住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して、住宅を購入もしくは増改築した場合、ローン残高に応じて所得税の控除が受けられる制度です。同じく、寄附金額によって住民税と所得税の控除が受けられるふるさと納税がありますが、この2つの制度は併用できるのでしょうか?
結論から言いますと、ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できます。しかし、住宅ローン控除の金額やふるさと納税の税金控除の申請方法によって、控除上限額が変わるので注意が必要です。
今回は、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用したときの影響を徹底解説します!さらに、2つの制度を併用したときの控除上限額を年収や家族構成別に分けてシュミレーションしましたので、ぜひ最後までご覧ください。
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる
ふるさと納税と住宅ローン控除はどちらも、所得税と住民税の控除が受けられる制度です。控除上限額を比べると、住宅ローン控除の方が多いことからふるさと納税との併用はできないと思われがちです。
結論から言いますと、ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できます。ただ、ふるさと納税の税金控除の申請方法によって、住宅ローン控除を満額控除できない可能性があります。
まずは、ふるさと納税と住宅ローンの仕組みについておさらいしてみましょう。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、災害に見舞われた地域や自分のふるさと、思い入れのある地など好みの自治体に寄附ができる制度です。自己負担額2,000円を超えた寄附額の所得税と住民税が控除されます。たとえば、10,000円を寄附すると8,000円が所得税と住民税の控除対象となります。
出典:総務省|ふるさと納税ポータルサイト|ふるさと納税のしくみ|ふるさと納税の概要
一般的に、寄附による税金控除の割合は最大50%なので、ふるさと納税の方がより多くの税金控除を受けられるのでお得です。
しかし、ふるさと納税の人気の理由は税控除だけではありません。寄附金額に応じて、自治体から返礼品を受取ることができます。返礼品の内容は自治体により、バラエティ豊かで選りすぐりの逸品が揃っています。近年では、返礼品目当てにふるさと納税を利用する人が急増しているほどです。
ふるさと納税は、お得な税金控除も受けられ、さらに実質2,000円で魅力的な返礼品が受取れることから、多くの人に支持されています。
ふるさと納税を利用している人の中には「節税や減税になる!」と聞いて、はじめた人もいるかもしれません。しかし、ふるさと納税で節税や減税はできません。ふるさと納税は、自治体に「寄附した金額が税金控除となって戻ってくる」仕組みなので、住民税や所得税が減税されることはないのです。
住宅ローン控除の仕組み
住宅は一生に一度の買い物。土地・建物代含めて数千万円以上の費用がかかるのは珍しいことではありません。そのため、多くの人が住宅ローンを組むことになります。
住宅ローン控除とは、住宅を購入した人の金利負担の軽減を図るための税制度で、正式名称を「住宅借入金等特別控除」と言います。
その年のローン残高の0.7%、最大21万円を上限に所得税から13年間控除されます。所得税から控除しきれない場合は、課税所得金額の5%を限度に最大9万7500円が住民税から控除されます。
なお、長期優良・低炭素住宅を購入した場合、控除上限額は年間35万円になります。
多くの人は、住宅ローン控除=新築購入のみ適用と思われがちですが、実はそれは間違いです。住宅ローン控除の対象は新築だけでなく、中古住宅さらに増築・リフォームも対象になります。ただし、中古住宅や増築・リフォームの場合、新築後20年以内、大規模修繕などの要件がありますので詳しくはこちらをご覧ください。
No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
住宅ローン控除を受けるには、確定申告またはワンストップ特例制度のいずかの申請が必要です。
ただし、住宅ローン控除を初めて受ける場合(1年目)は、確定申告をしなければなりません。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用すると申請方法で控除額が変わる
