NISA(ニーサ)とは、年間120万円以下の投資で得た利益が非課税として優遇される制度です。
NISA口座で株取引すれば税金が免除されておトク。
NISA口座を開設する人は年々増加傾向にあり、金融庁の調査によると2018年12月末で「1,253万以上」ものNISA口座(一般・つみたて)が開設されています。
さらにジュニアNISAも始まり、20代や30代だけでなく未成年のNISA口座数も増えてきました。
結婚資金や教育資金、住宅購入資金や老後資金など、NISAを活用することで、効率的に準備することも可能です。
この記事ではNISAの制度について、どんなメリットやデメリットがあるのかといった基本情報から注意点、NISAにおすすめの証券会社まで、初心者がおさえておきたいNISAの概要を説明します。
NISA入門!メリットは株で得た利益が非課税になること
NISA(ニーサ)とは少額投資非課税制度のこと。
年間120万円以下の投資で得た利益が非課税として優遇される制度です。
国民の銀行預金や貯金を投資に使ってもらうことを目的に、2014年にスタートしました。
NISAはイギリスのISA(アイサ、Individual Saivngs Accountの略)をモデルに作られ、英国では1999年の導入以来、国策として高い評価を得ています。
20歳未満の子供を対象としたジュニアNISAもあります。大学にかかる高額な学費をカバーするのに最適なジュニアNISAについて、詳しくは「ジュニアNISA(ニーサ)とは?子どもの為に賢く投資しよう!」を参考にしてください。
また2018年1月から「つみたてNISA」という新しいNISAが導入されています。年間の投資上限や非課税期間など、通常のNISAとの特徴の違いは「つみたてNISAとは?既存NISAとの違いとiDeCoとの併用方法」で解説しています。
NISA口座は確定申告が不要!株や投資信託の利益が非課税でお得
NISAのメリットはなんといっても、120万円までの投資なら株や投資信託などで得た利益(配当金、売却益)の税金がかからないこと。
NISAではない普通の口座(特定口座・一般口座)だと、投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISAなら非課税になります。
NISA口座か、それ以外の口座かでどれくらい利益に違いが出るのか、具体的に見ていきましょう。
100万円の株を買って、150万円まで値上がりしたときに売ったら、売却益(譲渡益)は50万円です。
特定口座・一般口座で売却益「50万円」が発生した場合、実際に得られる金額は次のとおり。
500,000円
【税金】
500,000円×20.315%=101,575円
【実際に得られる金額】
500,000円-101,575円=398,425円
ところが、NISA口座で、売却益「50万円」が発生した場合、税金はかからないので、50万円まるまる利益としてもらえるのです。
このケースでは利益の差はなんと10万円以上。
さらに非課税ということは、確定申告も必要ありません。確定申告に慣れていない会社員にとっては、手間もかからずありがたい制度であるといえます。
NISAは年間120万円まで!非課税対象の投資金額に制限あり
非課税というメリットがある分、NISAにはいろんな制限があります。
原則1人1口座までしか口座を開設できないこともそのひとつ。
1人1口座しか作れないNISA口座だ。どこの金融機関で作るかよく考えろよ!
