社労士の受験資格は?基本情報や実務経験との関係について解説!

  • 社労士になるにはどうすればいいの?
  • 社労士試験の受験資格は?
  • 社労士になるには実務経験が必要なの?

憧れの職業である社労士(社会保険労務士)を目指して、予備校や通信講座の利用を検討中の方もいるでしょう。

学習方法を決めることも大切ですが、まずは社労士の基本情報を押さえることが最優先です。

特に社労士の受験資格については、誤解している方がいるかもしれません。

「自分は高卒だから関係ない」

「実務経験がないと無理なのでは?」

こんな勘違いをしないためにも、この記事では社労士の受験資格、社労士の試験内容などの基本情報、実務経験との関係を解説していきます。

社労士の通信講座について紹介している記事と合わせて、ぜひ一読ください。

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サイト監修者

徳永浩光

【キャリアコンサルタント】 Webメディア監修

【キャリアコンサルタントとして経験を活かしたサイトの監修】

国家資格キャリアコンサルタント所持。教育研修企業で7年間営業に従事したのちに独立。

中小企業〜大企業まで、会社の規模を問わず、キャリア支援の仕組みづくりや、個々人が理想のキャリアを描くための支援を行う。

キャリア支援の観点から、理想のキャリアや働き方を実現するためのヒントとなる情報を発信。

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目次

社労士についての基本情報

社労士は1968年に制定された社会保険労務士法をきっかけに「国家資格」として誕生しました。

令和5年3月31日現在、日本には44,870名の社労士が存在し、業務に勤しんでいます。

社労士は、職務上請求権が認められている8士業(※)の1つとして、男女ともに憧れの職業です。

国家資格とは……国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い

8士業→弁護士・弁理士・司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士・土地家屋調査士・海事代理士の総称

社会保険労務士 - Wikipedia社会保険労務士の徽章

どうすれば社労士になれるの?

社労士という肩書きで仕事をするためには、社労士試験合格実務経験の2つが必要です。

受験生は試験に合格したあと、2年間の実務経験を積むことで社労士として登録されます。

(※現在は、実務経験の代わりとして事務指定講習を受講する方法もある。)

  • 全国社会保険労務士会連合会が主催する社会保険労務士試験に合格する
  • 社会保険労務士事務所で2年間の実務経験または事務指定講習の受講

社労士の仕事内容

社労士は労働法や社会保険に精通したプロフェッショナルとして、主に3つの仕事に携わります。

  • 1号業務(独占業務)……申請書類等の作成
  • 2号業務(独占業務)……帳簿書類等の作成
  • 3号業務(非独占業務)……コンサルティング業務

社労士の具体的な仕事内容をしっかりとチェックした上で、自分に合っているのかどうかを考えて、受験を検討すると良いでしょう。

社労士の年収はどのくらい?仕事内容や将来性と一緒にご紹介の記事はこちら

社労士の受験資格とは?

社労士の受験資格は細かい条件が定められています。

大きく分類すると、学歴・実務経験・国家資格の3つですが、正確には受験資格コード01~16のいずれかに該当すれば受験可能です。

ここからは、社労士の受験資格を一挙に解説していきます。

  • 厚生労働省が認める受験資格16種類については社会保険労務士試験オフィシャルサイトから確認できます

受験資格1.学歴

社労士の受験資格は学歴に応じて大きく3種類です。

ここでは、社会保険労務士試験のオフィシャルサイトに記載された受験資格を、簡単な言葉にしてお伝えします。

また、社労士受験には受験資格を満たしていることを証明する確認書類が必要です。

各自、卒業証明書や学位記、成績証明書を用意しておきましょう。

4年制大学・短期大学・高等専門学校卒業者

4年制大学・短期大学・高等専門学校を卒業した方に対しては、以下のように受験資格が認められています。

  • 大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学、高等専門学校を卒業した者、専門職大学の前期課程を修了した者
  • 大学、専門職大学、高等専門学校において62単位以上の卒業要件単位を取得した者
  • 大学、専門職大学、高等専門学校において一般教養科目と専門教養科目が区分けされている場合には、一般教養科目36単位以上を取得し、かつ、専門教養科目の単位を加えて合計48単位以上の卒業要件単位を取得した者