ふるさと納税後と住宅ローン控除を併用するときは、申請方法が大きなポイントになります。なぜなら、申請方法の違いによって、住宅ローン控除を満額控除できない可能性があるからです。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合の申請方法は次の2つです。
ここからは、それぞれの申請方法が、住宅ローン控除にどのような影響を与えるか見ていきましょう。
確定申告をすると住宅ローン控除を使い切れない可能性あり
確定申告で税控除を申請すると、課税所得を算出するときに基礎控除や配偶者控除に加えて、ふるさと納税の寄附金額(自己負担分除く)も控除対象となります。そのため、ふるさと納税の寄附金額分だけ課税所得が少なくなり、所得税も減額されます。
住宅ローン控除をするとまず所得税から控除されます。確定申告をして、所得税が減額になり住宅ローン控除額よりも下回ると、控除しきれない分が出てくる可能性があるのです。
たとえば、所得税が20万円、住宅ローン控除が30万円の場合、10万円控除できなくなります。
もちろん所得税で控除出来なかった分は、住民税で控除することができますが、課税所得分の5%、最大97,500円という上限があります。所得税の減額により住宅ローンで控除しきれない金額が大きくなると、住民税の上限額を上回り、せっかくの控除が使い切れなくなる可能性がでてくるのです。
「税金控除を使い切れなくなっても問題ないのでは?」と思う方もいるかと思いますが、それは間違い。
なぜなら、所得税と住民税の納税額が少ないと、住宅ローン控除が占める割合が大きくなり、ふるさと納税で受ける予定だった控除が受けられなくなるからです。
つまり、住宅ローン控除を考慮せずにふるさと納税をすると、気付かないうちに控除上限額を超えてしまい、自己負担額が2,000円以上になってしまう可能性があるのです。
ふるさと納税で控除上限額以上の寄附をして自己負担額を増やさないよう、住宅ローン控除併用時に確定申告をするときは十分気を付ける必要があります。
ワンストップ特例制度の利用は住宅ローン控除に影響なし
ワンストップ特例制度を利用すると、ふるさと納税の寄附金額は住民税のみ控除されます。所得税に影響を与えないので、住宅ローン控除を満額使うことができることがほとんどです。そのため、住宅ローン控除を満額使っても、住民税に占める割合が少なく、ふるさと納税の住民税の控除に影響を与えることもありません。
ただし、例外もあります。
所得控除の増額により住宅ローン控除が所得税を大きく上回ってしまった場合、満額控除できなくなる可能性があります。
例えば次のようなケースが考えられます。
- 共働きだった配偶者が専業主婦になった
- 子どもが16歳以上となり扶養家族になった
このようなケースになると所得税の減額により、住宅ローン控除が使い切れなくなり、満額控除できなくなる可能性があります。
しかし、このような場合は、ふるさと納税の控除額シュミレーションを活用して前もって対応しておけば、住宅ローン控除を満額近く使い切ることができますよ!
住宅ローン控除をワンストップ特例制度で申請するのは2年目から
住宅ローン控除を満額まで使いたいなら、ワンストップ特例制度での税金控除申請がおすすめですが、1つ注意点があります。
それは、住宅ローン控除を受ける初年度は確定申告が必要で、ワンストップ特例制度が利用できないことです。
その他にも、ワンストップ特例制度を利用するには、次のような利用条件があります。
- 確定申告や住民税の申告が不要な給与所得者である
- 年間のふるさと納税の寄附先が5自治体以内
ふるさと納税と住宅ローン控除併用時により多くの税金控除を受けるためには、初年度は確定申告をし、2年目からワンストップ特例制度を利用しましょう。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用したときの計算方法
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用すると、申請方法によって控除金額が変わります。なぜなら、申請方法によって控除の計算方法が異なるからです。
ここからは、申請方法ごとに控除の計算方法を解説します。
それでは1つずつ見ていきましょう。
確定申告の計算方法
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用し、確定申告で税金控除の申請をした場合、控除の計算方法は次の通りです。
ワンストップ特例制度の計算方法
