進化するガラスの世界

イノベーションの競争は、勝ち抜くのが難しいものです。企業は関連性を維持するために、時代とトレンドの変化に応じて常に自社および自社の製品を改革する必要があります。

イノベーションの競争を勝ち抜くために、コーニングでは、技術向けガラスとその多くの特性、そして多数の潜在的なアプリケーションに焦点を当てています。170年の歴史の中で、世界のガラスの見方を変え、ガラスをもろい材料から、厳しい環境に耐えることができる、丈夫で損傷に強いものに変えてきました。

イノベーションが進化するにつれ、最良のイノベーションは、シンプルなアイデアに由来する場合があるということが明らかになりました。車載用ガラスソリューションビジネスで最近適用した技術の一例を紹介したいと思います。

自動車でも利用可能な高品質な曲がるガラス

ボウル、ソーサー、コップのような家庭にある成形ガラスを思い浮かべてください。従来の製造プロセスでは、成形ガラスは高価な熱間形成(Hot mold)と型(tooling)を必要とします。

それぞれのガラスは、溶融ガラスから始まり、型内で加熱されて目的の形状になります。

コーニングでは、成形プロセス中に熱をかけないことで、このプロセスを簡略化できないか検討してきました。そして、このアイデアは、2019年初めに特許取得済みのCorning ColdFormテクノロジーとして現実のものになりました。

車載用インテリアデザインのトレンドが、スマートフォンのようなインタラクティブ性とデザインにシフトするにつれて、サプライチェーンは費用対効果の高い高品質な製品およびプロセスソリューションを求めています。

今日の自動車は、カーナビゲーションからインフォテインメント、各種の重要な制御機能まで、すべてがディスプレイに組み込まれています。車載ディスプレイの普及により、湾曲したコンソールやコックピット全体で、スマートフォンのようなインタラクティブ性とタッチ感度が求められます。しかし、各曲線は3つの重要な表示属性(環境光の下での光学的透明度、高解像度の画像および耐久性)の維持管理の課題をもたらします。

コーニングのColdFormテクノロジーは、独自のフュージョンプロセスで成形した板ガラスを、平坦に保つことを可能としました。また、成形プロセスから熱を取り除くことにより、薄くて、光学的に有利な、耐久性のあるガラスを、室温で曲げて曲面を覆うことができるので、これらの課題解決につなげることも可能としました。

ColdFormテクノロジーの3つの利点

従来、板ガラスは、型の中でガラスを再加熱し、続いてガラスをたわませたり圧したりして、冷却する前にその形状をとることによって形作られてきました。

熱間成形の追加コストに加えて、このプロセスでは、3つの属性を解決するときに課題が生じます。光学処理と装飾処理は再加熱プロセスに耐えることができず、成形後に適用する必要があります。次に、耐久性を高めるための化学強化と組み合わせた再加熱プロセスにより、部品間の幾何学的均一性が低下します。これによりディスプレイと光結合する際にムラが発生するなど、モジュールの組み立てが複雑になり、コストが追加されます。

ColdFormテクノロジーは、これらの重要な表示属性を実現する3つのユニークな利点をもたらします。1つ目は、熱曲げのコストを省けるという点。2つ目は、ガラスがフラットな状態で光学処理と装飾処理を行う事ができるので安価にすることができるという点。3つ目は、サプライチェーンにてディスプレイとカバーガラスをフラットな状態で光学的接着を高歩留まりで行うことができるという点です。

  • alt属性はこちら

    コーニングのColdFormテクノロジー、耐久性が求められる車載ガラスを、室温で曲げて、インテリアディスプレイなどの曲面に使用留守ことができる

S字型曲面デュアルディスプレイモジュールを搭載した自動車

このイノベーションは、CES 2020にて、コーニングのブースで展示されたGAC Motor(広州汽車集団)の新型電気自動車「Aion LX SUV」で披露されました。GACとの協業で、最大サイズのカバーガラスを備え、世界初のS字型曲面デュアルディスプレイモジュールを搭載したAion LXのインテリアデザインは、近未来型の自動車を想起させ、この車の横で写真を撮るためや、ダッシュボードを窓越しに見るために人だかりができたほど好評でした。

  • alt属性はこちら

    CES2020展示車両。コーニングの車載ガラスを搭載したGAC のAion LX

  • alt属性はこちら

    Aion LXインテリア・コンセプト。世界初のS字型曲面デュアルディスプレイモジュールを搭載

CES 2020では、GACとのコラボレーションに加えて、LG ElectronicsおよびVisteonとのパートナーシップを発表し、Corning ColdFormテクノロジーで車載用インテリアデザインの可能性を拡大しました。

ColdFormテクノロジーは、自動車のデザイナーやエンジニアのための新しいソリューションです。シンプルなアイデアこそが、私たちの日常の可能性を広げます。

著者プロフィール

大岩葉子
コーニングジャパン
オートガラスソリューション セールスマネージャー