また「62単位以上の卒業要件単位を取得した者」という括りから、大学在学中の者62単位以上を取得した上で中退した者も、社労士受験が可能です。

専門学校卒業者

専門学校を卒業した方に対しては、以下のように受験資格が認められています。

  • 旧高等学校令による高等学校高等科、旧大学令による大学予科、旧専門学校令による専門学校を卒業した者
  • 一般の大学・専門職大学・高等専門学校以外に、厚生労働大臣が認めた学校等を卒業した者
  • 修業年限が2年以上、課程の修了に必要な総授業時間数が1,700時間(62単位)以上の専修学校の専門課程を修了した者。「専門士」「高度専門士」の称号を取得している場合に限る。
  • 全国社会保険労務士会連合会の個別受験資格審査に合格した者

※厚生労働大臣が認めた学校は、88種類に及びます。

看護師学校・保育士学校・美容師学校・理容師学校・歯科衛生士学校なども対象になるため、社労士試験公式サイトで確認しておきましょう。

高卒の方

高卒の方は、残念ながら学歴で受験資格は取得できません。

しかし、別の方法で受験資格を取得できます。

高卒の方が受験資格を取得する方法
  • 通信制の大学や短大に通い、受験資格に必要な学歴を取得する
  • 社労士事務所で3年間、仕事に携わる
  • 社労士の受験資格に該当する他の国家資格を取得する

 

金銭的・時間的余裕がある方は、通信制大学や短大で2年間勉強して学位を取得するのが確実です。

すでに社会人として働いている方は、土曜日や日曜日を有効に使って卒業を目指しましょう。

受験資格2.実務経験(職歴)

社労士の受験資格を学歴で取得できない方は、実務経験を積むことで受験資格を取得できます。

実務経験に関する記述は以下の通りです。

  • 労働社会保険諸法令の規定で設立された法人の役員・従業者としての勤務歴が3年以上ある者
  • 公務員・全国健康保険協会・日本年金機構の役員などとしての勤務歴が3年以上ある者
  • 社会保険労務士・弁護士の業務の補助期間が3年以上ある者
  • 労働組合の役員・会社役員などとして労務経験が3年以上ある者
  • 労働組合の職員・会社の従業員として労働社会保険諸法令関連事務経験が3年以上ある者

金銭的・時間的余裕のない方は、実益を兼ねて、社労士事務所で働くのも1つの手です。

社労士事務所で3年以上従事した者は社労士の受験資格が取得できます。

他にも、弁護士の補助や労働社会保険諸法令に関する事務作業(一般企業でも可)に3年以上従事した者は受験資格を取得可能です。

自分の経歴が実務経験に当てはまるか不安な方は、全国社会保険労務士会連合会に「実務経験証明書」と「送付状」を送れば、回答が頂けます。

受験資格3.国家資格合格者

社労士の受験資格を取得するために、他の国家資格を利用する方法があります。

国家資格に関する記述は以下の通りです。

  • 社会保険労務士試験以外の国家試験のうち厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
  • 司法試験予備試験、旧法の規程による司法試験の第一次試験、旧司法試験の第一次試験又は高等試験予備試験に合格した者
  • 行政書士試験に合格した者

社労士の受験資格に対応した資格は、弁理士・公認会計士・不動産鑑定士など79種類です。

しかし、社労士と同様に学歴が必要な資格もあるため、実際に取得できる資格は半数以下になります。

その中でおすすめが行政書士です。

行政書士は受験資格が不問であり、法律について学べる点も優位に働くでしょう。

社労士登録には実務経験が必要

社労士試験に合格したあと、すぐに晴れて社労士と名乗れるわけではありません。

実は「私は社会保険労務士です」と名乗るには、社労士登録が必要になります。

社労士として都道府県社会保険労務士会に登録する方法は以下の2つです。

  • 社労士事務所で2年以上勤務する
  • 事務指定講習を受講する

どちらかのステップを踏んで、登録が済むと晴れて「私は社会保険労務士です」と名乗れます。

しかし、社労士の登録は義務ではありません。

試験合格後すぐに社労士として働くつもりのない方や登録後の年会費を払うのが勿体ないと感じる方は、先延ばしにする傾向があります。

さらに、社労士登録には関連費用がかかるため、すぐに決断できない方もいるようです。

ちなみに社労士として登録を行うと、次のようなメリットがあります。

社労士登録のメリット
  • 対外的に「社会保険労務士」を名乗れる
    →社労士保険労務士と有資格者では社会的評価に差が生まれる
  • 登録後の研修でスキルアップが可能
    →所属する社労士会から案内される研修やセミナーを通して、知識のブラッシュアップが可能
  • 社労士登録を通じて人脈が広がる
    →支部活動や研修会、行政協力を通じて、幅広く交流ができる

 

