省燃費ルートの算出は「標高」がカギ

続いては、道路ネットワークの中でも、今後ますます重視されるようになっていくであろう、省燃費ルートに関する話だ。より省燃費のルートを案内するには、目的地までの走行距離がほぼ同じの複数のルートがあった場合、最も上り坂が少ないルート、言い換えれば平坦もしくは下り坂でできるだけ構成されたルートを検索できるかどうかということになる。

ナビプログラムがそうした省燃費ルートを導き出すために必要とするデータは、道路の標高だ。標高データを用いれば、その道路がどれだけ平坦か、アップダウンを繰り返すかなどがすぐにわかるようになる。前回も触れた話だが、そこでゼンリンが近年整備を進めているのが、高速、都市高速、有料道路、一部国道といった主要道路の一定ポイントごとの「全道路標高データ」の取得作業だ(画像46)。

標高データの高精度な取得は、緯度経度・標高側位機器、前方撮影カメラ、GPSをルーフに搭載したトヨタ「ルミオン」ベースの「高精度計測車両」(画像47・48)を用いて実施中だ(画像49・50)。さらに、道路レーンやカーブ曲率なども取得しており、省燃費ルートの案内だけでなく、レーン誘導やカーブなどでの注意喚起といった高精度なルート案内の実現も目指しているという。なお、そのほかの一般道に関しては国土地理院が計測した標高データを5mメッシュで取り込み、整備が進められている。まだ数は少ないが、実際に標高データを駆使するカーナビも少しずつ発売され始めているそうである。

画像46(左):標高データを密に取得することで、道路のアップダウンがわかるようになる。画像は、北九州都市高速大谷JCT周辺(ループしている部分)で、奥の上がっていく緑色のルートは皿倉山。画像47(中):。トヨタ「ルミオン」ベースの高精度計測車両。細道路計測車両の兄貴分的なスペックの計測車両。画像48(右):高精度計測車両のルーフのアップ。搭載機器は多いが、1つ1つは小型なので思った以上にスッキリしている。

画像49(左):同じ道路を何度も高精度計測車両が走行してデータの正確性を期している。画像50(右):ポイントとそこの標高がプロットされているのがわかる。

また、標高データの利点としては、クルマもしくはナビが現在の標高情報を把握できる仕組みを持つ必要はあるのだが、現在走行しているのが高速道路なのかそれともその真下や脇にある一般道なのかということも判別がつきやすくなる。カーナビは高低差に弱いとされているのは多くの方が身をもって知っているかと思うが、一般道を走っているのにいつの間にか高速道路を走っていることになっていたり、その逆もまたしかりで、そうした誤案内が大幅に減るというわけだ。