京都府立医科大学とメタジェンは9月29日、サルコペニア肥満モデルマウスを用いた実験により、ミツバチがさまざまな種類の植物から集めた樹脂状の物質である「プロポリス」を投与すると腸内細菌叢の乱れが改善され、サルコペニア肥満の発症を予防できることを明らかにしたと発表した。

同成果は、京都府立医科大 大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学の岡村拓郎病院助教、同・濱口真英講師、同・福井道教授、山田養蜂場、メタジェンの共同研究チームによるもの。詳細は、サルコペニアや筋肉喪失などを扱う学際的な学術誌「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載された。

サルコペニア肥満とは、加齢に伴い筋肉が減少するサルコペニアに肥満が合わさった病態のことをいい、糖尿病をはじめとする種々のメタボリックシンドロームの原因として注目されている。しかし現時点では、サルコペニア肥満に有効な薬剤は存在しておらず、その開発が課題となっている。

そこで研究チームは今回、プロポリスに注目することにしたという。プロポリスが腸内環境を改善することで、過食と不活動により惹起されたサルコペニア肥満の予防効果に対する調査が行われた。

プロポリスは、「蜂の糊」とも呼ばれ、ミツバチがさまざまな種類の植物から集めた樹脂状の物質のことをいう。プロポリスとその抽出物は、防腐、抗炎症、抗酸化、抗菌、抗真菌、抗潰瘍、抗がん、免疫調節などの作用により、さまざまな病気の治療に数多く応用されており、ブラジル産グリーンプロポリスは、ヒトおよび動物において、脂質代謝、肥満、インスリン抵抗性を改善することが報告されている。

今回の研究では、悪玉菌が増加したサルコペニア肥満モデルマウスにプロポリスを投与。その結果、「短鎖脂肪酸産生菌」が増加し、腸内の炎症を改善することが示されたとする。短鎖脂肪酸は、腸内細菌が作る有機酸であり、腸内で悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整える作用があることが知られている。

また、プロポリスに含まれる「アルテピリンC」および「ケンフェライド」が筋肉細胞に投与されたところ、筋肉の萎縮や炎症が有意に改善することが確認されたともしている。

  • 今回の研究の概要

    今回の研究の概要 (出所:京都府立医科大プレスリリースPDF)

なお、今回の研究成果を踏まえ研究チームでは、今後、ヒトを対象とした研究により、有効性と安全性の確認をしていきたいと考えているとしている。