それでは、社労士登録の方法を順に見ていきましょう。

社労士事務所で2年以上勤務する

社労士事務所に所属しているだけで、登録要件を満たすわけではありません。

実務経験の大原則は「労働社会保険諸法令に関する2年間の業務経験」をすることで、さまざまな業務経験が必須です。

社労士登録に必要な業務例
  • 雇用保険、健康保険、厚生年金保険の被保険者資格取得届・喪失届に関する業務
  • 健康保険、厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届・月額変更届に関する業務
  • 雇用保険被保険者離職証明書に関する業務
  • 労働保険の概算・確定保険料の申告・納付に関する業務
  • 就業規則(変更)届に関する業務
  • 36協定届に関する業務
  • 労働者名簿に関する業務

 

事務指定講習を受講する

事務指定講習は「できるだけ早く社労士登録がしたい」という方におすすめの制度です。

本来ならば、2年以上の実務経験が必要なところを半年間の研修で代替できます。

事務指定講習は「通信指導過程」と「面接指導過程」の2つで構成され、受講料として77,000円が必要です。

学習内容・日程ともに厳しく設定されているため、課題提出や出席日数は確実にこなすようにしましょう。

  • 通信指導過程……例年2~5月に実施され、自宅に届いた諸教材を基に労働・社会保険の具体的手続き方法を学びます。
    課題には提出期限が設けられ、期日を守って添削指導を受けるのが絶対条件です。
  • 面接指導過程……例年7~9月に実施され、4日間全科目に出席することが条件です。
    通信指導過程を通過した者だけが受講できます。

事務指定講習のメリット

  • 2年間の実務経験免除
    →社労士合格のために1,000時間を超える勉強をした方にとって、合格後すぐに就活を行うのは想像以上に負担がかかります。
    事務指定講習であれば、自分の時間をある程度確保できるため、精神的負担も軽くなります。
  • 特別教材が入手できる
    →事務指定講習に参加すると、市販では到底手に入らない教材が頂けます。
    例えば、社労士業務の年間スケジュールが網羅された「社労士手帳」「社会保険労務六法」は社労士の必需品です。
  • 現役社労士の講義が受講できる
    →面接指導過程の講師陣は、各都道府県にある社労士会から選ばれた支部長クラスの人物です。
    実務経験のない新米社労士にとっては、刺激的な話ばかりが聴けるでしょう。
    また、将来独立を考えている方は開業社労士の声を聴ける数少ないチャンスです。

事務指定講習のデメリット

  • 受講料が高額
    →事務指定講習の受講料は77,000円です。
    社労士試験に合格するため、予備校や通信講座を利用していた方は、更なる出費になります。
    遠方からの受講生は、交通費や滞在費もプラスされるため、10万円を超える出費になるでしょう。
  • 4日間連続で休暇を取る必要がある
    →事務指定講習の面接指導過程は、4日連続で実施されます。
    そのため社会人として働いている方は、休暇を取得するのが難しいでしょう。
    あなたの夢に対して理解のある会社かどうかが鍵になります。
  • 実務経験を経た方と比較すると実力が劣る
    →「4日間の講習を受けた人物」と「2年間事務所で働いた人物」どちらが社労士として実力があるかは明らかですよね?
    いくら知識を頭に詰め込んだとしても、実務をこなした方と比較すれば、どうしても実力が劣ります。
    自分に自信をつけるためには実務経験を積むことが最大の近道と言えます。

社労士は女性に人気の資格

社会保険労務士白書によると、2019年の時点で社労士の男女比は7:3となっています。

2009年からの10年間で、女性の占有率は5%上昇しました。

女性の割合が31.3%を記録するのは、8士業でも珍しいことで、社労士の女性人気が伺える結果となっています。(司法書士:17%、行政書士:13.7%、中小企業診断士:6.4%)

社労士が他士業より女性人気がある理由は以下の3つが考えられます。

社労士が女性に人気の理由
  • 性別を問わずできる業務内容であること
  • 産休明けであっても復帰しやすい
  • 緻密さや正確さを求められる仕事が得意

 

理由1.性別を問わずできる業務内容

社労士の業務内容は、事務作業や数字を扱うものが基本です。

営業職のように体力や持久力が必要となることは稀なので、男女問わず活躍が期待できる業務内容と言えます。

また、コミュニケーション能力が必要なコンサルティング業務は、男性よりも女性の方が得意分野とされているのも特徴です。

理由2.産休明けであっても復帰しやすい

産休を経験した女性は、少なからず職場復帰に不安を抱くものです。

「1年ぶりの職場復帰だけど、変な目で見られないかな……」とか「仕事についていけなかったらどうしよう……」とか考える方も少なくないでしょう。

しかし、社労士の資格は社会的信頼を担保するものであるため、産休明けであっても復帰に戸惑いを持つことはありません。

また、社労士は開業したり、パートタイマーとして働いたりと働き方に束縛されないため、子育ての際も仕事と両立が可能でしょう。

理由3.緻密さや正確さは女性の方が上手

社会保険の書類作成や給与計算は、決まった方法に則って作業を行うため、緻密さと正確さが求められます。

特に女性の方は、年金や保険といった社会保険制度に関心を持つことが多いようなので、社労士の仕事に対する意欲が高い方も多いようです。

社労士試験合格者はどんな方?

