リーダーの斎藤さん、サブリーダーの酒井さんは2008年に総合優勝した際のメンバーでもあり、その時は指揮する立場ではなく、前線部隊だったそうである。アドヴィックスでは、手を上げた社員が誰でもETロボコンに参加でき、若い人が組み込みソフトウェアの腕を磨き合う場として活用しており、今年は入社1年目の4人が参加。ただし、仲本さんは専門学校時代に、今さん、堀江さんは大学時代にETロボコンに参加した経験があるそうだ。なお、インタビューは表彰の直後、会場で行った。

Q:総合優勝、おめでとうございます。まず、優勝した今の気持ちをお聞かせください。

2008年に総合優勝した後、2009年に総合準優勝はしたものの、なかなか優勝できませんでした。今年は2008年と異なり、入社1年目と2年目の若手ががんばってくれた結果の優勝ですので、優勝という達成感に加えて若手の成長も感じられとても嬉しいです。

Q:勝因はなんでしょう。

アドヴィックスはブレーキの制御システムを扱っている企業なんです。ブレーキは「うまくいかなかった」が許されない重要なシステムですから、フェイルセーフに対する要求も非常に厳しいわけです。その考え方を活かして様々な状況をあらかじめ想定し、走りきるためのフェイルセーフをしっかり作り込みました。本番のレースでもこの対策が効果を発揮し、インコース、アウトコース共すべての難所をクリアすることができました。

Q:今年はコースレイアウトが大幅に変わりましたが、戦略的にはどうでしたか?

今年は戦略の幅がなくなりましたね。去年は前半で稼げたから、後半はパスしようとか状況に応じて戦略を変えることができましたが、今年はすべての難所を攻略しないといけないし、スピードも出さないといけないということで、やれることをすべてやらないと勝てないという状況でした。

Q:チーム人数が多いので、1人ひとりが担当するセクションは少ないかも知れませんが、それをすり合わせるとなると大変だったのではないですか?

作業を分担するとインタフェース部分に問題が発生するため、ミーティングを重ねて、日常のコミュニケーションの段階から、自分の難所の前後の担当の人とは特にコミュニケーションを多くするように心がけました。

Q:チームのノウハウなどは社内で引き継がれているんですよね?

社内には、今年はもうチームには参加していませんが、かつて参加していた社員がいますので、彼らも随分とサポートしてくれましたね。

Q:優勝は至上命題だったのですか? それとも、行けるところまでというぐらいでしたか?

もちろん簡単ではないのはわかっていましたが、優勝は狙ってました。去年のチャンピオンシップ大会では南関東地区に1-2-3フィニッシュされ、かなり悔しい思いをしました。今年のチームは、若手の内3人が学生時代からの経験者でしたので、周りからは優勝を期待され、プレッシャーをかけられていましたね。多少のプレッシャーは、程よい緊張感を持たせてくれるので、結果的にはよかったと思います(笑)。

Q:ライバルチームはありますか?

同じ東海地区の「おやじプログラマーず」さんですね。東海地区大会の競技部門では、負けてるんですよ。今回は、たまたま難所で失敗されてしまって、我々が勝てたんですけど。

Q:新人の皆さんに質問ですけど、一番苦労された点はどこですか?

失敗した時に、その理由をしっかり突き詰めるというところが学生時代には経験がなく、そこが大変苦労しました。失敗した時は、失敗したロジックに必ず原因があるので、それをきちんと説明できないとダメなんですね。また、うまくいかなかった時に備えて、ロジックのバックアップを用意するという考え方もしっかりと教わりました。学生の時は、うまくいくことだけを考えていたので、これらの考え方には驚きました。こういう考え方は、母校の後輩たちに伝えたいですね。そのほか、1人だけ未経験者なので経験者に追いつくのが大変だったり、1人だけ部署が離れているため終業後に合流するのが大変だったりという苦労もありました。

Q:震災の影響とかはなかったんでしょうか?

震災の影響で突発業務が発生し、ベテランは大忙しの時期もありましたが、逆に1年目、2年目のメンバーが多かったこともあり、ロボコン活動への業務の影響は限定的でした。

Q:ちなみに、ETロボコンの経験者ということで、スカウトされたんですか? もう、優勝するために呼ばれた、みたいな(笑)。

スカウトはさすがになかったです(笑)。が、ETロボコンでの活躍によって会社名が知れ渡るようになり、入社を希望してくれる学生が増えました。会社としては彼らのような組込みソフトウェア開発経験者が入ってきてくれてありがたいですね。

Q:ETロボコンをやっていると、実際に就職に役に立つ、といういい実例なわけですね。ちなみに、ETロボコンで優勝して、給料がアップするとか、ボーナスが増えるとかは(笑)?

それはどうですかねぇ(笑)。冬のボーナス査定はもう済んでいますから……(笑)。

Q:ちなみに前回優勝時には、社内でどんな効果がありましたか?

社内表彰を受けました。また、優勝という素晴らしい結果が出たため、ロボコン活動が一段とやりやすくなりましたね。

Q:若手の皆さんは、ETロボコンに参加してみて、どんなメリットがありましたか? 業務にどんなことがフィードバックできていますか

社内のソースコードを読めるようになりました。社内のコーディングルールを早くマスターでき、読めるようになったことは大きな収穫でしたね。

Q:来年も皆さん参加されますか? 2連覇とかさらにプレッシャーがかかると思いますが。

アドヴィックスでは、ETロボコンは若手が腕を磨く場として、何年目の社員でも参加したい人が参加できるようになっています。今年のメンバーが全員残るのか、新人が入って半分ぐらい入れ替わるのか、その辺はまだわかりませんが、会社としては来年も参加すると思います。これまで、総合優勝の連覇を成し遂げたチームはありません。だからこそ、高い目標に向かって挑戦してみたいです。

がんばってください。ありがとうございました。