日立製作所は6月26日、インフラ市場用電源システムや、電気・ハイブリッド自動車のインバータシステム向けに、パワー半導体を多数並列接続して大容量化が図れる両面冷却パワーモジュールの実装技術を開発したと発表した。

現在主流であるシリコン基板のウェハサイズである8インチに比べ、低損失な次世代パワー半導体は市販されているウェハサイズが3~4インチと小さいために、小面積のパワー半導体を複数並列に配置して、高速にスイッチングが可能な実装技術を開発する必要がある。しかし、各パワー半導体の配線にバラつきがあると、最も配線抵抗が小さい半導体に電流が集中して流れるため、パワー半導体の損傷や性能の不均一が生じ、これが実用化の課題となっていた。並列接続した多数の小さなパワー半導体を高信頼で動作させるためには、各パワー半導体の発熱をできる限り等しくし、劣化や最大動作電流を目標値内に収める必要がある。

そこで今回、両面冷却パワーモジュール内のパワー半導体を多並列に接続する配線の抵抗特性を等しくすることで、各パワー半導体に流れる電流を均一化する実装技術を開発した。具体的には、各パワー半導体がオン・オフ動作するタイミングをそろえるために、各パワー半導体の制御信号用配線の長さを等しくし、配線抵抗をそろえる設計にした。従来の片面冷却パワーモジュールでは、構造上の制限により、制御信号用配線の長さにばらつきがあったため、全てのパワー半導体を同じタイミングで動作させることが困難だった。これに対し、同技術では配線レイアウトにトーナメント方式を採用することで、制御信号用端子から各パワー半導体までの配線の長さを均一化でき、全てのパワー半導体がほぼ同じタイミングで動作するようになった。

また、各パワー半導体の動作電流が流れる主配線の長さを等しくし、各パワー半導体に流れる電流と発熱量を均一にした。従来の片面冷却パワーモジュールでは、設計の問題上、入出力端子と各パワー半導体をつなぐ主配線の長さを均一にすることができなかったため、各主配線の抵抗にばらつきができ、各パワー半導体に流れる電流と発熱量を均一化することができなかった。これに対し、両面冷却パワーモジュールでは、パワー半導体へ流れる電流の経路となる導体でパワー半導体の上下を挟み込む設計のため、主配線の入出力端子からパワー半導体までの長さをそろえることができる。

同技術をもとに、スイッチング素子16個×2とダイオード素子4個×2の計40個のパワー半導体を用いて、並列接続可能な両面冷却パワーモジュールを作成した。この結果、従来の片面冷却のパワーモジュールと比べ電力容量を200%まで拡大したのに加え、損失値をSiに比べて57%低減するなど、小型・高信頼なパワーモジュールの開発に成功したとしている。

制御信号の配線図比較。(左)片面冷却パワーモジュールでの配線図、(右)両面冷却パワーモジュールでの配線図(トーナメント方式)

開発した両面冷却パワーモジュールの配線部