PFSの開発は、2018年からはその装置の一部を望遠鏡に取り付けてテストが実施されてきた。そして最近になり、天体の光をPFSに取り込むための重要なテストがスタート。9月21日から26日にかけて実施されたすばる望遠鏡での試験観測で行われたのが、光ファイバーが天体に対してどの程度正確に配置できているかを調べるラスタースキャンというテストだという。目的の天体が写ると予想される主焦点装置(PFI)焦点面上の位置に光ファイバーをセットした上で、望遠鏡の指向位置を少しずらしては分光器でスペクトルを取り、この動作を格子状に並んだ指向位置においてデータの取得ができるまで繰り返された。これにより、実際の光ファイバーの位置と、天体が実際に写っている位置のずれを測定できるのだという。
-
NGC 1980のフィールド観測結果。分光器モジュール1の赤色カメラで300秒露光したものに、装置特性を取り除くISR処理のみを施した、スカイ引きを行う前のCCD画像。ファイバーを通して観測された多数の星からのスペクトルが鮮明に写っている (C)PFS project (出所:Kavli IPMU Webサイト)
試験の開始後、多くの明るい星でラスタースキャンによるデータが取得され、位置ずれを修正するために可能な最適化が繰り返された。最終的に、光ファイバーをターゲットに対して正確に配置できたことが確認されたとする。なお今回の観測で得られたデータは今後、慎重に分析・議論される予定としている。
なお、次回のPFS光学観測は、11月14日~20日と12月15日~18日に予定されている。より細かいピッチでラスタースキャンが行われる予定で、可能な限り暗い天体でより長い時間露光を行うことが目標とされている。
また、PFSが科学運用を開始した後には、HSCと連携しての大規模サーベイ観測「SuMIRe(すみれ:Subaru Measurement of Imagesand Redshifts)計画」も予定されている。遠方銀河と星の広域巨大統計から、ダークマターやダークエネルギーの正体、多種多様な銀河の形成・進化の物理過程に迫る内容としている。