同大量絶滅時には長期間の大規模火山噴火の影響でCO2などの増加による地球温暖化が急速に進行し、陸地では酸性雨が降り注ぎ、それに加えてオゾン層が破壊されたことで有害な紫外線も降り注いだと考えられている。そして海洋は酸素欠乏状態となっていき、重金属汚染も深刻化していった。このような環境では真核生物は繁栄できず、海洋・陸上の両方で大量絶滅が発生したと考えられている。

C33の起源生物は、そのような海洋において、減少してしまったほかの藻類の代わりに海洋一次生産性を支えるべく登場した、一次生産者最後の命綱のような役割を果たしていたと考えられるという(災害時に増殖する災害種)。

C33はペルム紀末大量絶滅時以外の時代の地層からは産出しておらず、このように多くの海洋生物が減少してしまったときに特異的に産出する化石であることから、「ペルム紀末大量絶滅時の海洋生態系崩壊マーカー」とされている。そして、世界各地の同大量絶滅を記録した地層記録において用いられてきた。

海洋生態系崩壊のマーカーとなる化石は主にペルム紀末大量絶滅時の地層に産出する化石と考えられてきたが、今回の研究により、その直後の前期三畳紀にも産出することが判明。前期三畳紀は生態系の回復過程の時代であり、化石記録が乏しいことから、前期三畳紀中における環境変動と生物多様性の関係性は、一部の化石記録を除き、はっきりとはわかっていない。

今回、海洋生態系崩壊のマーカーとなる化石が前期三畳紀から産出したことを踏まえ、研究チームでは、前期三畳紀においても、海洋生態系が崩壊するほどの環境悪化が発生していたことが示されたとする。大規模火山活動と海洋生態系崩壊マーカーの同時性はおそらく、ペルム紀末大量絶滅の原因と考えられている大規模火山活動の再燃により、前期三畳紀の地球環境が再悪化し、生物多様性の回復を抑制していたことが考えられるとする。

  • 約2億5000万年前の古地理図と海洋生態系崩壊を示す化石の産出時代および産出位置

    約2億5000万年前の古地理図と海洋生態系崩壊を示す化石の産出時代および産出位置。南中国は今回の研究、スピッツベルゲン、グリーンランド、オーストラリアは先行研究に基づく。チャンシ.はチャンシンジアンの略。チャンシンジアンはペルム紀のサブステージ、インドゥアンとオレネキアンは前期三畳紀のサブステージ。古地理図上の数字は、下段の各地域の数字に対応 (c) Ryosuke Saito (出所:山口大プレスリリースPDF)

ただし、今回の研究成果はあくまで南中国の一地点から発見されたものであることから、今後は、海洋生態系崩壊がどの程度の地理的分布をもって広がっていたのか、大規模火山活動の影響が南中国のみの局所的なものなのか、それとも汎世界なものなのか、その影響の規模を調べることで、ペルム紀末大量絶滅からの生物多様性の回復過程と地球環境変動の関係性について明らかにしていくことが期待されると研究チームでは説明している。