2022年1月17日より、無精子症をともなう不妊治療において、体外受精(IVF-D)に使用する非配偶者精子の一般公募を開始した、はらメディカルクリニック(東京都渋谷区)。一般公募の開始とともに精子提供者が非匿名で提供を行うことも可能とする方針を発表していた。

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一般公募を開始した理由について同医院は、精子提供者不足の解消や、陰で行われているSNSでの精子取引の抑止力につながることへの期待を挙げている。

また、これまでは匿名で行われてきた精子提供を、精子提供者の同意が得られた場合に、非匿名で行うことを可能にした理由については、子どもが自らの出自を知る権利を保全するためとしていた。

公募開始から約3カ月が経過した現在、公募の状況や精子提供者、患者の反応などについて、同医院の宮﨑薫 院長に取材を行った。

  • はらメディカルクリニックの宮﨑薫 院長に取材を行った

    はらメディカルクリニックの宮﨑薫 院長に取材を行った(写真提供:はらメディカルクリニック)

非匿名の希望は全体の約72%

まず応募の状況についてだが、公募開始以来、実際に面談に来院した数は、2月に22名、3月に25名、4月に15名だったという。

ただし、面談後に精子提供者の条件※1を満たしているかどうかの検査や家族歴による遺伝リスクの検証があり、これらの基準が厳しいため、合格するのは希望者のうち50~60%となっている。

精子提供者のうち非匿名での登録を希望した割合※2は、2月78%、3月80%、4月56%だった。2月から4月までで合算すると全体の約72%となるという。

同医院でも、匿名より非匿名を承諾した提供者の割合が有意に高いという結果に驚いたという。

なお、応募者の動機は「子供を望みながらそれが叶わない夫婦の役に少しでも立ちたい」や「無精子症の男性の割合が想像よりも多い事を学び、自分に出来る事をしたいと考えた」など“困っている人を助けられれば”という理由が多かった。