すばる望遠鏡の機能強化計画「すばる2」、2022年度より始動

国立天文台ハワイ観測所は現地時間3月24日、文部科学省大規模学術フロンティア促進事業「大型光学赤外線望遠鏡による国際共同研究の推進」の支援を受けて、すばる望遠鏡の機能を大幅に強化し、天文学研究に新たな地平を切り拓くプロジェクト「すばる2」を2022年度から始動するとし、同プロジェクトで開発される新型観測装置や、新たな科学目標などを概説したWebページをすばる望遠鏡(ハワイ観測所)Webサイト内「すばる2」として開設したことを発表した。

すばる2プロジェクトで新たに追加される観測装置は2つ。1つは、超広視野多天体分光器「Prime Focus Spectrograph(プライム・フォーカス・スペクトログラフ:PFS)」で、現在のすばる望遠鏡の主焦点に搭載されている、可視光での撮像で威力を発揮している超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム:HSC)」同様、主焦点に追加される観測装置で、2024年ごろに搭載されることが予定されている。

すばる2の4つの主力装置+αにつながる観測装置の変遷 (出所:すばる望遠鏡Webサイト)

主焦点に搭載される強みを活かした多天体分光装置で、一度に約2400天体もの分光が可能とされ、この稼働により、可視光分光観測では従来装置と比べて視野で50倍、同時分光天体数は20倍に向上する見込みだという。

超広視野多天体分光器PFSの分光器。同じデザインの分光器が4台、望遠鏡ドーム4階に設置される (出所:すばる望遠鏡Webサイト)

PFSの関連装置の搭載・設置位置とその主な役割 (出所:すばる望遠鏡Webサイト)

そしてもう1つは、広視野高解像赤外線観測装置「ULTIMATE-Subaru(アルティメット・すばる)」。現在、すばるの赤外線観測では、空にレーザービームを照射して「人工ガイド星」を作り、それをモニタリングすることで大気の揺らぎをリアルタイムで補正する「補償光学」技術が使われており、シャープな撮像を可能としているが、現在の技術ではその視野範囲が狭いことが課題となっていた。

本来、高解像度と広視野はトレードオフの関係にあり、両立させることは難しいとされてきた。ULTIMATE-Subaruは4本のレーザービームを空に放ち、地表近くの大気揺らぎの補正に集中する「地表層補償光学」という新技術を採用することで、その両立を可能にするという。2006年から稼働している現行の多天体近赤外撮像分光装置「MOIRCS」の視野が4'×7'なのに対し、ULTIMATE-Subaruは200倍となる14'×14'。完成すれば世界の大型望遠鏡の中でも最大級の視野となり、解像度も宇宙望遠鏡に匹敵する0.2秒角を得られると期待されている。完成は2020年代後半が予定されている。