その他にも、投資金額に関するルールがいくつかあります。
- 金融商品の購入は年間120万円まで
- 非課税枠の翌年繰越は不可
- 金融商品売却後、非課税枠は回復しない
NISA口座では、年間120万円までしか株などの金融商品を購入できません。
また、120万円の非課税枠はその年限りしか使えず、たとえ30万円分余ったとしても次の年に繰り越すことは不可。
株を買ってその株を売っても、非課税枠が回復するわけではないことにも注意が必要です。
次の1月になれば、新しい非課税枠が利用できるようになるので、また120万円までの投資が可能です。
NISAの非課税期間は5年間!税金免除も期間限定
非課税期間についての制限もあります。
株の売却益や配当金が非課税になる期間は、買った年を含めて5年間です。
2014年のうちに買った株は、2018年12月末まで非課税で運用(売ったり保有したり)できるということ。
NISAの制度をわかりやすくしたのが上の図です。1年120万円まで(2014~2015年は1年100万円まで)、5年間非課税で運用できるのがわかります。
NISAで5年を過ぎたら活用したいロールオーバー
では、非課税期間の5年を過ぎたときはどうすればいいのでしょうか。
その場合の選択肢は次の3つ。
- NISAで買った株を売る
- NISA以外の口座に移す
- 翌年からの非課税枠に移す(ロールオーバー)
2014年に購入してから5年経過する資産は、2019年の非課税枠にロールオーバーが可能です。ロールオーバーをすることで、非課税期間を継続できます。
2017年の法改正によりロールオーバーできる金額に上限がなくなりました。
購入した株がどれだけ値上がりしても、全額ロールオーバー可能になったのです。
本来NISAの非課税枠は120万円なのですが、ロールオーバーの場合は120万円を超えていてもOKです。
だから2019年は、新たに非課税枠で株や投資信託を買えないことを覚えておけよ。
ロールオーバーしたのが50万円分であれば、「120万円-50万円=70万円」なので、70万円分はNISA枠で新たに株を購入できます。
なお、5年の期限が来たときに何も手続きしなければ、問答無用で特定口座へ移管されるので注意してください。
ロールオーバーについて、詳しくは「NISAでロールオーバーすべき?しないべき?具体的な手続きも紹介」も参考にしてください。
NISA+特定・一般口座での運用で損が出たらデメリットが
NISA(ニーサ)の概要やメリット、便利なロールオーバーについて紹介しました。
テレビのCMなどでは非課税というメリットだけが強調されていますが、メリットがあればもちろんデメリットもあります。
とくに「NISA口座」と「NISA以外の口座」を同時に運用している人は、次の点に注意してください。
それぞれ詳しく確認しましょう。
NISAのデメリットその1:利益と損を相殺する「損益通算」ができない
NISA以外の口座であれば、投資での利益と損を相殺できます。一方では儲けたけど、もう一方では損した場合に、利益と損を中和できるということです。
上の場合、相殺してプラスマイナス0になりますから、確定申告すれば税金はかかりません。
一方、NISA口座だとこの損益通算ができないのです。
楽天証券のNISA口座内で出る損失は非課税対象なので、SBI証券での利益と相殺することができず確定申告時に20.315%課税されます。
トータルで見ると全く儲けていないのに、NISAでは税金だけ支払い義務が発生してしまうのです。
NISAのデメリットその2:損失を3年間繰り越す「損失繰越」ができない
特定口座や一般口座なら、確定申告をすればその年に出た損失を3年間繰越して、税金の繰越控除を受けられます。
上の場合、損失繰越していれば50万円の損失より20万円の利益のほうが少ないので、今年に出した利益20万円に対して税金はかかりません。
しかしNISAでは、損失繰越ができないのです。
この場合だと、昨年に出したNISAの損失は繰り越すことができないので、今年に出した20万円の利益に対しては「20.315%課税」されてしまいます。
NISA口座とNISA以外の口座を同時に運用しようと考えている人は、デメリットがあることも覚えておいてくださいね。
NISAのデメリットその3:NISAの株は「代用有価証券」にはならない
NISA口座で信用取引※はできず、NISA口座で持っている株は代用有価証券として使えません。
お金や株式を担保に証券会社からお金を借りて、その担保の約3倍の金額の取引が可能になる株式取引のこと。信用取引には、返済期限が6ヶ月と決められている制度信用取引と、証券会社が自由に返済期限を決められる一般信用取引があります。
