月の南極と北極には確かに氷が存在することが分かった、と米航空宇宙局(NASA)の研究チームが21日に発表した。これまでさまざまな観測や研究から月面に氷が存在する可能性が高いとされてきたが、NASAは今回の研究結果について「氷が存在する直接的かつ決定的な証拠」と強調している。研究論文は20日付の米科学アカデミー紀要に掲載された。
研究チームは米ハワイ大学やカリフォルニア大学シリコンバレー校の研究者らで構成された。同チームは、2008年にインド宇宙研究機関(ISRO)が打ち上げた月周回衛星チャンドラヤーン1号に搭載された装置が収集したデータを詳しく分析した。この装置はNASAのジェット推進研究所(JPL)が月に分布する鉱物地図を作るために開発した「月面鉱物マッピング装置(M3)」。同チームの説明によると、M3は氷が反射する光を観測できるだけでなく、氷とみられる物質が赤外線を吸収するかどうかを測定することにより、その物質が固体の氷か液体の水か、あるいは蒸気かが判別できるという。
研究チームはM3のデータを長い時間をかけて詳細に分析した。その結果、南極の極点近くのクレーターのほか、北極の周辺にも氷が存在することを証明するデータが得られたという。月の回転軸の傾きは極めて小さいため極地には太陽光が当たらない。今回存在が明らかになった氷は年間最高温度でも絶対温度110度(セ氏・マイナス約163度)未満の極低温の場所に集中しているという。
NASAはこれまでも、チャンドラヤーン1号による観測データなどから、月の北極や南極には氷が存在する可能性が高い、としていた。NASAは今回、M3の詳細な分析データを研究論文としてまとめ、発表文(プレスリリース)で初めて「直接的かつ決定的な証拠を観測した」という表現を使った。
月面の氷は、将来長期間の有人月探査が実現した際には貴重な水資源として使用できる可能性がある。
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