京都大学(京大)は9月13日、日本時間2021年10月15日22時14分に、木星への小天体の衝突(小天体の木星大気圏への突入)による巨大閃光現象である「火球」を専用の小型観測システム「PONCOTS(ポンコツ)」を用いて観測することに成功したことを発表した。

同成果は、京大 白眉センター/理学研究科 附属天文台の有松亘特定助教を中心とした研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。

木星はその強大な重力により、直径にして数mから数10m程度の小天体を捉え、天体衝突をしばしば引き起こしていることが知られている。そうした小天体を直接観測することは大きさ的な問題から難しいが、天体衝突に伴う発光現象(衝突閃光)を観測することで、それらが木星軌道付近にどの程度存在するのかを知る手がかりになるという。

しかし、衝突閃光は継続時間がせいぜい数秒という超短時間しか継続しない上に、頻度も極めて稀であると考えられてきたほか、これまでの観測の多くがアマチュア天文家の惑星動画観測で偶然捉えられたものであり、閃光検出に特化した観測装置による検出例はなく、その特性については不明な点が数多く残っていたという。そこで研究チームは今回、短時間で発生する時間変動現象を観測することに特化した超小型観測システムを開発することにしたという。

PONCOTSは、口径28cmの市販望遠鏡に3台のCMOSビデオカメラを装着した観測システムで、可視域で最大3波長による同時動画観測が可能だという。コンパクトなため移動も容易ながら、完成した2021年夏頃はコロナ禍の影響があり、遠方の観測地への移動が困難だったことから、京大吉田キャンパス(京都市左京区)の施設屋上に設置され、木星のモニタ観測を開始したとする。

  • PONCOTS観測システム

    京大 吉田キャンパスの施設屋上に設置された、PONCOTS観測システム(画像右)を用いて木星のモニタ観測をする様子 (C)有松亘/AONEKOYA (出所:京大プレスリリースPDF)

今回観測に成功した閃光現象は、2021年10月15日、観測データの観測終了後のチェックで発見されたもので、閃光発生当時、PONCOTSは2台のCMOSカメラを稼働させていたことから、2波長による動画データが取得されたという。また、動画にゴースト像が映り込んでいたことから、さらに別の1波長での動画データを得ることにも成功したとする。衝突閃光専用の観測装置が実際に衝突閃光を捉えたことも、計3波長で閃光の同時観測に成功したことも史上初だという。

  • 木星の閃光現象

    PONCOTSが2021年10月15日に撮影した、木星の閃光現象 (C)有松亘(京都大学) (出所:京大プレスリリースPDF)