信用取引については「信用買い、空売りとは?株初心者向け信用取引の基礎知識」の記事で詳しく説明しています。
通常は株も担保(=代用有価証券)に使えるのですが、NISA口座で保有している株は代用有価証券にできません。
損失が出たときに利用できる税制度は、次の記事で詳しく紹介しています。
非課税のはずのNISAで課税!?知っておきたいNISAの落とし穴
次にNISA(ニーサ)で思いもかけない損をしないために、気をつけておきたい点について紹介します。
次から詳しく見ていきましょう。
配当金の受け取りは株式比例配分方式にしないと課税される
NISA口座を作ったら「配当金等受取方式」を、必ず「株式比例配分方式」にしてください。
配当金受取方式とは、その名の通り「配当金の受け取り方」のことで、いくつか種類があります。
株式比例配分方式 | 証券口座で受け取る |
---|---|
配当金領収証方式 | ゆうちょ銀行や郵便局で「配当金領収証」を持参して受け取る |
登録配当金受領口座方式 | 銀行口座で受け取る |
株式比例配分方式以外だと配当金に課税されてしまいます。
受取方式は口座開設後でも変更できますから、株式比例配分方式以外になっている人は今すぐ変更しましょう。
値下がりしたNISA株を課税口座に移すと利益なしで課税されることも
NISAで購入した株が値下がりしたときも注意が必要。
例えば、NISA株で購入した株が20万円に値下がりしてしまったとします。
そのまま非課税期間が終了し特定口座などの課税口座に移管。その後値上がりすると、値上がり分に税金がかかってしまうのです。
実際には「50万円で買って50万円で売った」ので、全く利益が出ていません。
しかしNISAから移管した後に値上がりしたため、課税されて約60,000円も損してしまいます。
NISA口座内で買ったあとに値下がりした株を、NISA以外の口座に移す場合には気をつけてください。
金融機関を変更しても過去にNISAで購入した分は移管不可
2015年から年1回だけ、NISA口座を開設する金融機関を変更できるようになりました。
その年にまだ1回も売買をしていない場合のみ、金融機関を変更できます。
ただし、NISA口座を移した場合でも、過去にNISA口座で買った株や投資信託は、新しい金融機関の口座に移せないことは覚えておいてください。
古い口座は保有と売却専用の口座として残るので、人によっては管理が面倒だと思うかもしれません。
また、ロールオーバーしたい場合も注意が必要。
ロールオーバーは同一金融機関内でしかできません。
以前の金融機関で購入した商品を新しい金融機関のNISA口座でロールオーバーするのは不可。
どうしてもロールオーバーしたければ、以前の金融機関にNISA口座を戻す必要があります。
そうでなければ、過去のNISA購入分の資産は売却するか通常口座に移管するしかないのです。
さらに、口座変更手続きには、2~4週間くらいかかることにも注意が必要。
手続き中は株の売買などができないので、購入機会を逃すことにもなりかねません。
ただし同一証券会社内でNISAから特定口座に移し、そこから別の証券会社の特定口座に移すのは可能だぞ。その場合、同一銘柄は全部移す必要がある。
興味が出たらすぐ実行!NISA口座開設方法
NISA(ニーサ)の基本概要やメリット・デメリットを理解して、NISAをやってみたい!と思ったら口座を開設しましょう。
まずは口座を開設する金融機関を決めます。NISA口座を開くには、その金融機関に口座を持っている必要があるのです。
各証券会社や銀行では、株式売買手数料も取り扱い商品(株・投資信託)もサービスも多種多様なので、いろいろ比較して検討しましょう。
例えば、銀行では投資信託は購入できますが株は購入できません。また、証券会社によっては投資信託を扱っていないところや、外国株を扱っていないところも。
NISA口座を選ぶ前に、まずは次の項目をチェックしてください。
- 購入したい金融商品があるか
- 売買手数料が高くないか
ネット証券各社の取扱商品やNISA口座の売買手数料は「初心者が口座開設するならここがおすすめ!証券会社の選び方」の記事で比較しています。
とはいえ、比較するのは面倒、とにかく1番おすすめの証券会社を知りたい!という人もいますよね。
そんな人のために、筆者が数ある証券会社を徹底的に比較検討し、NISAにおすすめな証券会社をピックアップしました。
ずばり、その証券会社とは「SBI証券」と「auカブコム証券」です!
