・11号のフライバイ観測以降、明るくて白い帯(ゾーン)は一般的に温度が低く、茶色や赤色の帯(ベルト)は比較的温暖であることが判明している。しかし、それらの帯の温度が長期的にどう変化するかを理解するには、今まで十分なデータがそろっていなかったという。

そこで研究チームは今回、大気の暖かい領域(対流圏上層部)からの赤外線の輝きをとらえた画像を分析し、木星の色とりどりな雲の上の温度を直接測定することで、この状況を打開することにしたという。これらの画像は、12年かけて木星が太陽を周回する様子を3周分一定間隔で撮影したものだ。

なお、今回の研究をオートン上級研究員がスタートさせたのは、ボイジャー1号と2号が木星を訪れる前年の1978年のことだという。近年は、NASAの赤外線専用望遠鏡「IRTF」(1979年稼動)、ヨーロッパ南天天文台がチリに建設した超大型望遠鏡「VLT」(1998年稼動)、そしてすばる望遠鏡(1999年稼動)という3つの地上大型望遠鏡で年数回の観測が行われてきた。

  • 木星の赤外線画像。(左・2点)2016年2月と3月にVLTで撮影された、波長8.6μmと10.7μmの画像を合成したもの。青っぽい部分は寒くて雲がなく、オレンジ色の部分は暖かく曇っている。(右)COMICSで2019年に撮影された波長8μmの画像

    木星の赤外線画像。(左・2点)2016年2月と3月にVLTで撮影された、波長8.6μmと10.7μmの画像を合成したもの。青っぽい部分は寒くて雲がなく、オレンジ色の部分は暖かく曇っている。(右)COMICSで2019年に撮影された波長8μmの画像(C)ESO/L.N. Fletcher, NAOJ(出所:すばる望遠鏡Webサイト)

ちなみに、すばる望遠鏡の観測データは、2020年に引退した中間赤外観測装置「COMICS」によるもの。2005年5月から2019年5月までの14年間に行われた20回以上もの観測で取得したデータが利用された。