二級建築士の資格を取れば、規模や構造に制限はあるものの、自分の家を設計できます。
しかし、誰でも簡単に二級建築士の資格を取れるわけではありません。
資格を取得するには、厳しい受験資格をクリアした上で試験に合格する必要があります。
今回は、二級建築士の難易度を合格率や受験資格の観点から解説します。
すでに建築の道を歩んでいる方はもちろん、これから建築の道に進もうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
二級建築士の試験勉強は、通信講座もおすすめです。
二級建築士の通信講座は以下の記事にてまとめているので、あわせて参考にしてください。
→二級建築士のおすすめ通信講座5選と失敗しない講座の選び方の記事はこちら
二級建築士の難易度は高い?
二級建築士は国家資格の1つで、戸建て住宅の設計や工事管理などを請け負う仕事です。
一級建築士と比較すると知名度はやや劣りますが、難関資格であることは変わらないでしょう。
この章では、二級建築士の難易度を偏差値と合格率の観点から解説します。
二級建築士の偏差値
資格の難易度を知るための指標として、資格偏差値があります。
資格偏差値は難易度を数値化したもので、他資格との比較が可能です。
まずは二級建築士の偏差値を確認してみましょう。
資格名 | 偏差値 |
---|---|
医師国家試験 | 75 |
公認会計士 | 75 |
司法書士 | 72 |
不動産鑑定士 | 69 |
一級建築士 | 66 |
中小企業診断士 | 66 |
社会保険労務士 | 65 |
行政書士 | 65 |
土地家屋調査士 | 64 |
管理栄養士 | 61 |
社会福祉士 | 57 |
二級建築士 | 56 |
管理業務主任者 | 55 |
二級建築士の偏差値は56で、難関資格と呼ばれる公認会計士や中小企業診断士より10〜20と低い位置づけです。
また、建築士界の最高峰に位置する一級建築士は偏差値66で、二級建築士より10高い位置にあります。
あくまでも偏差値という物差しで測った場合の数値ですが、二級建築士の難易度はさほど高くないといえます。
二級建築士の合格率
一般的に合格率が低い資格は難関資格である傾向が強く、合格率10%を切る資格の大半は難関資格です。
その中で二級建築士の合格率はどのくらいなのでしょうか?
過去5年間の二級建築士合格率は以下の通りです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
平成30年度 | 23,533名 | 5,997名 | 25.5% |
令和元年度 | 22,715名 | 5,037名 | 22.2% |
令和2年度 | 22,628名 | 5,979名 | 26.4% |
令和3年度 | 23,513名 | 5,559名 | 23.6% |
令和4年度 | 22,694名 | 5,670名 | 25.0% |
令和5年度 | 22,328名 | 4,985名 | 22.3% |
建築技術教育普及センターのデータによると、二級建築士の合格率は25%前後で推移しています。
4人に1人が合格すると考えれば、高い合格率と言えなくもありません。
しかし、受験生全体のレベルも高いため、十分な試験対策が必須です。
二級建築士の合格率が高い理由
ここまでは二級建築士の偏差値や合格率から難易度を確認しましたが、この章では二級建築士の難易度が高い理由を4つご紹介します。
- 受験資格
- 勉強時間
- 試験内容
- 合格基準
理由1.受験資格
二級建築士の受験資格は令和2年度に大幅な改正が実施され、より多くの人々に受験のチャンスが与えられる形になりました。
しかし、現在も学歴や実務経験などの条件が残っており、一筋縄では試験合格・免許登録にたどり着けません。
二級建築士の受験資格を簡単に解説します。
建築に関する学歴または資格 | 実務経験年数(受験時) |
---|---|
大学・短期大学・高等専門学校・高等学校・専修学校・職業訓練校において、指定科目を修めて卒業した者 | 0年 |
建築設備士 | 0年 |
その他都道府県知事が特に認める者 | 所定の年数以上 |
建築に関する学歴なし | 7年以上 |
二級建築士の受験資格は「建築に関する学歴」が非常に重要です。
所定の大学や学校で建築に関する指定科目を修了すれば、実務経験なしでの受験が可能です。
一方、大卒であっても建築に関する科目を修了していなければ、実務経験が7年以上必要とされます。
- 建築設計製図
- 建築計画
- 建築環境工学
- 建築設備
- 構造力学
- 建築一般構造
- 建築材料
- 建築生産
- 建築法規
- その他
卒業学校によって取得すべき単位数は異なりますが、必要単位数に届いていれば、実務経験0年で受験できます。
しかし、指定科目を履修したものの、必要単位数に到達していない場合は1年以上の実務経験が必要とされます。
自分の取得した単位が指定科目に含まれているか不安な方は、ぜひ建築技術教育普及センターのホームページで確認して下さい。
都道府県の学校別に指定科目が掲載されているため、照らし合わせにも便利です。
理由2.勉強時間
二級建築士合格にかかる勉強時間は500〜700時間とされています。
