Shirley Borrett氏(イギリス)

一方、オランダ、北欧諸国に続いてテレワーク比率5位にランクしているイギリスでは、労働人口におけるテレワーカー比率は2005年に8%にのぼった。また、総労働人口のうちの自営業者が占める割合は30%、さらにそのうちの40%がテレワーカーだという。しかしこの統計では、テレワーカーの定義は"在宅でコンピュータを使って仕事をしている人"という狭義の意味でのテレワーカーの定義を用いており、また調査週1週間だけを基準としているため、「フルタイムに満たない場合や、調査週が休暇中だった場合にはカウントされない。測定評価上の一部問題がある」と登壇した、イギリステレワーク協会理事のShirley Borrett氏は指摘した。

イギリスにおけるテレワークの推進体制には、特に法律はなく、"Work Wise Week(より賢く働こう週間)"や"Work from home day(在宅勤務の日)"、"National commute smart week(全国スマート通勤週間)"といったプロモーションキャンペーンを通して政府も支援している。また、政府は2003年に"Right to request(要請権)"という考え方を導入し、6歳未満の子どもを持つ親は雇用者に対してフレキシブルワーキングを求めることができるようになり、そのなかに在宅勤務も含まれているという。2007年、この法律の対象は"ケアをしている人"に拡大され、正当な理由がない限り、雇用主は従業員の在宅勤務を却下できなくなっている。

Borrett氏によると、イギリスにおいてもテレワークは通常の仕事のスタイルとして全般的に前向きな見方になりつつあるという。しかし、イギリスにおける最大の阻害要因もやはり組織の管理職の姿勢にあり、雇用者と社員の関係をインフォーマルにするには大きすぎ、休暇/在宅勤務のサポートするような規模にない、中堅企業での導入は遅れぎみだ。これに対してBorrett氏は「テレワークの推進には有能なマネージャーが必要。コミュニケーション十分に取り、部下を理解して、時間ではなく結果で人を評価する考えを定着させなければならない」と語った。

Werner B Korte氏(ドイツ)

テレワーカー比率でイギリスに次ぐポジションにあるのはドイツだ。ドイツでは90年代にテレワークに対する取り組みが始まり、行政は動きが遅いというのがドイツの通例だが、90年代後半にはドイツの公共部門でも高いレベルの関心が集まり、多くの地域でテレワークに関するさまざまな実験が行われていた。2001年、ハンブルグ市では新しい仕事のスタイルを公共部門で促進することを目的に、モデルワークとして10万人の公務員のうち2万5000人を対象にに2/3の勤務時間を自宅で従事するテレワーク制度が導入され、以降急速に拡大した例がある。

一般に法を重んじることで知られるドイツだが、テレワークに関する法律は1980年代に提言された後、今も協議が続けられており、いまだ現実には至っていない。テレワークに関する公式な提言は、2002年にEUの「ヨーロッパのテレワークに関する枠組み」に合意したのみだ。しかし、テレワークなどICTの社会経済的な効果や影響などを専門とする民間の調査機関・エンピリカ研究所で理事を務める、Werner B.Korte氏は「1990年代は多くの人がテレワークについて語っていたが、語らないけれど実践しているというのが2000年代だ」と講演のなかで述べ、ドイツにおいてもテレワークは就業のひとつの形態として認識が変わった点を強調した。