1+1=2ではない世界は存在する

日本科学未来館(未来館)は2月19日から、3F「みらいをつくる」ゾーンにおいて、半年から9カ月ほどの期間で定期的に内容を更新している準常設展示「メディアラボ」の第13期「1たす1が2じゃない世界 - 数理モデルのすすめ」をスタートさせた(画像1)。開催期間は9月1日(月)まで。前日の18日にプレス・関係者向け内覧会が実施されたので、その模様をお伝えする。

画像1。「1たす1が2じゃない世界 - 数理モデルのすすめ」は3F右手奥にある

メディアラボは、先端情報技術とそれを利用したアート表現の可能性を展示しているエリアで、毎回1人もしくは1チームのアーティスト(集団)やアーティスト性の高い研究者(の研究チーム)にフォーカスして、そのアーティスト/研究者が作り出した技術や、その技術を応用したアートや体感型の展示物などを楽しめる内容となっている。

今回の「1たす1が2じゃない世界 - 数理モデルのすすめ」は、東京大学 生産技術研究所 教授兼同・最先端数理モデル連携研究センター センター長を努める合原一幸氏の出展となる(画像2・3)。合原氏は、内閣府/日本学術振興会最先端研究開発支援プログラム「複雑系数理モデル学の基礎理論構築とその分野横断的科学技術応用」(FIRST合原最先端数理モデルプロジェクト)の中心研究者を努めている。

日本独自の学問である「数理工学」やカオス、フラクタル、複雑ネットワークなどの工学応用を目指す「カオス工学」を基にして、複雑系数理モデル学の構築とその様々な分野横断的科学技術応用を研究しており、今回も極端な表現をすれば「あらゆる現象は数式で表せる」ということを体感させてくれる内容となっている。

画像2(左):合原氏。日本を代表する数学者のひとり。画像3(右):合原氏が数式を入り口の黒板風タイトルパネルに板書しているところ

1+1=2というのは、厳然たる事実のはずだ。しかし、世の中にはこうした単純な四則算で答えを導ける「線形」の現象や物事ばかりでなく、1+1≠2という「非線形」の現象も多い。それも、身近なあらゆるところに存在している。例えば、スクランブル交差点での人の流れや株価の動き、入れ立ての味噌汁の表面で見られる対流による複雑な模様などだ。

そのほかにも、大気の流れ(乱流)、食物連鎖、鳥の群れの動き、チョウチョウウオやシマウマのパターン形成、川の蛇行、粘菌の運動、カエルの合唱、水滴の落下のタイミング、心臓の拍動、などなど、挙げだしたらきりがない(画像4)。今回の展示では、今列挙したものに加え、その数倍の現象の数式(数理モデル)が紹介されているほか、その中から厳選された7つの現象が、体感したり学べたりするコンテンツとなって用意されているという具合だ。

ちなみに、その中の1点、鳥の群れの動きの数式を紹介しよう(画像5)。筆者も10代の頃は数学が好きで微分積分なども得意だったのだが、ここで出ているのは大学の数学科のレベルなので、この数式でそれを表せてしまうのかがもうチンプンカンプンである(笑)。この式でなぜ鳥の群れの動きを表せるのか興味を持った方は、ぜひ未来館に足を運んで、メディアラボ担当のサイエンスコミュニケーターの方々に質問してもらいたい。このほかにもいくらでも数式があるので、いろいろとたずねてみよう。

画像4(左):身の回りのあらゆるところに数理モデルが潜んでいる。画像5(右):画像4でスポットライトの当たっていた鳥の群れの動きの数式がこれ。何がどういう意味なのかは、ぜひメディアラボ担当のサイエンスコミュニケーターの方に聞いてみよう