国立天文台は8月11日、すばる望遠鏡が撮影した約56万個の銀河を、AIを活用してその形態を分類する「すばる銀河動物園プロジェクト」により、渦巻銀河の形状を97.5%という精度で自動分類することに成功したと発表した。

同成果は、国立天文台の但木謙一 特任助教らの研究チームによるもの。詳細は、英国の王立天文学会誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」(オンライン)に掲載された

銀河は、渦巻銀河、楕円銀河など、その形状から複数のタイプに分類されている。しかし、それらの銀河がどのように生まれて進化してきたのかは、銀河に関する研究において最大の謎のひとつとされている。

そこで但木特任助教らは、すばる望遠鏡の超高視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を300夜用いて行われた大規模探査計画「すばる戦略枠プログラム」で得られた画像データに、ディープラーニング技術を適用。今回の高精度な結果により、渦巻銀河として識別された銀河は約8万個あることがわかり、その多くが25億光年以上離れた遠方の宇宙に存在していることも確認された。

今回のポイントとなったのは、まずHSCの高精細画像。従来、遠方の銀河の渦巻模様を調査する画像データとしては、「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ」があった。しかし、口径2.5メートルの望遠鏡で撮影された画像のため解像度が低く、判別が難しかった。それに対し、HSCは解像度がその2倍、感度に至っては36倍もあるため、遠方の銀河であってもはっきりと判別することが可能となったのである。

しかし、検出された銀河の数は約56万個という膨大な数になり、それを人の目で識別するには大変な労力を必要とするという、嬉しい悲鳴のビッグデータとなってしまった。そこで但木特任助教が目を付けたのが、ディープラーニング技術による自動分類だったのである。

2012年以降、ディープラーニング技術は急速に発展し、現在の画像認識精度は人間の目を上回るレベルに到達している。そこで、但木特任助教は、ネコとイヌの画像識別を行えるのであれば、渦巻銀河と楕円銀河の自動分類も可能と推察。約56万個の銀河の多様な形態を分類する「すばる銀河動物園プロジェクト」を立ち上げたのだった。

同プロジェクトで利用されたディープラーニング技術は、「畳み込みニューラルネットワーク」と呼ばれるものだ。同技術では、元々の画像を直接使用するのではなく、「畳み込み」という数学的な演算処理を複数回行うことがポイント。それにより、画像の情報量を落としつつも、物体の輪郭などの局所的な特徴を効率的に捉えることが可能となるのである。

今回は銀河の形態を、「S字型の渦巻銀河」と、その回転方向が反対の「Z字型の渦巻銀河」、そしてそれ以外の「渦巻模様のない銀河」の3種類に分類。つまり、S字型とZ字型の分布を調べれば、宇宙における渦巻銀河の分布がわかるという形での自動分類を実施し、渦巻銀河は25億光年以上遠方の宇宙に存在するという結果となったのである。それを受け、国立天文台では今後、宇宙が本当に一様で等方的なのかを調べる研究を進めるとした。

またすばる望遠鏡では、新型の「超高視野多天体分光装置」(PFS)が2022年からの稼働が予定されており、同装置を用いた銀河までの距離を測定する大規模探査計画が進められている。それに対して但木特任助教は、「銀河までの距離がわかれば、その銀河が何億年前の宇宙にあるのかがわかります。この銀河の形態が時間と共にどのように変化してきたのかを調べたいです」とコメントしている。

  • S字型の渦巻銀河

    すばる望遠鏡のHSCが撮影した約56万個の銀河画像から、自動分類された25億光年以上彼方にある「S字型の渦巻銀河」と「Z字型の渦巻銀河」 (出所:国立天文台すばる望遠鏡Webサイト) (C) Tadaki et al./国立天文台