東京医科歯科大学(TMDU)は4月19日、ヒトインフルエンザウイルスを選択的に捕捉する新たな導電性高分子を開発したと発表した。

同成果は、東京医科歯科大学生体材料工学研究所バイオエレクトロニクス分野 合田達郎助教、宮原裕二教授、同大学医歯学総合研究科ウイルス制御学 山岡昇司教授らの研究グループによるもので、4月5日付の国際科学誌「ACS Applied Materials Interfaces」オンライン版に掲載された。

近年、強毒性の鳥インフルエンザなどの新型インフルエンザの流行が危惧されており、迅速かつ高精度にインフルエンザウイルスの型を判別することが望まれている。しかし、従来の免疫法や遺伝子解析法などによるウイルスの検出は、感度・時間・コストなどの面に課題があった。そこで今回、同研究グループは、高感度・高精度かつその場で診断が可能な小型・可搬型の電気的インフルエンザウイルス検出法を実現するための機能性材料の開発に取り組んだ。

具体的には、インフルエンザウイルスの型を識別するために、ウイルス表面のタンパク質「ヘマグルチニン」がヒトなどの動物へ感染する際に細胞膜表面に存在する糖鎖の種類の違いを認識するという分子機構に着目。これを、電気伝導性が高く化学的に安定で、希少元素・有害元素を含まない、インク液として材料に塗布・修飾できるといった多くの利点をもつ導電性高分子(PEDOT)と呼ばれる機能性プラスチックと組み合わせることを考えた。

そして、A型インフルエンザウイルス(H1N1)が認識する糖鎖配列を組み込んだ導電性高分子を新たに合成し、さまざまなセンサ表面に修飾したところ、目的の型のウイルスのみが選択的に結合することを確認。さらに、電気的計測法においてウイルスの検出感度は、従来の免疫法と比べて100倍高いことが明らかになった。

ウイルスの感染機構に倣った分子認識システムは汎用性が高く、糖鎖の種類と配列を変えることで異なるウイルスの検出にも対応できるという。同研究グループは今回の成果について、インフルエンザの感染拡大防止に寄与するウエアラブルセンサの開発に貢献することが期待されると説明している。

インフルエンザウイルスと糖鎖修飾を施した導電性高分子との相互作用の模式図 (東京医科歯科大学Webサイト)