社労士に合格した女性が他士業より目立つ理由はお分かり頂けたでしょう。

では、社労士に合格した方はどんな年齢層で、どんな仕事をしているのでしょうか?

 参考:社労士試験合格者の年齢階層別割合

社労士試験に合格した方の約60%が30代と40代で占められています。

30代と言えば、勤続10年を迎えてこれからの自分を考え始める年齢でもあることから、やはり社労士として新しい人生を送ろうと決意した方は、30代や40代に目立つようです。

では、どうして社労士の資格を取得しようと考えたのでしょう?

ここでは以下の2パターンについて考察していきます。

社労士の資格を取得した理由
  • 社労士に転職したい
  • ダブルライセンスを取得したい

 

社労士に転職したい方

社労士に転職しようと考えた以上、何かしらの理由があるはずです。

例えば、以下のような理由で社労士に転職したいと考えた方もいるでしょう。

社労士に転職した理由
  • アルバイト時代に給料の支払いをめぐるトラブルを経験し、同じ悩みを持つ労働者の力になりたいと思い、社会保険労務士を志した。
  • 企業が健全に発展できるような労働環境づくりをサポートできる点に魅力を感じ、社会保険労務士を志した。
  • 前職で企業との関係がうまく行かずに苦労した経験があり、貴事務所の企業と労働者との円満な関係をサポートする理念に共感したため。
  • 大学時代にワーク・ライフ・バランスについて学んで経験があり、貴事務所がワーク・ライフ・バランスを重視した労働環境づくりに力を入れているのを知り、希望した。

何も立派な理由でなくとも、社労士に挑戦する資格はあります。

「もっと収入が欲しい」とか「自分に箔をつけたい」とかも理由の1つです。

ダブルライセンスを取得したい方

社労士以外の国家資格をすでに取得済みで、ダブルライセンスが欲しいために社労士を受験した方もいるでしょう。

ダブルライセンスはキャリアアップや高収入につながるだけでなく、社会的信用を厚くできるのがメリットです。

そこで社労士と相性の良い資格を8つご紹介します。

すでに該当する資格をお持ちの方は、社労士を目指してみてはいかがでしょうか。

社労士と相性の良い資格一覧
  • ファイナンシャルプランナー(FP)
    →住宅ローンや不動産、子供の教育費用といった個人のお金に関するエキスパート
  • 行政書士
    →官公庁などに提出する書類の作成や書類作成に関する相談を受ける仕事
  • 中小企業診断士
    →企業の経営戦略の相談に乗るなど経営コンサルタントとして活動できる資格
  • 司法書士
    →検察庁や法務局に提出する書類を作成したり、登記手続きの代行をしたりする仕事
  • 個人情報保護士
    →企業などに対して個人情報の取り扱いに関するアドバイスをする仕事
  • メンタルヘルス・マネジメント検定
    →労働者のメンタルヘルスケアに関する知識などを習得するための検定
  • 税理士
    →税務のエキスパートとして企業の財務処理や決算処理を担う
  • キャリアコンサルタント
    →個々の能力や経験に応じてキャリア形成や能力開発に関する相談を行うエキスパート

 

まとめ

今回は社労士の受験資格について、実務経験の内容を交えながらご説明しました。

新しい発見があった方は、今のうちに復習しておきましょう。

  • 社労士の受験資格は学歴・実務経験・国家資格の3種類から取得できる
  • 社会保険労務士を名乗るためには、社労士登録が必要
  • 社労士登録は2年間の実務経験か、事務指定講習の受講が必要

社労士の学習を効率的に進めるには通信講座がおすすめで、中でも当サイトではスタディングの講座をおすすめしています。

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監修者

国家資格キャリアコンサルタント

教育研修会社にて、7年間営業として、企業へのキャリア開発支援制度の導入、個人のキャリア開発に携わり、その後独立。

キャリア支援を通して、個々人の理想の働き方・生き方を考えるサポートをしている。

その一環として、マイナビニュース資格の監修を担当。

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