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用し、ワンストップ特例制度を利用して税金控除の申請をした場合、控除の計算方法は次の通りです。
2つの申請方法の計算方法の違いは、年収から課税所得を算出するときに、ふるさと納税の寄附金額を控除するか否かになります。
確定申告の場合、課税所得の算出時にふるさと納税の寄附金額を控除として差し引きます。そうすると、課税所得が少なくなり、本来納めるはずだった所得税・住民税も減額されるのです。
この課税所得の減少が、住宅ローン控除を満額控除できるかどうかに大きな影響を与えるので注意が必要です。
注釈※2及び3 住宅ローン控除で使い切れなかった分は住民税控除に当てられますが、課税所得の5%、上限97,500円までと決まっています。
【ケース別】ふるさと納税と住宅ローン控除併用のシミュレーション
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合、税金控除の申請方法の違いで住宅ローンを満額控除できなくなる可能性があります。税金控除の申請前に、住宅ローン控除を満額控除できるかどうか、事前に知っておきたいですよね。
ここでは、年収や家族構成、申請方法など条件の異なる3つのケースを用意しました。
それぞれのケースで、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用したときに住宅ローン控除を使い切れるかどうか確認してみましょう。
ケース1:年収500万円・共働き・住宅ローン控除30万円・確定申告(1年目)
住宅ローン控除1年目で確定申告をする必要がある場合を想定します。まず年収と家族構成から、ふるさと納税の控除上限額をシュミレーションしてみましょう。
ケース1の場合、ふるさと納税の控除上限額は61,000円が想定されます。今回は全てのケースにおいてふるさと納税を控除上限額まで寄附したとします。
年収からふるさと納税の寄附金額(自己負担額除く)、基礎控除などを引いて課税所得金額を割り出すと、所得税は13万円程度になると想定できます。
住宅ローン控除30万円は所得税13万円から控除しますが、控除しきれなかった17万円は住民税の控除に当てられます。しかし、住民税からの控除には、所得税の課税所得金額の7%、最大13万6500円という上限があります。
ケース1の場合、上限をはるかに超えてしまっているので、住宅ローン控除を使い切ることができません。
住民税からは、さらにふるさと納税の控除上限額61,000円も控除されます。
ケース2:年収600万円・配偶者あり・住宅ローン控除30万円・ワンストップ特例制度
住宅ローン控除2年目以降、ワンストップ特例制度が利用できる場合を想定します。ケース1と違い、配偶者が扶養の対象となっていることに注目してください。
ケース2の場合、ふるさと納税の控除上限額は69,000円となります。
ワンストップ特例制度の場合、ふるさと納税の寄附金額は所得税に影響を与えません。年収から基礎控除、配偶者控除などを引いて、課税所得金額から割り出される所得税は、17万円程度になります。
住宅ローン控除30万円は所得税17万円から控除しますが、控除しきれなかった13万円は住民税の控除に当てられます。
住民税からの控除には上限(所得税の課税総所得金額の7%、最大13万6500円)があります。ケース2の場合、住民税控除の上限に引っかかるかどうかギリギリのラインになり、住宅ローン控除を使い切れない可能性があります。
住民税からはさらに、ふるさと納税の上限控除額69,000円が控除されます。
本来ならば、ケース2はケース1よりも年収が高く、納める所得税が増額されることが予想されます。しかし扶養する配偶者がいることで配偶者控除が適用され、納める所得税が少なくなりました。そのため、ワンストップ特例制度を利用しても、住宅ローン控除を使い切れない可能性が出てきたのです。
そうなると、確定申告でもいいのでは?と思われるかもしれませんね。しかしながら、確定申告をすると配偶者控除だけでなくふるさと納税の寄附金額(自己負担額除く)も所得控除として差し引かれるので、納める所得税はさらに少なくなることが予想されます。
その結果、使い切れない住宅ローン控除がさらに増えてしまいます。よってふるさと納税と住宅ローン控除を併用するときは、ワンストップ特例制度の利用がおすすめです。
ケース3:年収800万円・配偶者と子ども1人(16歳以上18歳未満)・住宅ローン控除30万円・ワンストップ特例制度
