11月12日、東京都千代田区のパレスサイドビルにて、Webクリエイター向けスキルアップ勉強会「Creator's Career Lounge」の第2回が開催された。面白法人カヤックのプロデューサー岩田慎吾氏と、ConceptConception* Inc. アートディレクターの小野清詞氏が登壇し、Webクリエイターとしてクリエイティブな仕事を続けるためのポイントを議論した。

パネラーの1人、岩田慎吾氏は「面白く解決する」を合い言葉に複数のクライアントワークにおいて企画・制作を担当している。新しい技術やサービスをいち早く広告に取り入れたwebプロモーションを得意とし、モバイル広告大賞グランプリ、東京インタラクティブアドアワードなどを人を惹きつけるアイデアで数多くの賞を受賞している。

一方、岩田氏の強力なパートナーである小野清詞氏は、広告宣伝をベースにグラフィック、Web、UI UX、ムービー、プロダクトのデザインとコミュニケーションを企画/制作している。たぐいまれな才能とセンスにより、カンヌ国際広告祭ゴールドライオン、シルバーライオン、ONE SHOW YELLOW PENCIL。SPIKES ASIA シルバー。グッドデザイン賞など数多くの受賞実績がある。

公私にわたって交流のある両氏。今回のセミナーでは、それぞれが携わる企画とデザインの両面から、「1.企画と表現のプラスマイナスな関係」、「2.関心を連鎖させるWebコミュニケーション」、「3.クリエイティブアップの近道」といった、Webクリエイターなら押さえておきたいツボの数々をトークセッションで紹介していただいた。

制作日数19日、驚異の短納期でネット選挙元年に大きな足跡を

面白法人カヤックのプロデューサー岩田慎吾氏

――お二方は、Googleと毎日新聞がコラボレーションして2013年夏に公開したコンテンツ「未来を作ろう」の制作をなさったんですよね。

岩田 : ネット選挙元年でもあり、今回の参院選をきっかけに、選挙権を持たない若い層にも選挙や政治に目を向けてもらうのが目的でした。選挙を通じて政治に参加するのは、自分たちの未来を作ることだというメッセージを込め、Webによって参加障壁を下げるといった試みでもあったのです。制作のオーダーはカヤックに来ましたが、デザインはこれまでにもいくつかの案件でご協力いただいた小野さんにお願いすることにしました。

――ところが、フタを開けてみたら大変な話だったとか…。

岩田 : 何しろ、公開までに19日間という短納期。金曜日の夕方に小野さんに連絡して、土日には一緒にブレストやアイデア出し、月曜には初回のデザイン提出というスケジュールです。

情報をタグにして、30個ほどのキーワードをサイト上できれいに見せたいというのが課題で、最初の代理店との打ち合わせでは、四角が大きくなっていくようなイメージがGoogleらしいという意見が出ました。それを持ち帰って再検討とアウトプットをという流れ。

小野 : しかし、なぜ四角なのかが明確ではないし、「未来を作ろう」というタイトルです。なんだか四角い未来ってイヤでしょ。ただでさえ、選挙は堅いイメージがある。 紙の上にいろいろスケッチをしていくうち、丸ならありだなぁと思ったんです。ロジカルにではなく、丸い未来のほうがいいという感覚的なもの。言葉で説明できない、「なんとなく」という行間みたいなものといえばいいのかな。

岩田 : 小野さんから送られてきたものは、二人で考えた最終的なアウトプットと合致したものでした。企画をしながらデザインを考えるとか、デザインしながら企画をブラッシュアップするというのは、日頃から行っているアプローチ。互いに丸のイメージが共有できたことが、大きかったように思います。

――お二人でする仕事の進め方は、だいたいこういう感じなんですか。

岩田 : そうですね。最初に共有しておくべきロジックに関しては、正しい部分は絶対に破らずに進めていこうとか決めごとはします。その後の表現については、非言語の価値を認めるというか。理屈を共有して、出てくるアウトプットというのは、表現の中に理屈が落ちてくると思っていますから。

小野 : 投稿する際に年齢や性別を入力すると、それがビジュアライズされるんですが、トップページではそれが丸で表示されています。しかし、投稿数に比例したサイズで表示できるわけではないので、リスト的な表示で「子ども」のカテゴリーへの投稿数がわかったり、地図で全国の分布の表示をしたりと、入口を3つソートできるようにしました。下層ページでは選んでいるカテゴリーが「子ども」で、どの年代・性別の人がどれだけ見ているかというのをわかりやすく配置しています。このサイトから、議員のGoogle+やYouTubeに飛ばすことも念頭に置いてつくっています。

岩田 : 毎回、小野さんから上がってくるアウトプットもこちらが意図する以上のレベルで、代理店の信頼度・親密度も上がり、チームとしても作業が進めやすくなっていきました。

結果として、日本のGoogleのアウトプットとしてデザインのリファレンスに載るなど、評価は悪くなかったようです。ネット選挙元年にGoogleのこういうサイトづくりに携われたことはラッキーだったと思っています。