新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などは7月25日、NEDOプロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」において、従来と比較して光の損失を1/10に低減し、5倍の効率で電気信号を光信号に変換できる半導体光変調器の開発に成功したと発表した。
同成果は、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 竹中充准教授らの研究グループによるもので、7月24日付の英国科学誌「Nature Photonics」オンライン版に掲載された。
データセンタやIoT、人工知能の分野において、膨大な情報を高速かつ低エネルギーで通信するためのシリコン光集積回路の重要性が増しているが、電気信号を光信号に変換する効率が悪く、光損失も大きいことが課題となっていた。同プロジェクトでは、この課題を解決する新たな光変調器の開発を進めてきた。
今回の研究では、シリコン光導波路上に、光学特性に優れた化合物半導体の一種であるインジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP)を貼り合わせることで、インジウムガリウムヒ素リン中の電子により誘起される屈折率変化のみを用いた光変調動作を実証した。
実証に成功した素子の光位相変調部は、二酸化ケイ素上にシリコン層が形成されたSOI (Silicon on Insulator)基板上に作製されたシリコン光導波路上にゲート絶縁膜となるアルミナを介して薄膜インジウムガリウムヒ素リンが貼り合わされた構造となっており、光位相変調部に電気信号を入力することで光の位相が変調され、光変調信号が出力される。
結果として、従来のシリコン光変調器に比べ、光損失を1/10に抑制しつつ変調効率を5倍に高めることに成功。また、多値変調による100Gbit/秒の高速変調においても良好な光信号が得られることが明らかになった。
同研究グループは、今回の成果について、高効率かつ低損失の光変調に新たな手段を与えるものであり、光変調器を利用したデータセンターの高性能化・省電力化のみならず、次世代光ネットワークで必須となる光スイッチや自動運転車で必要となるレーザースキャナなど幅広い応用が期待されると説明している。