インターステラテクノロジズ(IST)は6月26日、2019年夏に観測ロケット「MOMO4号機」の打ち上げを予定していることを明らかにし、併せてMOMO4号機のスポンサーが決定、ネーミングライツを取得したpaters(ペイターズ)により機体名称が「ペイターズドリームMOMO4号機」と命名されたことを明らかにした。
MOMO4号機のスポンサーとして今回明らかにされたのは以下のとおり(順不同)。
- ペイスターズ
- キャステム
- OWNDAYS
- 丹下大氏
- 平和酒造
- サザコーヒー
- GROSEBAL
- レオス・キャピタルワークス
- 高知工科大学
5月4日にMOMO3号機を打ち上げ、早ければ7月にもMOMO4号機は打ち上げられる予定。機体スペックは3号機、4号機ともに同じとはいえ、わずか2ヶ月ほどで準備を整えた背景について、ISTの堀江貴文 取締役は「4号機は3号機の予備部品としてあらかじめ用意されていたものを活用するので、1ヶ月程度で完成する」と説明。3号機の成功に続き、4号機も成功すれば、本格的なサブオービタルロケットの商用化に向けた大きな一歩になることを強調。そうなれば量産型への移行も加速度的に進んで行き、そうなればもっと早いスパンかつ低コストで打ち上げを行っていくことができるようになるとの見通しを示した。
また、ネーミングライツを取得したpatersの代表取締役CEOである日高亜由美氏は、「幼少期、種子島で暮らしており、ロケットが打ち上げられるたびに島にゆかりのある人だけでなく、日本中から注目される様子を見てきたこともあり、ロケットは多くの人に夢や希望を与えられる存在だと感じていた。そうした宇宙へのあこがれもあり、今回の話をいただき、支援を決めた。patersは、夢を追う女性と、それを応援する男性のためのマッチングアプリであり、patersで出会いを機に人生を変える人が多くなることを願って、ペイターズドリームと名付けた」と、命名に至った経緯を説明した。
このほか、機体にはフェアリング部分には、3号機のスポンサーでネーミングライツを取得した丹下大氏の「宇宙(そら)にシフト!」と掲載されるほか(同氏は4号機の打ち上げボタンも押す予定)、タンク部分にはOWNDAYSと掲載される予定となっている。
MOMO4号機で挑戦する7つのミッション
これだけ多くのスポンサーが集まったMOMO4号機では、7つのミッションが設定されている。
1つ目のミッションは、今回の打ち上げの目玉とも言える「宇宙から折り紙飛行機を飛ばしたい!」と題された取り組みで、キャステムの代表取締役社長で、折り紙ヒコーキ協会の会長も務め、紙ヒコーキ室内滞空時間のギネス世界記録の保持者でもある戸田拓夫氏が発案したプロジェクト。
MOMO4号機で高度100kmの宇宙空間まで紙飛行機を運び、新たに開発した放出機構から、3機の紙飛行機を放出。地表までの飛行、降下を目指すというもの。ただ、MOMO4号機の機体サイズなどの関係から、放出機構の穴のサイズが直径2cmとのことで、2cmの穴から飛び出した後に、翼を広げて飛行できる新たな紙飛行機の型として扇子を模した構造を考案。扇子を飛ばして、その飛び方や目標への命中の仕方などによって獲得点数が変わる日本の伝統的な遊びである投扇興になぞらえ、「宇宙扇(うちゅうせん)」と命名された3機の紙飛行機の放出の様子はカメラでリアルタイムで地上で補足される予定で、「地上には1機くらい降りてきてもらいたい」(戸田氏)とのことで、見つけた人はぜひ届け出てもらえれば、とした。届け出ても賞金は出ないとのことだが、ISTでは過去、気球を飛ばした際に、それを発見した人に記念品を贈呈した過去もあることから、「記念品とかを渡したいとは思っている」(堀江氏)としている。
同プロジェクトについては、もし成功すれば、今後は紙飛行機にカメラを取り付け、飛行の様子を録画するなどの発展が考えられるほか、放出機構そのものについても「小さい荷物を地上に返すことも可能になる。MOMOの使い方が拡がる重要な実験となる」とISTの稲川貴大 代表取締役社長も新たな可能性について言及するなど、期待が大きい取り組みとなっている。
