しかし、パソコンと通信インフラさえ整えばテレワークが完全に機能するというわけではない。情報漏えいなどのセキュリティの問題をはじめ、労災という観点からは労働者の就労環境にも配慮が必要となる。そこで、こうした問題を検証し、郊外型のテレワーク共同施設へのニーズの掘り起こしや今後の展開を検討する目的で、現在行われているのがテレワークセンターあざみ野での実証実験だ。
実は、国土交通省では2007年度にも郊外型テレワーク施設の実証実験を横浜市中川と埼玉県鶴ヶ島市で行っている。しかし、これらの施設はいずれも駅から徒歩5、6分の公的機関内に開設され、アクセスの不便さから利用者は少なかったという。そこで今回の実証実験では、立地を第一に設置場所が決定された。
次に重視されたのは、情報セキュリティの確保だ。センターには3つのタイプのワークスペースが用意され、用途に応じて選択することができる。全部で2室ある"クローズド"と呼ばれるスペースは、施錠も可能なドア付きの天井まで完全に仕切られた完全個室。それぞれの部屋にはNTTの専用光回線が1回線ずつ敷かれ、電話会議が可能なシステムも導入されており、そのほかは"セミクローズド"と呼ばれる磨りガラスのパーティションで仕切られた施錠可能なドア付きのワークスペースが6席、隣席とのパーティションのみの"オープンスペース"が2席用意されている。さらには、プロジェクターとスクリーンを装備した会議室も1室あり、それらの予約はすべてWeb上で行うことが可能だ。
また、実証実験の参加者には、個人専用の認証用USBキーが配布される。事前に社内で通常使っているパソコンに専用ソフトをインストールしておけば、USBキー1本で手元のパソコンにふだん使っているパソコンの画面が転送されるようになる。センター内で使用しているパソコンにデータをいっさいダウンロードすることなく、社内と同じ作業環境で作業を行うことができるなど、なりすましによる不正アクセスやウィルス感染したパソコンからの情報漏えいなどを防ぐことが可能だ。
そのほかの共有設備として、ドライバのインストールが不要でWebを経由して出力可能なコピー/プリンタ複合機が設置されている。デポジット式のコインロッカーも利用できるので、食事などで一時的に退席する際にも荷物を置いて安心して外出できるよう配慮がなされている。