基礎知識の有無によりますが、効率よく勉強すれば半年での合格も可能です。
初学者は専門的な知識を蓄えるのに時間を要するかもしれませんが、受験生の大半は指定科目修了または実務経験を積んだ方のため、問題ないでしょう。
理由3.試験内容
二級建築士の試験は「学科」と「製図」の2段階制です。
最初に学科試験が実施され、合格者のみが製図試験に進めます。
ここでは学科と製図の試験内容を簡単に解説します。
【学科試験】
学科試験は学科Ⅰ〜学科Ⅳの4種類で、それぞれ25問(五肢択一式)から構成されます。
学科Ⅰと学科Ⅱで3時間、学科Ⅲと学科Ⅳで3時間の計6時間の試験です
出題科目 | 出題内容 |
---|---|
学科Ⅰ(建築計画) |
|
学科Ⅱ(建築法規) |
|
学科Ⅲ(建築構造) |
|
学科Ⅳ(建築施工) |
|
各科目13点以上(基準点)かつ総合点60点以上を満たせば、学科試験に合格できます。
しかし、試験の難易度によって基準点が上下する場合があるため、注意が必要です。
通常、学科試験実施から2ヶ月あけて製図試験が実施されます。
【製図試験】
製図試験は試験直前に与えられたテーマにのっとり、5時間かけて設計製図を完成させる試験です。
合格に必要な能力として、設計(エスキス)する能力と効率的に製図する能力が挙げられます。
製図の段階でミスがあると減点対象になるため細部まで注意を払うことが大切です。
近年は、以下のようなテーマで試験が実施されました。
実施年度 | テーマ |
---|---|
令和5年度 | 専用住宅(木造) |
令和4年度 | 保育所(木造) |
令和3年度 | 歯科診療所併用住宅(鉄筋コンクリート造り) |
令和2年度 | シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい |
令和元年度 | 夫婦で営む建築設計事務所を併設した住宅 |
平成30年度 | 地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅(鉄筋コンクリート造・ラーメン構造・三階建て) |
平成29年度 | 家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(木造2階建て) |
二級建築士の試験は学科に加えて製図試験をクリアする必要があるため、難易度が高いとされています。
また、試験時間が長時間(製図は休みなしの5時間)に及ぶため、高い集中力が要求される試験です。
理由4.合格基準
二級建築士の難易度が高い理由として「合格基準の厳しさ」が挙げられます。
正誤がすぐにわかる学科試験と違い、製図試験は細かな採点基準が設けられています。
自分ではミスをした意識がなくとも、細かい箇所でのミスが重なり不合格になる可能性もある厳しい試験です。
ここでは製図試験の採点基準を簡単に解説します。
【製図試験の採点ポイント】
製図試験では以下の項目が採点ポイントです。
- 設計課題の特色に応じた計画
- 計画一般
- 構造に関する理解
- 断面構成に関する知識
- 要求図書の表現
- 設計条件や要求図書に対する重大な不適合
これら6項目を採点した後、ランクⅠ〜Ⅳの4段階に区分します。
ランク | 評価結果 |
---|---|
ランクⅠ | 「知識」及び「技能」を有する者 |
ランクⅡ | 「知識」及び「技能」が不足している者 |
ランクⅢ | 「知識」及び「技能」が著しく不足している者 |
ランクⅣ | 設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当する者 |
この中で合格はランクⅠのみで、未完成や設計条件の違反に該当する方は不合格となります。
ちなみに令和3年度の製図試験合格率は48.6%でした。
二級建築士と他資格の難易度比較
この章では二級建築士と他資格を比較することで、二級建築士の難易度が理解できます。
比較する項目は以下の通りです。
- 合格率
- 偏差値
- 勉強時間
- 受験資格
- 試験内容
- 受験人数
比較1.宅地建物取引士
宅地建物取引士いわゆる「宅建」は、不動産取引の専門家で、不動産取引で生じる重要事項をお客様に説明するのが主な仕事です。
比較項目 | 二級建築士 | 宅地建物取引士 |
---|---|---|
合格率 | 22.3%(令和5年度試験) | 17.2%(令和5年度) |
偏差値 | 56 | 57 |
勉強時間 | 500~700時間 | 200~300時間 |
受験資格 | あり(建築科目の履修または実務経験が必要) | なし(学歴・性別・国籍・年齢関係なし) |
試験内容 |
※学科試験と製図試験は別日実施です。 |
|
受験人数 | 22,328人(令和5年度試験) | 233,276人(令和5年度) |
合格率や偏差値だけを見ると、宅地建物取引士の方が高い難易度に見えます。
しかし、宅地建物取引士は受験資格が無く、試験時間も短いため、より多くの方に合格するチャンスがあります。
受験人数に圧倒的な開きがある理由は、やはり二級建築士の受験資格が厳しいためでしょう。
比較2.土地家屋調査士
土地家屋調査士は、不動産の表示登記で必要な土地または家屋を調査する専門家です。