2つ目のミッションは「日本酒でロケットを打ち上げたい!」と題された取り組み。平和酒造が作る日本酒「紀土(きっど)純米大吟醸 宙(そら)へ!!」を一升ほど蒸留し、ロケットの燃料として添加して、宇宙を目指そうというもので、燃料以外の紀土 純米大吟醸 宙(そら)へ!!については、MOMO応援酒として、原材料や人件費などの必要費用を除いた利益のすべてをスポンサー費用として5号機の開発・打ち上げに提供されるという。
「MOMOはアルコール(エタノール)で飛ぶロケット。公式の記録でお酒でロケットを飛ばしたことはないはずで、世界初、お酒で飛ぶロケットとなる。また、同じ酒を買ってくれた人も文字通りの一口スポンサーになれる。国産のロケットを国産の日本酒を通して、みんなで飛ばそうという思い。5号機もきっと宙へ行くでしょう、という思いもこめている」と平和酒造 代表取締役の山本典正氏はその思いを語る。
3つ目のミッションは「宇宙で音を捉えたい!」と題された取り組みで、3号機でも搭載された高知工科大学・山本真行 教授のインフラサウンドセンサ(超低周波音マイク)の再び搭載されることとなる(MOMO4号機では前回の成果を踏まえた改良型が搭載)。
山本教授は、「3号機の実験結果がある中で、次の実験が行える。しかも短い期間で比較ができる。1回の実験ではなかなか分からないことが多いが、立て続けに科学実験ができる環境が得られて、スポンサーになってくれた企業などには感謝している」と、科学実験として連続して取り組む重要性に言及した。
4つ目のミッションは「コーヒーを宇宙に届けたい!」、5つ目のミッションは「ハンバーガーを宇宙に届けたい!」とそれぞれ題された取り組みで共通点は飲食物を宇宙に送り届ける、という点。コーヒーは、世界一高い値段のコーヒーや、世界一高い点数がつけられたコーヒーを購入するなど、こだわりのコーヒーを出すことで知られるサザコーヒーが1杯1万2000円で提供する「パナマ・ゲイシャ」を豆の状態で200g、宇宙に飛ばそうという試み。一方のハンバーガーはGROSEBALの試みで、3号機で同社の「とろけるハンバーグ」が搭載された経緯から、今回はハンバーガーへと進化を果たした。
「ハンバーガーのデリバリサービスをやっていることもあり、惑星間をロケットで行き来する未来を見据え、一足先にハンバーガーを宇宙にデリバリーしようと考えた結果」(GROSEBAL 代表取締役の吉田茂司氏)とのことだが、今回のハンバーガーのチーズは大樹町の坂根牧場の手によるものとのことで、地元とのコラボも意識したものになっているとする。
6つ目のミッションは「メガネを宇宙に送りたい!」と題されたミッションで、OWNDAYSが7月初旬に300店舗目を沖縄に出店するお祝いもかねた取り組み。宇宙船にも使われている樹脂素材「Ultem(ポリエーテルイミド)」を採用したメガネを同社は展開しているが、「宇宙船で使われている素材ということで、メガネ自身も宇宙に連れて行ってもらおう、と遊び心を持たせた企画」(OWNDAYS代表取締役の田中修治氏)という。
そして7つ目のミッションは「ひふみろを宇宙に連れていきたい!」と題された取り組み。2号機からスポンサーとなっているレオス・キャピタルワークスのマスコットキャラクターの「ひふみろ」を、宇宙に連れて行ってあげたい、という試みで、ひふみろのぬいぐるみを、ヘリウムタンクの部分、紙飛行機の放出機構の下付近に取り付けて、宇宙へといざなうという試みで、レオスとしてもひふみろとしても、引き続きサポートをしていきたいという思いから、今回の企画に至ったという。
ちなみに、これらの取り組みの一部は7月10日までクラウドファンディングのCAMPFIRE上にて行われているMOMO4号機の打ち上げ支援プロジェクトのリターン対象となっているものもあるので、ISTの活動を支援したいという人は、どういったものがあるのかを見てみるのも良いだろう。
なお、稲川氏は今後のスケジュールとして、7月4日にMOMO4号機の機体公開をメディア向けに行う予定としたものの、肝心の打ち上げ日程については、明らかにせず、改めて射場のある北海道 大樹町にてアナウンスを行う予定であるとしている。