鹿児島大学、竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)、法政大学(法大)の3者は7月5日、宮古島から発見したゴキブリの1種「ベニエリルリゴキブリ」を新種として発表した。

同成果は、鹿児島大 農学部 害虫学研究室の坂巻祥孝准教授、竜洋昆虫自然観察公園の柳澤静磨職員、法大の島野智之教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本動物分類学会が発行する生物学、生命科学、基礎医学を題材とした英文学術誌「Species Diversity」に掲載された。

ルリゴキブリ属のゴキブリは日本ではつい最近まで石垣島、西表島に生息するルリゴキブリ「Eucorydia yasumatsui」の1種のみが知られていた。しかし2020年11月、研究チームによって宇治群島家島、吐噶喇(とから)列島悪石島、奄美群島奄美大島、徳之島に分布する「アカボシルリゴキブリ」(Eucorydia tokaraensis)と、与那国島にのみ生息する「ウスオビルリゴキブリ(Eucorydia donanensis)の2種が発見され、報告されていた。

今回、研究チームは新たに沖縄県宮古島にてルリゴキブリ属の「ベニエリルリゴキブリ(Eucorydia miyakoensis:ユーコリディア・ミヤコエンシス)」を発見したという。これで日本のルリゴキブリは4種類となった。

  • ベニエリルリゴキブリ

    今回発見されたベニエリルリゴキブリ(オス) (撮影:柳澤静磨氏) (出所:鹿児島大プレスリリースPDF)

ベニエリルリゴキブリは宮古島にのみ生息し、オスの全長が12.5~13.0mm、上翅の基部に黄赤色の微毛を持ち、上翅中央部には明瞭な黄赤色の帯状紋を持つことが特徴。ルリゴキブリの仲間は日本の南西諸島を北限とし、東南アジアや南アジアなどにまで広く分布している。いずれも美しい青色の金属光沢や、鮮やかな橙色の紋などを持っている美麗種で、通常は森林内の朽ち木内などで、腐植質などを食べて生活をしている。

  • ベニエリルリゴキブリ

    横方向から見たベニエリルリゴキブリ (撮影:柳澤静磨氏) (出所:鹿児島大プレスリリースPDF)

今回の研究では、日本産ルリゴキブリ属の系統関係を解明するため、DNA解析が6遺伝子座に関して行われた。その結果、ベニエリルリゴキブリは日本産のルリゴキブリ3種とは明らかな別種であることがわかり、研究チームの形態による分類結果が支持された。

このベニエリルリゴキブリは、生息環境が宮古島のみと限られていることから、絶滅の危機に瀕している可能性があるという。ルリゴキブリ類はオークションで野生個体の取り引きもあり、今回新種として発表されることにより、注目を集め種の存続に重大な支障が生じる恐れがあるとする。

そのため、昨年11月に与那国島から記載されたウスオビルリゴキブリとともに2021年7月1日に「種の保存法」における緊急指定種として指定が行われており、捕獲・殺傷・販売などが法律下で制限されることとなった。日本におけるゴキブリ類で、「種の保存法」において国内希少野生動植物種または緊急指定種への指定が行われたのは今回が初めてだという。