昭和電工は5月9日、山口大学との共同研究により、LEDを用いた植物工場における新たな栽培法を確立したことを発表した。同社ならびに山口大学農学部 執行正義 教授らによる研究グループの成果。

植物が生育するために行われる光応答には、光合成、光形態形成などがあり、このうち、光合成には波長660-700nmの赤色光で活性化されるクロロフィル類が、光形態形成には波長450-470nmの青色光と660-730nmの赤色光で活性化される各種色素タンパクが関与することが分かっている。また、光応答に適した赤色光・青色光の比率は植物の品種によって異なることについても、これまでの研究成果から判明している。

LED照明は、その発光波長幅が他光源に比較し狭いことから、植物の光応答に適した波長を選択的に照射できるため、効率良く植物を栽培できると考えられており、植物工場の光源として活用が進められている。

同社でも波長660nmの赤色LED素子を開発、販売も行っているが、こうしたLEDを用いた光源は蛍光灯と比較し、消費電力を約3分の1に抑えられること、発熱の影響を受けずに高い光量が得られること、従来の葉菜類から果菜類・穀物まで栽培が可能といったメリットがあり、大学、各試験研究機関、一般の植物工場などで広く活用されるまでに至っている。しかし、初期投資額が蛍光灯と比べ大きく、商業施設への本格的な導入には、投資回収期間の短縮が課題となっていた。

今回の研究では、植物の成長と光応答の関係に注目し、植物の生育により最適化したLEDの照射方法である「Shigyo法」を開発した。同法による栽培実験を行った結果、同じ育成期間での葉菜類の収穫量が、通常の蛍光灯および赤青比を固定したLED照明と比較して、最大で3倍に増加することが確認された。これにより、消費電力の抑制、収穫量の増加という両面の効果が得られ、LED植物工場において今まで課題となっていた投資回収期間の短縮が実現可能となるという(ただし、同社では植物の生育には、光応答の他に温度、湿度、風、養液、炭酸ガスなど様々な因子が複雑に関与しており、また品種、個体によってもその生育条件、結果が大きく変わってくることから、今回の実験結果は栽培方法の有効性を示唆するものながら、その結果を保証するものではないとコメントしている)。

また、同法の応用展開として藻類培養でも有効性が確認されており、藻類を用いた有用物質製造やバイオ燃料生産への応用も期待できるとのことで、同社では今後、山口大の協力を得て、同法の商業施設および照明メーカーを中心にライセンス供与を行っていくほか、LED照明を中心とした昭和電工グループの栽培設備、周辺商材の販売を進めていく計画としている。

リーフレタスを用いたShigyo法と蛍光灯との比較栽培の結果