日本在住の外国人から見た"浮世絵"の印象は?

江戸時代に生まれ、鮮やかな色彩と独特の構図でさまざまな題材を描いた浮世絵。「浮世絵の祖」とされる菱川師宣の「見返り美人図」や喜多川歌麿の美人図、葛飾北斎の風景画などが代表的な作品としてあげられます。ゴッホほか印象派の芸術家に影響を与えたとされる、まさに日本が誇るべき芸術です。

今回は、日本在住の外国人20名に「"浮世絵"の印象」を聞いてみました。

■迫力を持つ線の力と世の中のあらゆるモノの姿をシンプルかつ普遍的に描けるもの、です。(フランス/30代後半/男性)

■非常にシンプルな線を中心にデザイン化している絵画。(シリア/30代前半/男性)
■色がダイナミックで、日本らしいイメージです。(インドネシア/30代後半/男性)

浮世絵の「浮世」とは「現代風」を指す言葉です。風俗画として始まっただけあり、美人画や役者絵、芝居絵、漫画(絵手本)や名所絵、風物絵など時代の流行を表す多彩な題材で描かれてもいます。手法としては、木版画を中心として絵画や肉筆画なども。大和絵の流れをくんだ図柄の明快さと構図の大胆さ、遠近法の利用、影をつけないことなどが特徴です。

みなさんが回答しているようなシンプルな線、デザイン的な要素は、18世紀中頃に鈴木春信が鮮やかな多色刷りの東錦絵を生みだしてからより強まったと言える部分。版画に耐える力強い線を保ちつつも、さまざまな浮世絵師が優雅で上品なタッチや力強さなど見せる個性的な作品を残しました。

■冷静さとエレガンス。(スペイン/30代後半/男性)
■着物の女性。(トルコ/20代後半/女性)
■細かいので当時の様子がよく分かる。(ドイツ/30代後半/男性)
■きれい。自然の絵で平和を感じます。(オーストラリア/40代前半/男性)

木版画(錦絵)で有名な浮世絵ですが、絵画や肉筆画などの手描き作品も初期にはかなり多いそう。トルコの方の回答にある「着物の女性」の代表作「見返り美人図」も、実は肉筆画。一点物なので、当時でも高価な部類だったそうですよ。その後も長きに渡って当時の人々の生活に根ざしたメディア的な側面もあったことを思うと、「当時の様子がよくわかる」というドイツの方の評価もうなずけます。

■優れた商業美術だと思います。(アメリカ/30代後半/男性)
■古い漫画。(韓国/40代後半/男性)
■色が薄い。(ポーランド/20代後半/女性)

アメリカの方の「商業美術」という評価は、前述の木版画(錦絵)が出たことで実現されたと言えます。鮮やかな色も含め、同じ絵柄を量産できることで作品が安価になり、一般大衆にも求めやすい存在となったからです。また、韓国の方の「古い漫画」という回答は、浮世絵の中にグラフィカルな要素や風刺要素が見られることの現れとも取れるでしょう。

■素晴らしい。(イタリア/30代後半/女性)
■素晴らしい。(スリランカ/50代後半/男性)
■面白い!(イギリス/40代後半/男性)
■素敵だと思います。(スウェーデン/40代後半/女性)
■素晴らしいと思った。圧倒された。(ブラジル/50代前半/女性)
■深い。(インドネシア/30代前半/女性)
■実際に見たことがないので見に行きたいです。本で見て興味深いと思いました。(ロシア/20代後半/女性)

地域を問わずよい評価が集まりました。特にシンプルながら大胆な構図と鮮やかな色彩はパワフルな印象を与えるのか、「圧倒された」というコメントも。

■あまり絵に興味がないので、日本らしい絵としか思い浮かびません。(中国/30代前半/女性)
■知っているがよくわからない。日本の伝統的な絵というイメージしかない。(ベトナム/30代前半/女性)
■知らない。(ペルー/40代後半/男性)

絵に興味がない、よく知らないという人であっても、浮世絵が「日本らしい」もしくは「日本の伝統的な絵」という認識はあるようです。それだけのイメージを与えていると考えると、やはり誇るべき存在ですよね。

2014年は「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」展が東京で開かれていました。ウォーホルは20世紀にシルクスクリーンで大量に作品を発表し、イギリスで生まれた「ポップアート」をアメリカで美術のいちジャンルとして確立した芸術家です。また同じくロイ・リキテンスタインはマンガの一コマを同じように作品にしています。彼らの作品って、どこか浮世絵と似た要素がある気がしませんか? 大量生産とマンガのようなグラフィカルさで当世の流行を表現する芸術。18世紀の日本に、アメリカのポップアートにつながる絵画がすでに存在していたなんて、なんだか面白いですよね。