主な仕事は不動産の物理的状況を正確に反映させるための調査や測量です。
比較項目 | 二級建築士 | 土地家屋調査士 |
---|---|---|
合格率 | 22.3% | 9.6% |
偏差値 | 56 | 64 |
勉強時間 | 500~700時間 | 1,000時間 |
受験資格 | あり(建築科目の履修または実務経験が必要) | なし(学歴・性別・国籍・年齢関係なし) |
試験内容 |
※学科試験と製図試験は別日実施です。 |
※口述試験は別日実施です。 |
受験人数 | 22,328人(令和5年度試験) | 4,429人(令和5年度試験) |
土地家屋調査士は合格率や偏差値、勉強時間いずれを見ても高いレベルにあります。
試験科目も学科や作図、面接をこなす必要があり、二級建築士より難易度は上でしょう。
ちなみに、二級建築士の資格を持っている方は土地家屋調査士試験の「平面測量・作図試験」が免除されます。
比較3.木造建築士
木造建築士は木造建築物の工事や修繕ができる国家資格です。
合格するためには、一級建築士・二級建築士と同様、学科試験と製図試験をクリアする必要があります。
比較項目 | 二級建築士 | 木造建築士 |
---|---|---|
合格率 | 22.3%(令和5年度試験) | 44.5%(令和5年度試験) |
偏差値 | 56 | 不明(56未満) |
勉強時間 | 500~700時間 | 300~400時間 |
受験資格 | あり(建築科目の履修または実務経験が必要) | あり(二級建築士の受験資格と同様) |
試験内容 |
※学科試験と製図試験は別日実施です。 |
※学科試験と製図試験は別日実施です。 |
受験人数 | 22,328人(令和5年度試験) | 758人(令和5年度試験) |
木造建築士は二級建築士の下位互換といった位置づけです。
受験資格が二級建築士と同じなので、あえて建築制限の多い木造建築を選ぶ方は少数と言えます。
比較4.一級建築士
一級建築士は建築士として最高位に当たる国家資格です。
建築物の規模に関係なく、設計や工事管理が可能なため、戸建住宅から競技場まであらゆる建築物を手がけられます。
比較項目 | 二級建築士 | 一級建築士 |
---|---|---|
合格率 | 22.3%(令和5年度試験) | 9.9%(令和5年度試験) |
偏差値 | 56 | 66 |
勉強時間 | 500~700時間 | 1,500時間以上 |
受験資格 | あり(建築科目の履修または実務経験が必要) | あり(建築科目の履修または実務経験が必要) |
試験内容 |
※学科試験と製図試験は別日実施です。 |
※学科試験と製図試験は別日実施です。 |
受験人数 | 22,328人(令和5年度試験) | 不明(未発表) |
名前からもわかるように一級建築士は二級建築士より難易度が高い傾向にあります。
10人に1人受かるかどうかの難関資格ですが、二級建築士を取得していればすぐに一級建築士試験を受けられます。
二級建築士は独学で合格できる?
結論から言えば、独学で二級建築士に合格することは可能です。
近年、二級建築士合格に向けて予備校や通信講座を利用する方が増加しています。
徹底したスケジュールや個人相談など、予備校ならではの強みに惹かれる方が目立つようです。
しかし、時間的・経済的問題から独学で合格したい方もいるでしょう。
この章では、独学で合格を目指す際のポイントを解説します。
二級建築士の学習をする際には、費用を抑えて効率的に学べるスタディングの講座もおすすめです。
詳しくはスタディングのHPをご覧ください。
合格に必要な期間
独学の場合、二級建築士合格に必要な期間は1年が目安です。
あくまで建築科目を修了し、建築に関する基礎知識のある方が対象なので注意して下さい。
仕事と両立する形であっても、1日2〜3時間勉強すれば問題なく試験範囲を網羅できるでしょう。
設計製図対策が難関
二級建築士の設計製図試験は、独学で挑む方にとって難関と言えます。
正誤が明確な学科試験と異なり、設計製図は自ら採点・評価することが困難です。
さらに設計製図の技術は、作図と添削を何回も繰り返すことで身に付くため、過去問をこなすだけでは不十分です。
この問題を解決するには、設計製図のみ通信講座を利用するのが有効でしょう。
完全な独学に比べて経費はかかりますが、合格する可能性が断然高いといえます。
二級建築士の難易度:まとめ
今回は二級建築士の難易度を合格率や受験資格の観点から解説しました。
二級建築士の試験自体は、偏差値や合格率からも分かる通り、難関と呼べるかどうかのラインです。
確かに、二級建築士は受験資格や製図試験が存在する関係で、難易度の高い資格に分類される傾向にあります。
しかし、受験資格さえクリアできれば、半年から1年程度の勉強で合格できる試験とも言えるでしょう。
将来的に一級建築士を取得したい方も、足掛かりとして二級建築士にチャレンジしてはいかがですか。
二級建築士の試験勉強は、通信講座もおすすめです。
二級建築士の通信講座は以下の記事にてまとめているので、あわせて参考にしてください。
→二級建築士のおすすめ通信講座5選と失敗しない講座の選び方の記事はこちら