SBI証券は国内株や投資信託などの取り扱い数が豊富で業界ナンバー1
SBI証券のNISA口座では、国内株式の売買手数料と、海外ETF※の購入時手数料がなんと0円なんです!
上場投資信託のこと。分散投資ができる投資信託としてのメリットと、リアルタイムな時価で取引できる株式としてのメリットを併せもつ、人気の高い金融商品です。
ETFについて詳しい解説は「ETFとは?仕組みやメリットをわかりやすく解説」を参考にしてください。
NISAは非課税でただでさえおトクなのに、売買手数料まで無料なんてSBI証券を選ばない手はないですよね。
「まだNISA口座を作っていない」「これからSBI証券でNISA口座を作りたい」という人は、ぜひこちらから口座開設してください。
手数料の割引サービスが豊富なauカブコム証券
NISA口座以外での取引も検討している、もしくは50歳以上のシニアや女性ならauカブコム証券での口座開設もおすすめです。
auカブコム証券には手数料の割引サービスが用意されており、うまく活用すれば現物取引の手数料をかなり抑えられます。
- シニア割引(50歳以上の全員が対象)
- 女子割(女性全員が対象)
- NISA割(NISA口座を持つ人が対象)
- 株主推進割(対象銘柄を持つ人が対象)
- 株主優待割(対象銘柄を対象)
- auユーザー割(auカブコム証券でau IDを登録した人が対象)
これら割引サービスは併用することが可能。
例えば、女性がNISA口座を開設すれば、NISA割+女子割が使えるのでダブルでおトクです。
該当する手数料割引はauカブコム証券のホームページから確認できます。
事前に自分がどれくらいの割引を受けられるか確認しておくといいでしょう。
ちなみにauカブコム証券も、NISA口座での現物株式取引の売買手数料が無料です。
NISA口座開設までの流れ(ネット証券の例)
証券会社でもNISA口座だけを作ることはできません。
まずは証券総合取引口座(総合口座)を作ってから、NISA口座を開設することになります。
ここでは、SBI証券を例にして、NISA口座開設から取引開始までの流れを見ていきましょう。
- SBI証券のサイトから総合口座を開設(最短1営業日)
- NISA口座開設の書類請求
- 申込書に必要事項を記入して返送
- 税務署での確認作業(1~2週間程度)後、NISA口座開設完了
- 取引開始
NISA口座から特定口座に移すことはできるが、逆は無理なんだ。残念だったな。
口座ができたら投資デビュー!NISAで買うべき銘柄の特徴2つ
口座が開設できたら、いよいよ取引開始です。
NISAのメリットである「非課税」を活かせる投資は、大きく2パターン。
- 配当金狙い:配当金がたくさんもらえる株を狙う
- 売却益狙い:企業が成長して株価が上がりそうな株を狙う
実際NISA口座で人気があるのも、みずほフィナンシャルグループ、伊藤忠商事、日産自動車などの高配当株です。
テレビ番組の影響で株主優待がある株も人気ですが、株主優待でもらえる企業の自社製品やお米などはもともと非課税。
株主優待だけで選ぶとNISAのメリットが生かせないので、もしNISAで株主優待株を選ぶなら「優待もあって高配当の株」を選ぶのが上手な使い方ですよ。
いろいろ探してみろよ!
上の2パターンに当てはまる株の中から複数の銘柄を選んで投資しましょう。
その方がリスクが分散できておすすめです。
NISAの非課税枠を存分に活用して資産形成を目指そう
効率的に資産運用ができるので、教育資金や老後資金などを作るためにも活用できます。
ただし、損が出た時でも損益通算や損失繰越ができないというNISA特有のデメリットがあることも覚えておきましょう。
また、NISA口座内で値下がりしてしまった株を特定・一般口座に移すと、株価上昇時に課税されてしまうことがあるので注意が必要です。
NISAに興味が出てきたという人は、まずは証券会社への口座開設から始めましょう。NISA口座での現物株式取引手数料が無料のSBI証券とauカブコム証券が特におすすめ。
資産形成のために、ぜひNISAで取引を始めてみてください。