長瀬産業は、線維芽細胞が産生する情報伝達物質「Hepatocyte Growth Factor(HGF:肝細胞増殖因子)」が皮膚のシミの形成に対して重要な役割を担っている可能性があること、ならびにルテリオン配糖体にこうしたHGFの働きを抑える作用があることを確認したと発表した。

同成果は同社研究開発センターらによるもので、詳細は2013年3月27日~30日に開催される「日本薬学会 第133回 年会」にて発表される予定。

シミの形成は近年、表皮を中心に色素細胞(メラノサイト)活性化の仕組みや、メラニン合成の仕組みなどが報告されるようになり、さまざまなプロセスで構成される複雑な現象であることが知られるようになってきた。また、シミの形成につながると考えられている生成されたメラニンが、肌を構成する周囲の細胞へ受け渡されるプロセスについては、諸説があり、近年、メラノサイト周辺の基底細胞(ケラチノサイト)によるメラニンの「貪食」が一部関与されていると考えれられるようになってきたものの、その過程がどのようにして促進されるかに関しては不明な点が多く、よく分かっていなかった。

今回、研究グループは、色素細胞から基底細胞へのメラニンの受け渡しは真皮層に近い領域で起こることが考えられることから、真皮に着目し、そこに存在する線維芽細胞(ファイブロブラスト)が産生する情報伝達物質の中に貪食能を高めるものがあるのではないかと仮説を立てて研究を行った。

シミ形成のプロセス

その結果、線維芽細胞が産生する情報伝達物質「Hepatocyte Growth Factor(HGF:肝細胞増殖因子)」に培養表皮角化細胞の貪食能を高める作用を見出した。

上は培養表皮角化細胞をHGF、もしくはHGFの中和抗体を同時に混合した培地であらかじめ処理した後、蛍光ビーズを与え、24時間後に細胞内に取り込まれた粒子を蛍光顕微鏡で観察したもの(緑が蛍光ビーズ。青が細胞核)。下があらかじめ調整したメラニン粒子(メラノソーム)を用いた点以外、蛍光ビーズの試験と同様の処理を施し、フォンタナ・マッソン染色により取り込まれたメラニン粒子を染めたもの(黒がメラニン粒子、赤が細胞核)

この成果を受け、研究グループはHGFの貪食能の促進作用を抑制する成分を見いだせれば、シミに効果的な対処が可能になると考え、各種の植物素材を用いて検討を実施。最終的に、ベルガモットミントに含まれるルテリオン配糖体(Luteolin-7-O-glucoside)にHGFの貪食能促進作用を抑制する作用があることを発見したという。

培養表皮角化細胞をHGF、あるいはルテオリン配糖体(Lut-G)を同時に混合した培地であらかじめ処理した後、メラニン粒子(メラノソーム)を与え、24時間後にフォンタナ・マッソン染色を行ったもの

なお、研究グループでは、今回の結果から、ルテリオン配糖体もしくは同成分を含むベルガモットミントエキスがシミ対応素材として有用である可能性があるとコメントしている。

HGFのメラニンの受け渡しへの関与を示した仮説モデルのイメージ