アマゾン ウェブ サービス ジャパンは8月19日、レポート「クラウドへの移行による、アジア太平洋地域での二酸化炭素排出削減の実現」を発表した。

同レポートは、アジア太平洋(APAC)地域の5カ国(オーストラリア、インド、日本、シンガポール、韓国)の多様な業種にわたる民間企業・公共機関500社・団体を対象に調査を行い、日本では100社・団体から回答を得たという。

説明会では、調査を行った451Research/S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスグループ データセンターサービス兼インフラストラクチャ担当リサーチディレクターのケリー・モーガン氏が、レポートのポイントを説明した。

モーガン氏は、レポートのポイントとして、アジア太平洋地域(APAC )において 企業のワークロード( IT 関連業務)をオンプレミス(自社所有)のデータセンターからクラウドに移行すると、エネルギー消費量とそれに付随する二酸化炭素(CO2)排出量を78%削減できる可能性があることを説明した。

78%の内訳は、クラウドサーバの利用による最大67%の削減とクラウドデータセンター施設による最大11%の削減となっており、モーガン氏は、ITインフラのエネルギー効率を左右する2つの主な要素として「サーバ」と「データセンター施設」を挙げた。

  • 「クラウドへの移行による、アジア太平洋地域での二酸化炭素排出削減の実現」のポイント

日本は6カ国中最もデータセンター内のサーバの使用期間が長いという結果が出ているが、モーガン氏は「サーバを長く使うとコストは下がるが、サーバは古ければ古いほどエネルギー効率が下がる。クラウドのデータセンターのサーバは平均して2年ごと刷新されており、テクノロジーも最新のものが使われている」と指摘した。

このように、日本では、「サーバのライフサイクルが長い」「新しいサーバプラットフォームの導入が遅い」「平均的にサーバクラスタが古い」ほか、「韓国やインドなどに比べると仮想化率が低い」といった理由から、ITエネルギー効率がAPACの平均値を下回っているという。

  • 日本の調査結果のポイント

続いて、アマゾンウェブサービス アジア太平洋地域兼日本担当エネルギー政策責任者のケン・ハイグ氏が、同社のクラウドサービスが実現するCO2排出量の削減について説明した。

AmazonとGlobal Optimismは2019年9月19日、パリ協定を10年前倒しで達成することを約束する「気候変動対策に関する誓約(The ClimatePledge)」を発表した。そして、「2025年までに、事業で必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうこと」「2040年までに、CO2排出量を実質ゼロにすること」を掲げている。

ハイグ氏は、AWSのエネルギー効率性について、サーバとデータセンターの2つの観点から説明した。サーバに関する取り組みとしては、Amazon傘下のAnnapurna Labsが開発したプロセッサ「Graviton2」がある。Graviton2プロセッサは64 ビットのArm Neoverse N1 コアをベース にカスタマイズされている。ハイグ氏は、Graviton2がAmazon Elastic Compute Cloud (EC2)で採用している他のプロセッサと比比べて、1ワット当たりのパフォーマンスが3.5%高いと語った。また、データセンターにおいては、ディーゼル発電を置き換え、電力の変換方法を変更するなどして、CO2の消費を35%削減したという。

なお、Amazonは2020年、世界最大の再生可能エネルギー調達企業となり、事業全体における再生可能エネルギー利用率は65%に達したとのことだ。

  • Amazonの再生可能エネルギーへの取り組み