2.関心を連鎖させるwebコミュニケーション

――Webに関しては、どういった機能を持たせるかで方向性が変わってきますね。

小野 : プランニングの際によく出てくるのが、学習モデルか教育モデルかの違い。学習モデルはユーザーが自分から掘っていくもの。教育モデルは広告でよく見られる「告げる」「うたう」「述べる」というもの。

高性能なプロ向けの一眼レフカメラが発売されるとしましょう。機能をガンガン語っていけば、プロに届かせることはできます。ところが、プロ向けでありながら一般ユーザーにも使ってほしいとなると、サイトのデザインも変わってくるし、メッセージも変わってくる。掘らせたいのか、述べるだけなのかという違いです。

学習モデルの例を挙げると、NAVERまとめはアーカイブ型。Wikipediaも完全にそう。教育モデルは、最初に事例紹介した「未来を作ろう」やナイキのシューズで音を奏でる「NIKE MUSIC SHOE」 。とはいえ、実際は100%学習モデル、教育モデルということはあまりなくて、70:30だったりするんです。

その点、UNIQLOは、両方のバランスをうまく使っていますね。もっとも、ユニクロドットコムは、「探す」「買う」という目的がはっきりしているので、それに特化していますが。

――ユーザビリティやブランディングにも関係がありそうですね。

小野 : 確かにその通りですが、いつも面倒だと思っているんです。皆さんもいやというほどユーザビリティという言葉を耳にしているはず。ところが、ユーザビリティに特化したものをつくるとクライアントに「面白くない」といわれたりする。ユーザビリティは平準化。誰もが使えるユニバーサルデザインの発想に通じています。 片や、ブランディングは差別化することで、ソニーらしさとかパナソニックらしさなど、「らしさ」というあいまいな要素が欠かせません。しかも、実はインサイトにヒモづいていたりもするんですよね。

僕は、企画を一気に可視化して、そのクォリティを初速でどれだけ稼げるかということを心がけていますが、Webの役割の見分けや、ユーザビリティ・ブランディングをやった上で、「掘った」「教わった」「知った」という体験や状況をデザインしています。

岩田 : 設計に関して言えば、デザイン的な設計もあれば、企画的な設計もありますね。瞬時にユーザーにジャッジされていく中で、いかに気持ちよく、どういう情報を訴えかけていくかという優先順位の話は企画的な話だと思うし、見せ方でグッとつかむというのはデザイン的な話になります。

小野 : 僕らの仕事は実はWebだけで完結しているわけではなく、あらゆる広告手法が全て機能しはじめて効果が出てくる。ただし、Webの役割を軽く見られたり、CM命みたいなキャンペーンがあることも事実です。でも、クライアントワークをしている限り、何かしらの納得感をクライアントに提供し、その対価としてお金をいただいている。しかも、同時にユーザーにも目を向けて、アクションを起こさせなくてはならない。「見てみたい」「もっと知りたい」という状況をつくることが、すごく大事なんです。僕らはファーストインプレッションでフックになるような状況をつくらなくてはならないんです。

岩田 : とにかく、関心を連鎖させるというのは、どんどんクリックさせてサイト滞在時間を長くしてコミュニケーションをとってもらうこと。それが、Webコンテンツの一つのゴールだと思っています。