東北大学は9月17日、2011年東北地方太平洋沖地震の発生後に継続している地殻変動の要因を解明したと発表した。

同成果は同大学災害科学国際研究所の日野亮太 教授、同大学院理学研究科の三浦哲 教授らと、カナダ地質調査所(ビクトリア大学兼務)のKelin Wang教授らとの共同研究によるもので、英・科学雑誌「Nature」の電子版に掲載された。

2011年東北地方太平洋沖地震の発生後にその震源域及びその周辺では地殻変動が継続して進行しており、ずれたプレート境界面が固着し、次の自信に向けて再度エネルギーを蓄積していると考えられているため、多くの研究者が注目している。

今回の研究では、震源域の海底における地殻変動観測とその観測結果に基づく数値シミュレーションにもとづき、この地殻変動の要因を解析したという。その結果、地震後に観測されている複雑な地殻変動のパターンは、マントルが粘性と弾性の両方の性質を持つもつために、大地震によって引き起こされた影響が時間遅れを伴って発現する「粘弾性緩和」という過程が関係していることがわかったという。

2011年東北地方太平洋沖地震後の地殻変動のシミュレーションに用いた地下構造モデル。地下を多数のブロックに分割してその相互作用から変形の時空間発展を計算する。

従来の研究では、「粘弾性緩和」の影響が顕在化するには長い時間がかかるため、地震直後の地殻変動に対する影響は小さいと考えられていたが、今回の研究結果はこうした従来の考え方の見直しを迫るものとなる。

同研究グループは、「今後の大地震発生の予測を行う上で2011年の大地震の発生後のプレート境界断層の動きを正確に把握することが重要と、極めて重要となる。今回の研究成果を活用して地殻変動観測データを評価することによって、今後の地震発生予測の精度向上が期待される」とコメントしている。