日本のアニメーションで好きな作品はありますか?

今や世界的に有名な日本のアニメーション。現在のオタクカルチャーの基礎となったとも言えるアニメーションですが、実は1970年代から一部のファンの間では海外でも人気のある存在でした。その一方で、日本人が海外での評価をあらためて意識し始めたのは、1990年代の「AKIRA」や「攻殻機動隊」を「ジャパニメーション」と紹介してからではないでしょうか。その後も、TVアニメから派生したロボットものやスタジオ・ジブリの作品、オリジナルとさまざまなアニメーションが誕生しています。

そこで今回は、日本在住の外国人20名に「日本のアニメーションで好きな作品はありますか?」と聞いてみました。

■「ドラゴンボール」です。(インドネシア/30代後半/男性)
■「ドラゴンボール」(トルコ/20代後半/女性)
■「ドラゴンボール」などたくさんあります。(スペイン/30代後半/男性)

「子ども向けテレビ番組でかっこいいと思う作品」でも回答があがっていた「ドラゴンボール」。世界40カ国以上で放送されているほか、単行本やゲームの販売、映画も上映されているだけにその知名度は絶大です。また1980年代後半に海外での放送が始まってから約15年が経過、現在ではオリジナルのパロディ作品やオリジナルのゲーム「ハイパードラゴンボールZ」、パラパラマンガなど、ファンによる愛あふれた二次創作も増えているというから驚きです。

■渡辺信一郎監督「カウボーイビバップ」や「サムライチャンプルー」、大友克洋監督「AKIRA」、森本晃司監督「彼女の想いで…」、「EXTRA」、今敏監督の全作品、高畑勲監督「火垂るの墓」、信輝結城(キャラクターデザイナー)「ロードス島戦記」、庵野秀明監督「オネアミスの翼:王立宇宙軍」、宮崎駿監督「ルパン三世 カリオストロの城」や「ルパン三世 風魔一族の陰謀」…。(フランス/30代後半/男性)
■「サマーウォーズ」と「平成狸合戦ぽんぽこ」。(ドイツ/30代後半/男性)

コアなアニメーションファンの方の回答が来ましたよ…! 2014年春に東京でポスター展が開催された大友克洋氏の「AKIRA」は国内でも人気の高い作品です(2020年の東京オリンピック開催を予言した!? という話題でも盛り上がりましたよね)。漫画評論家の故・米澤嘉博氏は「大友以前・大友以降」として大友さんの作品の影響力を語っていますし、また実際にその描き込みの細かさがのちのマンガ週刊誌の締め切り体制を変化させた話もある方の代表的な作品です。

「カウボーイビバップ」や「サムライチャンプルー」は大ヒット作とまでは行かないまでも、カルチャーとアニメをつなげた作品として捉えられています。その独特な舞台設定やキャラクターづくり、ジャズやヒップホップをBGMに使うなど、音楽好きの目をアニメに向けさせ、またスタイリッシュな要素を与えた先駆け的とも言え、今もなおコアなファンが多いのです。そのほか、日本のアニメーションを語る上では欠かせない作品がたくさん上がっていますので、興味のある方はぜひ上記の方の回答を参考に検索してみてください。

■「千と千尋の神隠し」です。(ベトナム/30代前半/女性)
■「千と千尋の神隠し」(スリランカ/50代後半/男性)
■ジブリの「ほたるの墓」(ブラジル/50代前半/女性)
■アニメーションはほとんど見ないのですが、ジブリ関連が海外でも人気でした。素敵な作品ばかりです。(スウェーデン/40代後半/女性)

ベトナム・スリランカの方が回答している「千と千尋の神隠し」でアカデミー賞(アニメーション部門)、ベルリン国際映画祭・金熊賞を受賞するなど今や世界的に有名なジブリ作品。しかし、海外でこうした知名度を得るまでの道のりは険しく、評価を得たきっかけは1987年に香港で公開された「天空の城ラピュタ(天空之城)」のヒットだったのだそう ちなみに「ジブリ」は「サハラ砂漠に吹く熱風(ghibli)」の意。イタリアの偵察・爆撃機にもある名前で、飛行機好きである宮崎駿氏のこだわりが見られる部分なのです。

■「サザエさん」です。(オーストラリア/40代前半/男性)
■「サザエさん」(ペルー/40代後半/男性)

長谷川町子さんの作品です。日本では知らない人はいないと言っていいほどの国民的アニメーションですが、実は海外で放送されたことはないそう。回答された方々は、来日されてからご覧になったのでしょうね。2013年には放送45年目を迎え、シンプソンズの記録を抜いて最長放送テレビアニメ番組としてギネスにも認定されました。

ちなみに、コミックス第1巻には、サザエさんが満州引き上げ組を助けるべく自分で縫った布団からなぜか定規が飛び出る話など、おっちょこちょいさも発揮しつつ、戦後を楽しく暮らす様子が描かれています。また、東京都・世田谷の桜新町が「サザエさんの街」となるきっかけになった福岡から上京する回も。一般的な家族の日常を描くこうしたスタイルは、現代も変わらない「サザエさん」。海外の方が日本のごく普通の生活を知るアニメーションとしても優れていそうですね。

■「セーラームーン」と「ちびまる子ちゃん」が好き。(中国/30代前半/女性)
■「ガラスの仮面」(ポーランド/20代後半/女性)
■「ベルサイユのばら」や「タイガーマスク」など。(イタリア/30代後半/女性)
■「一休さん」など。(シリア/30代前半/男性)
■「ルパンIII世」(韓国/40代後半/男性)
■「マクロス」(アメリカ/30代後半/男性)
■「仮面ライダー」(インドネシア/30代前半/女性)

女の子向け、男の子向け、さまざまな作品があがりました。「ガラスの仮面」、「ベルサイユのばら」、「セーラームーン」などは国内の女の子たち(そして年齢を重ねて)も熱狂した作品ですよね。舞台女優の成長譚、フランス革命の最中の恋物語、戦士ものと内容は違えど、女の子が活躍する様子に肩入れしてしまうのはどの国でも同じなのでしょう。「ルパンIII世」は映画版「カリオストロの城」は、宮崎駿監督のターニングポイント的作品として有名なのはもちろん、テレビでたびたび放映されるアニメ映画としても非常に有名ですよね。どこか抜けているけど紳士的な登場人物が男性の心を撃つのかも…?

日常を描いたものから日本や世界の史実をモチーフにした作品、SFや戦隊もの、変身もの、またスタイリッシュさを兼ね備えたカルチャー要素のある作品まで、幅広いモチーフを要する日本のアニメーション。今回のアンケートではコアなアニメーションファンの方の回答も飛び出し、筆者も驚くほどでした。今も放映中の作品はもちろん普遍的な人気を誇る作品も多いので、この機会に見直してみるのもよさそうですね。