日立製作所は6月9日、FDE(Forward Deployed Engineers)によるフィジカルAIの社会実装加速とともに、AI型サイバー攻撃の脅威に対するサイバーセキュリティソリューションを展開し、顧客の課題解決を支援するため、Google Cloudとの間で締結していた戦略的アライアンスを拡大することを発表した。

フィジカルAI社会実装とセキュリティ領域での連携拡大へ

現在注目度が高まっているフィジカルAIは、現場データから得られたAIの分析・判断を、各種機器や設備の自律的な制御・運用などといった具体的なアクションにまでつなぐ技術。このサイクルを繰り返すことでAIが継続的な学習を行い、状況に応じた最適な判断と実行が可能になるといい、日立はフィジカルAIの社会実装を通じて、社会インフラのトランスフォーメーションに取り組んでいるとする。

こうしたミッションの実現に向け、日立は、中核事業モデル「Lumada」で培ったIT・OT・プロダクトの強みを活かし顧客課題を解決する協創アプローチと、Google Cloudが保有する先進的なAIを掛け合わせ、FDEモデルを確立しグローバルに展開していくとした。

両社は2024年5月、生成AIを活用したイノベーション加速および生産性向上を目指し、複数年にわたる戦略的アライアンスを締結して以来、AI活用による価値創出の先進的な取り組みを推進していた。同アライアンスに基づき、日立の「Frontier AI Deployment Center」と密接に連携し、AIで社会インフラ革新を実現する次世代ソリューション群「HMAX」を、Googleの高性能AI技術を活用可能なエージェントプラットフォーム「Gemini Enterprise」によって高度化しているとのこと。両社はこの高度化されたHMAXを中核として、マルチモーダルなGeminiモデルを組み込み強化し、画像比較での保守点検チェックなどのユースケースも取り込むことで、複雑なオペレーションの自律化によるフロントラインワーカーの課題解決を推進する。また並行して、FDEの活動で得られるドメインナレッジをアセットとして再利用可能にするデータ基盤を通じたスケーラブルな展開により、広範な顧客へと価値提供を行っていくとした。

そして現在日立では、全社的な業務改革への活用を視野に、AX(AIトランスフォーメーション)を牽引するデジタルシステム&サービスセクター(DSS)に先行してGemini Enterpriseを導入し、現場の従業員自らAIを活用する実証プロジェクトを多数進行させることで、AIリテラシーの底上げを強力に推し進めているとのこと。さらに今般より、日立グループ全体での成功事例をもとにしてフィジカルAIを顧客の現場へ安全にスケールさせるため、戦略的アライアンスの拡大に至ったとする。

今回の協業拡大で重要となるFDEとは、顧客の事業現場に直接入り込み、経営課題の特定からPoCによる早期の価値検証、実業務へのアジャイルな実装までを一気通貫で行う“専門家集団”を指す。日立はこれまでの長年にわたる歴史の中で、顧客の現場に寄り添い、ともに課題の発見から解決までを伴奏する「現場密着型のエンジニアリング」を進めてきたといい、これがFDEモデルとも極めて高い親和性を持つという。こうした日立のDNAと、Google Cloudの先進性を融合させることで、幅広い産業に精通した日立のコンサルタントやAXエキスパート、および同社米国子会社であるGlobalLogicのAIネイティブソフトウェアエンジニアが、Google Cloudのトップエンジニアとの連携を通じて協力に顧客を支援できるとしている。

加えて両社は、AIが実世界と直接つながるフィジカルAI領域において不可欠となる高度なセキュリティについても連携する。AIはサイバーセキュリティ環境にも変化をもたらしており、攻撃者側もAIモデルを活用して、これまでにない規模で脆弱性の発見を加速させるとともに、エクスプロイトの生成も自動化しているという。こうした現状に対しては、自立型の次世代セキュリティソリューションを市場へと提供するといい、クラウドやAIのリスクに対する包括的な可視化と自動的なリスク低減を実現する「Wiz」などGoogle Cloudが有するセキュリティ技術と、鉄道・電力・金融などの社会インフラを支えてきた日立のミッションクリティカルSIの経験、およびOTナレッジを融合させ、対処していくとのこと。グローバルの日立グループ各社ではGoogle SecOpsを採用するなどカスタマーゼロでの有効性実証がすでに進んでおり、今後も顧客への提案拡大に向けて取り組んでいくとした。

また日立によれば、今後最前線で培われる実践的なAI実装の知見や技術を、「Frontier AI Deployment Center」へと集約していくという。そして集積された最先端の知見を、国内のシステムエンジニアへと広く還流させることで、グループ全体のFDE強化につなげるとともに、モデル展開を加速させグローバルでのAI活用による革新をさらに加速させるとしている。