ファルコン9の第1段は精度10mで着水

今回の打ち上げにおける世間の注目は、どちらかというと積み荷のDSCOVRよりも、それを打ち上げるファルコン9ロケットの第1段機体の回収試験に集まっていた。

スペースX社は、ロケットを再使用することで、打ち上げにかかわる費用を大きく引き下げることを目指しており、その最初のステップとして、打ち上げを終えて地球に戻ってきたロケットの第1段機体を、広い甲板を持つ船で回収する、という試験を進めている。

同社はこれまで、垂直離着陸実験機による試験飛行や、打ち上げ後に第1段を海上に降ろす着水試験を行い、今年1月10日には船の上に着地する試験に初挑戦した。ロケットは巧みに制御されつつ船の真上まで舞い戻りはしたものの、甲板に激しく衝突するように着地し、残念ながら完璧な成功には至らなかった。その詳細については、拙稿『隼は舞い降りられるか? - 再使用ロケットに賭けるスペースXの野望と挑戦』を参照していただければと思う。

今回のDSCOVRの打ち上げでは、1月の試験と同じく、太平洋上に用意した回収船の上にロケットの第1段機体を着地させることを目指していた。しかし、打ち上げ当日に着地予定海域を嵐が襲い、船が出せなくなってしまった。また船自体も、エンジンの1つに問題を抱えていたという。

あくまで主目的はDSCOVRを打ち上げることにあったので、回収船が出せないからといって打ち上げが延期されることはなかった。しかし、スペースX社は転んでもただでは起きなかった。船こそないものの、本番さならがらに、海のある一点を目指して着水させることを試みた。その結果、約10mの精度で垂直に安定して降下することに成功したという。同社のイーロン・マスクCEOは「天気が安定していれば、船の上に降り立つことは可能だろう」とTwitterで述べている。

着水寸前にロケットから送られてきた画像 (C)SpaceX

もちろん今回がうまくいったからといって、次の試験で成功するとは限らないが、それでも可能性は高くなったと言ってよいだろう。

ファルコン9の次の打ち上げは3月1日以降に予定されているが、この打ち上げと、さらにその次の打ち上げでは、ロケットの持つ能力を最大限に使う必要があり、着地に使うための追加の推進剤や着陸脚を積む余裕がなく、回収試験は実施されない見通しだ。次に回収試験が実施されるのは、今年4月に予定されているドラゴン補給船運用6号機の打ち上げの際となる予定なので、今しばらく待たねばならない。

なお、同社は1月27日に、「ファルコン・ヘヴィ」ロケットの打ち上げを描いたCGアニメを公開した。ファルコン・ヘヴィは、ファルコン9の第1段を3基束ねて、より重い人工衛星を打ち上げられるようにしたもので、現時点で今年中に初の打ち上げが行われる予定だ。ファルコン・ヘヴィも機体の再使用することが考えられており(再使用しなければもっと重いものを打ち上げることができる)、このアニメでも、3基の第1段機体が打ち上げた場所にきれいに舞い戻ってくるという、にわかには信じられないような光景が描かれている。次の回収試験に向けて、期待は高まるばかりだ。

ファルコン・ヘヴィのCGアニメ (C)SpaceX

参考

・ http://www.spacex.com/news/2015/02/11/spacex-launches-dscovr-satellite-deep-space-orbit
・ https://directory.eoportal.org/web/eoportal/satellite-missions/d/dscovr
・ http://www.nesdis.noaa.gov/DSCOVR/
・ http://blog.algore.com/2015/02/statement_by_former_vice_presi_8.html
・ http://www.airspacemag.com/space/al-gores-satellite-180952132/