富士通は5月12日、米Amazon Web Services(AWS)と自動車メーカー、保険、物流などのモビリティ業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)加速に向けたグローバルにおける協業に合意したと発表した。

今回、この協業について、富士通 Mobility事業本部FMアクセラレーター事業部 事業部長 神俊一氏とアマゾン ウェブ サービス ジャパン 第一ストラテジックパートナー本部 本部長兼第二ストラテジックパートナー本部 本部長の相田哲也氏に話を聞いた。

  • 富士通 Mobility事業本部FMアクセラレーター事業部 事業部長 神俊一氏

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン 第一ストラテジックパートナー本部 本部長兼第二ストラテジックパートナー本部 本部長の相田哲也氏

両社は協業の下、「フルマネージドのモビリティソリューションの開発」「モビリティ領域におけるAWSのプロフェッショナルサービスを活用したシステムの開発」「AWS認定資格の保有者育成による、AWSクラウドを活用したシステム開発の体制強化」に取り組む。

フルマネージドのモビリティソリューションとしては、富士通のコネクテッドカーのデータ活用やサービス開発を支援する車載カメラ映像解析基盤「FUJITSU Future Mobility Accelerator Digital Twin Analyzer」やストリームデータ処理基盤「FUJITSU Future Mobility Accelerator Digital Twin Utilizer」、モビリティデータの利活用を支援する統合基盤「FUJITSU Future Mobility Accelerator Digital Twin Collector」、車両のセキュリティ管理を行う管理センターであるV-SOC(Vehicle-Security Operation Center)の技術を核としたフルマネージドのモビリティソリューションを開発する。

富士通は今年4月に、「Digital Twin Collector」を発表し、モビリティデジタルツインを提供していくことを表明している。同社はモビリティデジタルツインとして、実世界で発生するデータを収集したうえでサイバー空間にコネクテッドカーの状態を再現し、アップロードされるデータの分析や加工を行うことで写像データを拡張し、価値あるデータに変えて提供していくことを目指している。

加えて、AWSのクラウドサービスを導入済みまたは新規で導入する企業に対し、AWSのプロフェッショナルサービスを活用し、基幹業務やモビリティサービスのシステム開発・運用、既存システムのモダナイゼーションのサービスを提供する。まずは、今年6月より国内で提供を開始し、欧州、北米をはじめグローバルに順次提供していく。

さらに、モビリティ業界を担当する富士通のシステムエンジニアを対象に、AWSが認定する資格の保有者を新規で750名育成し、AWSクラウドを活用したシステム開発の体制を強化する構えだ。

  • 富士通とAWSのモビリティ業界における協業の概要

富士通も当然、クラウドサービスを提供しており、関連技術を有しているが、なぜAWSと協業するのだろうか。神氏はその理由について、次のように語った。

「モビリティの世界では、コネクテッドが当たり前。また、モビリティ業界では、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)が重要とされているが、そこでは安定した基盤と連携することが求められている。だからこそ、安定したクラウド基盤を持っているAWSと連携することにした」

今回開発するフルマネージドのモビリティソリューションはAWS Marketplaceを通じて提供することも計画されているが、「AWS Marketplaceを活用することで、グローバルなオファリングが容易になる」とも神氏は語った。

AWSの相田氏は、同社のモビリティ業界に関する体制について、「他の業種と同様に、自動車分野に関しても、営業や事業開発のチームを強化している。オートモーティブ分野においても強化している」と述べ、既にソニーやフォードなど大手企業で、同社のモビリティ関連のサービスが使われていると説明した。

今回の協業の効果について、神氏は3つあると述べたうえで、次のように説明した。

「コネクテッドの世界では、人命に関わるクルマがネットワークに接続するため、安心かつ安全なクラウド環境が必要となる。また、サイバー攻撃のリスクも増しており、セキュアな環境でデータを保有しなければならない。AWSのパートナーである自動車関連のクラウドセキュリティベンダーの自動車クラウドサイバーセキュリティのUpstream Securityとはわれわれも協業しており、3社で顧客を守っていく。AWSと協業することで、グローバルのオファリングができる点もメリットと言える」

また、相田氏は協業の効果について、「富士通のプロバイダーとしてのこれまでの実績は、顧客に対する安心感となる。また、コネクテッドおよびモビリティの分野で、われわれのマネージドサービスを活用した開発に期待したい」と語っていた。