過去20年で最悪のマイナス成長率を記録した2019年

英国に本拠を置く市場調査会社Omdia(旧IHS Markit)が、2019年の半導体企業売上高ランキングトップ10を発表した。

それによると2019年の半導体企業の売上高総額は、前年比11.7%減の4285億ドルとなった。これは、Omdiaが2001年にデータ収集を開始して以来、2009年に記録した同10.9%減という下げ幅を超える半導体業界にとって最悪の下落率となった。

2019年は半導体市場が少なくとも過去20年間で最大のマイナス成長となった年であり、上位10社の半導体サプライヤのうち8社が売り上げの減少に見舞われ、すべてのアプリケーション市場ならびにすべての地域市場において売上高の減少を記録したという。

また、2019年の売上高トップ10社の売上高の合計は、同16.6%減の2407億ドルで、全体に占める割合は56%となっている。半導体業界全体の売上高の減少率よりトップ10社の減少率のほうが大きいのは、2017年、2018年と続いた半導体メモリバブルがはじけた影響で、2~4位を占める半導体メモリ大手3社の売上高がいずれも30%前後下落したためである。ちなみにトップ10社を除いた半導体業界の売上高の下落率は同4.3%減にとどまっている。

  • 2019年の半導体企業売上高ランキングトップ10

    2019年の半導体企業売上高ランキングトップ10 (単位:百万ドル) (出所:Omdia)

日本勢の姿が消えたトップ10

2019年の売上高トップとなったのは前年比1.3%増とプラス成長を達成したIntel。代わって前年トップながら、半導体メモリバブルの崩壊の影響を受け、前年比29.7%減と大きく下げたSamsung Electronicsは2位に後退した。3位のSK Hynix、4位のMicron Technologyもそれぞれ同36.9%減、同32.8%減と大きく下げたものの、順位に変動はなかった。また、2018年は8位にランクインしていたNAND専業のキオクシア(旧 東芝メモリ)も同2桁減のマイナス成長でトップ10から姿を消す結果となった。

5位以下の順位の中で、5位のBroadcom、6位のQualcomm、7位のTexas Instruments(TI)、および9位のNVIDIAについては2018年より順位の変動がなかった。

2018年の8位であったキオクシアがトップ10外となったため、代わりに8位に入ってきたのは2018年は10位だったSTMicroelectronics、そして10位には2018年11位だったInfineon Technologiesと、欧州勢がそれぞれ入ってきた。

Intelの生き残りをかけた多角化戦略

売上高トップに返り咲いたIntelは、この5年ほどの間にビジネス戦略をさまざまな重要製品と最終製品市場に集中することで業績向上を狙ってきた。この戦略は2019年に一定の成果を上げ、従来のようなPC市場一辺倒といった状況から、さまざまなアプリケーションで売り上げを立てることができるようになり、半導体メモリバブル崩壊の影響下にあってもわずかながら成長を果たすことができた。例えば伝統的なコアビジネスであるMPUビジネスの成長率はほぼフラットであったが、ロジックチップ全体の売上高としては同7.1%増を達成したとする。

Intelは現在、データセンター、自動運転を含むIoT、SSDなどに向けた3D NANDフラッシュメモリ、プログラマブル半導体、PC事業の5部門に分かれているが、こうした取り組みの結果、2019年はそのうちの4部門で成長を達成し、全体として過去最高の売上高を記録することができた。

特に推進役となったのはデータセンターグループ(DCG)とIoTグループ(IoTG)で、DCGが売り上げ全体の33%を占め、前年比2.1%増の成長率を達成。全体の5%を占めるIoTGも同10.6%増の成長率を達成。データセンター業界が、2019年上半期、積み増した在庫を用いて販売を行っていたため、データセンター向け半導体市場が同16.2%減となったことを考えると、DCGのプラス成長は平均販売価格(ASP)の引き上げがあったものの、評価されるべきであるとOmdiaはコメントしている。また、Intelが自動運転分野の強化のために買収したMobileyeの売上高は同25.9%増を達成したという。

Omdiaの半導体製造担当シニアアナリストであるRon Ellwanger氏は、「PC中心のマイクロプロセッサーサプライヤーと見なされてきたIntelは、ロジックチップからソフトウェア、AI分析まで、さまざまなソリューションのベンダーに変身した」と述べている。さらに同氏は「Omdiaは、Intelの多角化戦略が良い時も悪い時も会社に貢献し続けると信じている。メモリなどのコモディティ分野は常に好況と不況のサイクルの波に乗っているが、Intelは持続的な成長を実現できる魅力的な半導体市場セグメントと付加価値製品に基盤を築いている」とIntelの戦略を評価している。