テクトロニクスは2月18日、日本地域の顧客に向けた校正などの各種サービスの拡充を目的に、神奈川県大和市に新たなサービスセンターを開設した。

  • テクトロニクスの大和サービスセンター

    テクトロニクスの新サービスセンター

同社サービス・ソリューション部門のヴァイス・プレジデント兼ジェネラル・マネージャを務めるビル・プラット氏は、「近年、テクトロニクスはテクトロニクス、ケースレー、フルークといった自社製品に関するサービスに加え、他社の製品の校正などを手がけるマルチベンダサービス、そして計測機器などを中心としたアセットマネジメントに注力している。中でもマルチベンダサービス(MVS)は、我々が提供しているような電子関連の計測機器に限らず、温度や圧力、トルクレンチ、放射線、度量衡など、さまざまな測定機器も対象としている。より多くのサービスを提供するためには、今までの設備では老朽化やスペースの問題があった。新サービスセンタは、こうした問題を解決することを目指して2年がかりのプロジェクトとして活動をしてきた結果となる」と、今回の新サービスセンター開設の背景を説明する。

  • 鏡開き

    開設に際して開催された関係者が集った式典では鏡開きも執り行われた。中央の青いはっぴの人物がビル・プラット氏

また、大和市の旧日本IBM大和事業所の跡地を活用したこともあり、立地も良く、「よりよい人材に加わってもらいやすくなったのではないか」(同)と、人材確保の面でも意味があることを強調。「数十人規模のエンジニアに常駐してもらっているが、この規模は3年前から30%ほど増加した数となる。今後も人員の増加は継続して行っていく」と、サービスの拡充に向けて人員拡充を積極的に行っていくとした。

グローバルで活動する企業だからこそのノウハウ

新サービスセンターと旧サービスセンターの広さは設備などが異なるため、一概に言えないが、同氏によると「ワーキングスペースは1割くらい広くなったほか、スペース効率を向上させたことから、ユーティリティの広さとしては2割ほど向上した」とする。

  • オフィスの様子

    オフィスの様子。コールセンターのオペレータが常駐し、顧客からの相談の受付などを行う

こうして広くなったスペースで従来以上の規模で校正や修理を行うこととなるわけだが、自社の機器ならともかく、MVSになれば、触ったこともないような機器が持ち込まれる可能性もある。「我々はグローバルにサービスを展開しており、他社製品の作業手順に対してもマニュアルを整備したり、自動化のソリューションを開発したりといった取り組みを進めることで、どのエンジニアであっても、手順を踏まえれば、同じような校正などができる仕組みを構築済みだ」とのことで、マニュアルが用意できている機器であれば、どのようなものでも対応が可能だという。

  • サービスセンター
  • サービスセンター
  • サービスセンター
  • テクトロニクスの製品の校正・修理を行うスペース。認証取得された帯電防止の作業台なども完備されている

こうした取り組みにより、MVSは近年、急速に事業規模を拡大。現状、同社のサービス・ソリューション部門の売り上げの半数弱ほどの規模までに成長を果たしたという。中でも日本のサービス・ソリューション部門は、同社全体の同部門の成長率の2倍の勢いで成長しているとのことで(自社製品の校正サービスなどを含む)、今回の新拠点の開設も、そうした勢いをさらに加速することを目的としたものとなる。

  • サービスセンター
  • サービスセンター
  • 規定温度±1℃の管理がなされた校正ルーム。微小電流を扱う機器などの校正を行う

  • alt属性はこちら
  • alt属性はこちら
  • マルチベンダサービスのための部屋。写真には写っていないが、壁際にある棚には、校正などをまっている他社の計測機器などが置かれていた

単なるサービスの提供からソリューションの提供へ

修理や校正依頼の件数が増加し、ビジネス規模も増加する同社のサービス事業だが、現在、さらなる顧客の利便性向上に向けた取り組みが進められている。同社がクラウドベースのアセット管理ソリューションとうたって展開しているオンライン校正プログラム管理ツール「CalWeb」の普及促進である。

CalWebは、顧客が自身がどのような資産(機器)を有しているのか、またそれぞれの機器がいつ校正や修理をしたのか、といった管理を行うデータベースツールであるが、こうした基本的な機能に加え、顧客の全資産のうち何%が校正対象外になっているといったことや、どの機器が遊休資産となっているか、といったことなども把握することができるもので、同氏も「顧客が従来使ってきたシステムに近い形にシステム構成を変更することや、11言語への対応など、フレキシブルな対応ができる。また、各種の認定機関などが求める監査に対応する機能も設けており、そうした外部監査を受けている企業に対してバリデーションレポートの発行なども可能となっている」とその特徴を説明する。

こうしたツールは、テクトロニクスがクラウドベースで提供して、顧客に活用してもらうため、顧客側のコスト負担が少ないという点も特徴。「我々は顧客がやっていることを全部ヒアリング、実際に調査を行って、それに併せてカスタマイズを行っていく。Go to Genba!という言葉で推進している取り組みだ。そうすることで、使っていない無駄な資産や、老朽化した資産が見える化できたり、故障頻度が把握できたり、といったことを事務所や国をまたいで顧客は実現できるようになる」とするほか、「データベースの解析を行うことで、顧客にさまざまな知見を提供することも可能となる。例えば、機器が壊れた場合、直したほうが良いのか、それとも新しいものを購入したほうが効率が良くなるのか。もし新しい機器を購入するのであれば、どういう機種を選ぶのがよいのか、といったことをアドバイスすることも可能となる」と、単なる校正管理のためのデータベースではなく、データに基づくソリューションとして活用できるツールであるという。

「世界中のさまざまな規模の顧客をヒアリングした結果、彼らからは、『(自社が)何を有しているのか』、『どこに設置されているのか』、『きちんと校正されて使える状態にあるのか』、『それらが有効に活用されているのか』という4つの要望に集約されることが分かってきた。CalWebは、こうしたニーズに応えるためにバージョンアップを行ってきた。特にこの数年、コンプライアンスの遵守が求められる頻度が増してきており、計測機器についても、いつどこで、どういった方法で整備されたのか、といったことを企業全体で管理できる体制が構築されているか、といったことも求められるようになってきており、こうしたソリューションの導入要望も高まってきている」と同氏は、時代の変化も後押ししているとしており、将来的には、サービス・ソリューション部門のメインビジネスが、校正などのサービスそのものから、データベースを活用したソリューションサービスへと移っていくであろうとの見方を示す。

そのため、同社では、CalWebを真のグローバルシステムへと進化させていくためのバージョンアップを今後も継続して行っていくことで、顧客企業が有するさまざまな機器の有効活用に向けたサポートを継続していくとしている。「部門名が単なるサービスではなく、サービス・ソリューションとなっているのは、こうした意味合いがあるため。単に校正したり修理したり、という部門ではない」と語る同氏。よりよいサービスの提供が可能となった新たな拠点を活用していくことにより、今後、同社のサービスを活用しようという日本企業の増加が期待される。