名古屋大学(名大)と国立長寿医療研究センター(NCGG)は10月18日、血中ビタミンD量が不足している人は将来的なサルコペニア罹患率が上昇すること、筋線維内ビタミンDシグナル伝達の低下が筋力低下と直接的に関連していることなどを、「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の縦断解析および、ビタミンD受容体を成熟した筋線維で欠損させた遺伝子組換えマウスを用いた基礎研究により明らかにしたと発表した。

同成果は、名大大学院 医学系研究科 整形外科学の水野隆文医員、NCGG 運動器疾患研究部の細山徹副部長、名大大学院 医学系研究科 整形外科学・今釜史郎教授らを中心に、NCGG 老化疫学研究部、名古屋学芸大学、東京大学、松本歯科大学、医療創生大学の研究者も参加した共同研究チームによるもの。詳細は、サルコペニアや筋肉喪失などを扱う学際的な学術誌「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載された。

サルコペニアは加齢に伴って生じる骨格筋減弱症だが、その発症や増悪化の分子機構は不明であり、また診断や発症予測に有用なバイオマーカーの同定にも至っていない。そうした中でこれまでの研究において、ビタミンDの加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されていたとする。

ただし、そうした先行研究の成果も多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたものであり、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や、加齢性疾患であるサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠が十分に提示されたとはいい難い状況だったという。

そこで研究チームは今回、NCGGが愛知県大府市・東浦町の地域住民から性・年代別に層化無作為に選出された40歳以上の中高年者を対象に、医学・心理・運動・身体組成・栄養などの多角的な観点から老化・老年病予防策を検討する長期縦断疫学研究(コホート研究)として実施しているNILS-LSAのデータを用いて、血中ビタミンD量が低値の人の4年後の筋力変化や筋量変化、さらに新規サルコペニア発生数などについての検討を行うことにしたという。