住宅ローン控除2年目以降、ワンストップ特例制度が利用できる場合を想定します。先にシュミレーションしたケースと違い、16歳以上18歳未満の子どもが1人いることに注目してください。
先ほども紹介しましたが、16歳以上の子どもや親・親族を養っている場合は扶養控除が適用されます。扶養控除が適用されると、年収から所得課税を算出するときに最大63万円が控除され、本来納めるはずの所得税が少なくなります。
ケース3の場合、ふるさと納税の控除上限額は112,100円となります。年収が高いと扶養人数が多くてもふるさと納税の控除上限額は高額になりますね。
ワンストップ特例制度の場合、ふるさと納税の寄附金額は所得税に影響を与えません。年収から基礎控除、配偶控除さらにを引いて、課税所得金額から割り出される所得税は、32万円程度になります。
住宅ローン控除30万円は所得税32万円から控除します。今回の場合、所得税が30万円以上なので、住民税に割り当てることなく全て使い切ることができます。
住民税からはさらに、ふるさと納税の上限控除額112,100円が控除されます。
このように年収が高いと住宅ローン控除の金額によって、所得税のみで住宅ローン控除を使い切れるケースもあります。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用するときによくある質問
ここからは、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用するときによくある質問とその回答をご紹介します。
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用を予定している方は、ぜひチェックしてみてください。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合にお得な税金控除の方法は?
ふるさと納税の税金控除をするときに「ワンストップ特例制度」を利用するとお得です。
ワンストップ特例制度を使うと、ふるさと納税の控除が全額「住民税」から控除されます。一方、併用する住宅ローン控除は原則として、所得税から控除されます。そのため、互いの控除額の算出に影響を与えません。結果、住宅ローン控除、ふるさと納税の控除上限額を使い切ることができます。
ただし、ワンストップ特例制度を利用できるのは、住宅ローン控除2年目以降になります。住宅ローン控除を受ける初年度は、確定申告が必要となるのでご注意ください。
ふるさと納税と住宅ローン控除と医療費控除の併用はできる?
医療費控除の併用もできます。
医療費控除とは、年間10万円以上の医療費を支払った場合に税金控除が受けられる制度です。税金控除を受ける場合は、確定申告が必要になります。確定申告をするとワンストップ特例制度は利用できないのでご注意ください。
医療費控除を併用すると、所得課税が下がるので、ふるさと納税の控除限度額が変わります。ふるさと納税をする前に控除限度額シュミレーションで、寄附できる金額を確認しておきましょう。
ふるさと納税と住宅ローン控除と「iDeCo」の併用できる?
「iDeCo」の併用もできます。
「iDeCo」を併用すると、所得課税を算出するときに「iDeCo」の1年間の掛金が控除されるので、本来納めるべき所得税と住民税が少なくなります。そのため、ふるさと納税の限度額が変わりますのでご注意ください。
ただ、「iDeCo」の節税効果の方が大きいのでここはふるさと納税の寄附金額を抑えた方がお得です。
まとめ
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できます。
しかし税金控除の申請によって、控除額が少なくなる恐れがあるので注意が必要です。
併用する場合は、ワンストップ特例制度の利用がお得ですが、住宅ローン控除1年目は確定申告が必要なのでご注意ください。
また、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用し、確定申告をすると控除額が納税額を上回る恐れがあります。それゆえ、ふるさと納税の控除限度額内で寄附をしても2,000円以上の自己負担が発生する場合もあります。
住宅ローン控除初年度は、寄附金額をできるだけ抑える、もしくはふるさと納税を我慢した方が税金の恩恵が受けられそうです。お得にふるさと納税をするためにも、住宅ローン控除を併用したときに控除上限額を確認しておくことをおすすめします。
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