東京・新宿の吉本興業東京本社で行われたよしもとクリエイティブカレッジ特別講義「鉄拳流クリエイティブ講座」にお笑い芸人の鉄拳が登場。同校の志望者や現役生に向けて、"鉄拳流"のパラパラ漫画の制作エピソードを語った。
「泣ける」パラパラ漫画にオファーが殺到
元々スケッチブックにイラストを描いたネタで知られていた鉄拳がパラパラ漫画を描いたきっかけは、第一興商の「カラオケDAM」の企画。吉幾三の有名曲をテーマに、パラパラ漫画「俺ら東京さ行ぐだ(鉄拳ver.)」を制作した。これを見たテレビ関係者から声がかかり、テレビ番組で公開したパラパラ漫画が大ヒット。「泣ける」パラパラ漫画を描く"パラパラ漫画クリエイター"として注目を集めるようになった。代表作とも言える「振り子」をはじめ、作品の数々はYouTube上で公開されており、多くの再生数を誇っている。
「振り子」は、初見でストーリーが全部理解できないような工夫が凝らしてあるという。鉄拳は「だからYouTubeの回転数も上がったんですよね」と冗談めかしつつ、「謎も含めたほうがいいんですよ。1回見せて納得したらそこで終わっちゃう。何回も見て謎が解けていくのが面白いんじゃないかと思う」と語っていた。
鉄拳のもとには「振り子」のヒット以来パラパラ漫画のオファーが殺到。世界各国からアクセス可能なYouTubeで公開していたこともあって、海外からのオファーも来ていたという。鉄拳いわく、膨大な量の依頼が来たためにかなり受注を絞ったとのことだ。以下の作品は、多数の依頼の中から鉄拳が選び取ったものとなる。
CMからPVまで、依頼を受けて制作したパラパラ漫画
鉄拳がオファーを受けて制作したパラパラ漫画は、アーティストのミュージックPVからCM映像まで多岐にわたる。福岡市の「飲酒運転撲滅キャンペーン」の啓発アニメーションの依頼は断る予定だったと明かした。依頼が集中して時間がない中で深刻なテーマを扱うのは危険だと判断したためだ。しかし、飲酒運転事故率の上昇に悩む福岡市の担当者が上京して直談判。その熱意を受けて、制作を承諾したのだという。
また、ミュージシャンのラムワイヤーの「名もない毎日」PVは、彼らの曲を聴いて涙したことを理由に依頼を受けたという。依頼の大小ではなく、自身が共感できるかという部分を大切にしている印象を受けた。
話は変わるが、とある依頼案件では、手描きの原稿をすべて仕上げ終わってから、登場人物の服装をすべてジャンパーに変更してほしいと要求されるという苦労話も飛び出した。その時は、1日がかりで原稿を描き直して対応したという。