アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)と竹中工務店は12月16日、共同でオンラインによる記者会見を開き、竹中工務店がAWSを戦略クラウドプロバイダーとして建設プロセスをデジタル化し、データを活用したインサイトを活かして継続的な生産性向上に取り組んでいると明らかにした。

製造業と比較して半分の生産性しかない

竹中工務店の歴史は古く、創業は初代・竹中藤兵衛正高が神社仏閣の造営を業として1610年、創立は1899年。現在は建設工事に関する請負、設計および監理などを手がけ、グループ全体の従業員数は1万3171人を抱えており、グループ会社は子会社が55社、関連会社が12社、そのほか関係会社が1社と、日本を代表する大手建設会社だ。

同社では、2025年のグループ成長戦略に「グループで、グローバルに、まちづくりにかかわる」を掲げており、まちのライフサイクルの企画・計画、建設、維持運営による、サステナブル社会の実現を目標としている。

将来に向けた成長戦略を掲げている同社ではあるものの、現状の建設業界について竹中工務店 グループICT推進室長の岩下敬三氏は次のように指摘する。

「社会では第4次産業革命が進行しているが、建設業界はいまだ第3次産業革命にとどまっていると個人的には実感している。これは、現行の施工現場では大半の作業が手作業だからだ。1990年代は製造業と同程度の生産性だったが、現在の製造業は工場内のロボット化・自動化により生産性は向上している一方で、建設業は人手の作業が多いことから、デジタル化が進んでおらず、製造業と比較して現在は半分の生産性しかない状況だ」(岩下氏)

  • 竹中工務店 グループICT推進室長の岩下敬三氏

    竹中工務店 グループICT推進室長の岩下敬三氏

2030年に目指す姿

このような建設業界の環境に加え、技能労働者の不足は深刻化しており、2025年の技能者数は2014年比で128万人減の216万人と見込まれている。また、2019年に施行された改正労働基準法では、年次有給休暇の取得義務化や残業時間の罰則付き上限規則などの適用が建設業においては猶予期間を経て、2024年4月から開始されるため、年間労働時間も制約を受けることになる。

そのため、竹中工務店では建設業界全体の課題を解決するめにもデジタル変革の必要性を説いており、2030年に向けてデジタル変革で目指す姿の策定を進めている。

同社では2030年にデジタル変革で目指す姿として、顧客に対しデジタルデータを用いて事業をサポートし、課題解決提案や事業機会の供出を実施するほか、フロントローディング(業務の初期工程に負荷をかけて作業を前倒しで行う手法)で品質・コスト・スピード感を持った価値の提供に加え、建築とそのプロセスでサステナブルな価値の提供を、同社の情報部門+事業部門一体で活動するとしている。

  • 竹中工務店が2030年にデジタル変革で目指す姿

    竹中工務店が2030年にデジタル変革で目指す姿