ボーダフォン・グローバル・エンタープライズ・ジャパン(ボーダフォン)は9月13日、「2016年度版ボーダフォンIoT普及状況調査レポート」の記者説明会を実施した。同レポートはこれまで「ボーダフォンM2M普及状況調査レポート」として発表されていたもので、今年で4年目となる。

今回は世界17カ国、9業種、1096人のビジネスリーダーに向けてインタビューを実施。本稿ではその中で主だった調査結果と、それに対するボーダフォン IoT ジャパン カントリーマネジャーである阿久津茂郎氏の見解を紹介する。


ボーダフォンの阿久津茂郎氏

今回の調査では、76%の企業がIoTを将来の成功に「不可欠なもの」と回答。また、63%の企業が来年中に業務向けプロジェクトを開始したいと答えている。また、IoTの導入に取締役会が関与している企業で、IoTが「不可欠だ」と回答している企業は86%にも及んだ。この結果について阿久津氏は「組織横断的にIoTプロジェクトを進めるときはリーダーシップが重要」とコメント。しかし、「日本だけを抜き出すとこの数字はおそらく低くなる」と感じているとのことで、日本の経営層に対してIoTへのコミットメントを求めた。

IoTに対する関心が高まる中、経営層のリーダーシップが成功のカギを握る

IoT導入の費用対効果(ROI)について同調査では、IoTの導入によりほとんどの企業がROIを確保できており、社内で複数のIoTプロジェクトを実施している企業はより高いROIを得られていた。一方、IoTプロジェクトにおいて運用しているデバイスが100台未満の場合でも55%の企業が高いROIを得られたと回答しており、同氏は「小規模、パイロット導入でもROIを得ることは可能」だとする。

また、ROIに関連して「顕著なROIを確保」したと回答した企業のうち、21%が10%超の増収を達成。このような成功の理由について阿久津氏は「目標をきちんと設定したうえでプロジェクトに取り組んだのではないか」と分析する。同氏によればIoTプロジェクトにおける目標設定のプロセスは日本と欧米で異なるようで「日本の企業はステップごとにゴールを決めるが、欧米の企業はまずゴールを作ってからステップを考えていく」という。

アジア太平洋では「顕著なROIを確保」した企業が70%にのぼる

阿久津氏が「驚いた」と語ったのは、企業がIoTをどのような目的で活用しているかという項目で、29%が「様々な企業や業界を接続」するためだと回答した。同氏は「(こうした企業は)他社や他業界と接続することで、新たなエコシステムを形成しようとしている」と語り、この部分においても日本と海外ではギャップが存在すると指摘した。また、64%の企業がビッグデータを意思決定に活用している点も注目点に挙げた。

大規模な業務改革にIoTを活用している企業が半数近くに。ビッグデータの活用も進む

このほか、IoT導入に際し多くの企業が懸念するセキュリティに関して阿久津氏は「米国の電子機器メーカーは『セキュリティが原因でIoTの導入を遅らせることはない』とコメントしている。IoTを導入しながら、セキュリティ問題にも対応していく必要がある」とした。