TrendForceによると、Qualcommの5G RFICやSSD向けコントローラICの供給不足により、2021年第2四半期のスマートフォン(スマホ)メーカー各社の生産数は当初計画よりも約5%減少する可能性があるという。

これは米国テキサス州で生じた寒波に伴う停電の影響を受け、オースティンのSamsung Electronics子会社Samsung Austin Semiconductorのファブが2月16日~3月2日まで操業停止に追い込まれた影響だという。同工場はすでに稼働を再開しているが、ファブ全体の稼働率が停電前の状態に戻るのは3月末以降とみられている。

同ファブで生産されているのが自社向けLSIやCMOSイメージセンサ、有機EL向けDDICなどのほか、ファウンドリとしてSSD用各種コントローラやQualcommの5G RFICなども手掛けており、しかもQualcommの5G RFICが月間生産能力の約30%を占める規模だという。

TrendForceによると、Samsungは地元の電力会社から停電になる数時間前に警告を受けていたため、事前に停電に備えることができたことから、停電によるWIP(仕掛品)ウェハの損失は最小限に食い止めることができたが、ファブの再稼働に2週間以上を要しており、その間、ウェハの投入はなされなかったことから、すでに生産能力がひっ迫しているファウンドリ業界に影響をもたらし、さらなる半導体不足を引き起こす懸念があるという。

具体的には、2021年第2四半期の5Gスマホの生産数量が当初計画比で最大30%減少する可能性があるという。ただし、5Gスマホの生産不足を4Gスマホの生産増で補う可能性があるほか、各スマホメーカーの既存在庫を考慮すると、同四半期のすべてのスマホ生産数量の減少幅は約5%程度に留まると予想されるという。

一方、SamsungのOLED DDICは、主にAppleのiPhone 12シリーズ向けだが、Appleは、少なくとも短期的には十分なDDIC在庫を持っている可能性があるほか、iPhone 12 miniを予想よりも早く生産終了(EOL)とすることで、不足量を最小限に抑える可能性があるとTrendForceでは予想している。また、最近、iPhone 11(有機ELではなく液晶パネルを採用)の販売が最近復調気味だとのことで、そちらの生産量を増やす可能性があり、同四半期におけるDDICの供給不足によるiPhone全体の生産量への影響は限定的であるともしている。

なお、TrendForceでは、2021年のスマホ生産台数を当初予測の13億6000万台のまま維持している。ただし、今回の件を踏まえ、5Gスマホの割合が従来の38%から36.5%へと下落する可能性はあるとしている。