日本ヒューレット・パッカード(日本HP)など国内企業5社が主催する、女性社員を対象とした異業種交流イベント「Women's Summit Tokyo 2008」が10月10日、開催された。同イベントは、2007年8月に日本HPの主催で行われた「Women's Summit Tokyo 2007」を前身に、趣旨に賛同した、NTTデータ、住友スリーエム、日産自動車、日立製作所の4社が共催企業として新たに参加。ダイバーシティ・マネジメントのNPO法人であるGEWELの協力のもと、第2弾のイベントとして、約20社におよぶ企業の女性社員約200名が参加した。

今回のイベントのテーマは、「Managing My Career ~キャリアの歩き方~」。"ダイバーシティ(多様性)"をテーマに、労働現場における女性をはじめとする多様な人材の登用の必要性が話し合われた前回のイベントから一歩進み、結婚・出産後も仕事を続ける女性がどのようにキャリア形成を行っていくべきかを考えるための講演やディスカッション、交流会などが企画された。

開催にあたって冒頭で挨拶を行った日本HP執行役員人事統括本部長の大月重人氏は「昨年のイベントでは、キャリア形成を考えるためのきっかけとなったという声や、キャリア女性と知り合うことができたといった声が多く、予想を超える成果が得られた。今年の参加者はより意識が高いと認識している。今回のイベントでは、女性管理職が陥りがちな落とし穴にはまらないためのヒントを持ち帰り、なにより将来のキャリア形成にあたっての自身のロールモデルとなる人たちとのネットワーキング(人脈形成)をしてほしい」と語った。

NTTデータ 代表取締役副社長 榎本隆氏

女性にとって、結婚・出産後も仕事を続け、キャリアを形成していく上で職場の理解は必要不可欠となる。なかでも上司や企業のトップが女性の労働環境をどのように考えるかは、女性が仕事を続けられるかを左右する重要な要素だ。今回のイベントで行われたNTTデータ 代表取締役副社長の榎本隆氏による基調講演では、企業のエグゼクティブとして女性社員の登用に対する現実と課題が明かされた。

榎本氏によると、NTTデータ・グループの社員数は2008年10月時点で約2万7,700人。このうち、女性が占める割合も年々増え、女性社員がどのようにキャリアを形成していくかが人事の課題のひとつになっているという。「いつになったら女性の役員が出るのかという話題がたびたび出る。先日、残念なことに、役員候補だった女性社員2人が辞めてしまった。副社長になってもアドバイスや支える人は必要なのに、彼女たちをバックアップできなかったことが悔やまれる」と明かした榎本氏。職場で働く女性に対しては、組織的なサポートが必要だと強調する。

一方、ダイバーシティの観点から女性や障害者の採用には積極的な姿勢を示すNTTデータだが、男性に比して女性の採用率はまだまだ低い。榎本氏によるとその理由は、システム開発会社の厳しい労働環境にあるという。「結婚では問題ないが、問題は出産。女性社員の退職率を見ると、入社10年目あたりがもっとも高くなっており、出産を機に退職するケースが多いことがわかる。人事最大の課題は、ここをいかに減らすか。優秀な素材が埋もれてしまうのは惜しい」と榎本氏。

この現状に対して、NTTデータが今年2月から本格的に取り組みを開始したのが"テレワーク"の導入。管理職、男性社員を含む全社員を対象に、上司の承認が得られた場合に、原則月8回まで自宅での勤務が可能だ。「100%ではなくとも、週に1、2日でもかまわない」(榎本氏)というように、柔軟な勤務体制が、女性が働き続けるためには重要な労働条件となる。

育児休暇・産休の制度では国内企業でもトップクラスを誇るNTTデータだが、榎本氏は「受け入れる環境が整っていない。伝統的な考え方を改め、男性的な単一的なカルチャーを改めなければならない」と、自社が抱える課題を挙げる。そこで"働き方の変革"のビジョンのもと、社内で自発的に立ち上がったのが、女性社員を中心とするワークライフバランスのためのワーキンググループ。女性社員限定のSNSを自主的に運営するなど、情報交換と意見交換が積極的に行われ、すでに女性社員の間には定着しているという。「会社主導だったらここまで定着しなかったかもしれない。自発的であったからこそここまで活性化された」(榎本氏)

過去に海外法人の社長も務め、現在も国際事業本部長を兼任する榎本氏。これまでの経験から「価値観が同じであれば、バックグランドは関係ない」と強調する。また「支えるのは仲間。自分の苦しみをわかってくれる人をひとりでも多くつくっていけば、楽しいキャリア形成ができるのでは」と、参加者へのアドバイスを送った。