大手半導体メモリベンダの独Qimondaは、炭素ベースの不揮発性メモリを研究している。その一端がIEDM 2008で披露された(講演番号21.4)。抵抗変化型メモリ(RRAM)の記憶素子に利用しようとする試みである。

炭素は原子同士が結合して様々な構造物を作り、構造物によって物理的な性質が大きく変わる。例えはダイヤモンドは絶縁体であり、グラファイト(黒鉛)は金属に近い電気伝導を示す。またカーボンナノチューブのように、独特の性質を備えた微小な構造体を作れる。半導体製造技術の微細化が今後も進むことを考慮したとき、炭素は相性の良い材料といえる。

Qimondaの研究チームは、電気的なパルスを入力することで炭素構造物の抵抗率(電気伝導率)を大きく変化させ、記憶素子として利用することを考えた。例えば高電圧のリセットパルスを投入してまず初期化し、それから低電圧のセットパルスを加えてデータを記憶させる。

炭素構造物と抵抗率の変化(IEDM 2008の論文集から抜粋)

まずベースとなる炭素構造物を3種類選び、検討した。それが以下の3つの構造物である。

  1. カーボンナノチューブ(CNT)
  2. 導電性炭素構造物
  3. 絶縁性炭素構造物

検討の結果、絶縁性炭素構造物が記憶素子に適していそうなことが分かった。

絶縁性炭素構造物を使って試作した記憶素子のセルアレイを試作し、特性を評価した。寿命試験では、オン状態(低抵抗状態)とオフ状態(高抵抗状態)の繰り返しに2.3×10の13乗回耐えた(読み出し電圧は0.1V、温度は75℃)。スイッチング時間は5.5Vでパルス幅が500nsの電圧を印加したときに遅延時間が175nm、スイッチングに要する時間が11nsだった。スイッチング特性はまだ改良の余地が大きい。

絶縁性炭素構造物を使って試作した記憶素子のアレイ(IEDM 2008の論文集から抜粋)

試作した記憶素子アレイの寿命特性とスイッチング特性(IEDM 2008の論文集から抜粋)