マンションやアパートなど収益物件のオーナーで売却を検討している方は、高く売れる時期はいつかと気になっているのではないでしょうか。不動産の売却はタイミングを誤ると、高く売れるどころか損をしかねません。また不動産のなかでも収益物件ならではの特徴や売却のコツがあり、それらについて知っておくことが大切です。
そこで本記事では、収益物件とは何かや売却するメリット・デメリット、売却する方法など収益物件に関することを詳細に解説していきます。収益物件の売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
そもそも収益物件とは何か?
収益物件とは、所有している物件を他者に貸して、毎月一定の賃貸収入を得ることのできる不動産のことで、例えば次のような物件があげられます。
- 戸建てやアパート・マンションなどの居住用物件
- 企業の事務所が入るオフィス系物件
- 飲食店やホテル・コンビニなどのテナント系物件
- 貸地
なお収益物件は自己居住用のマイホームではないため、購入するときは住宅ローンではなく不動産投資ローンを利用することになります。
不動産投資ローンについて、より詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。

収益物件を売却するメリット
収益物件を売却するメリットは、主に下記の2つが挙げられます。
- 利益が確定できる
- 売却益を他の用途に使える
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
利益と損益を確定できる
売却した時点で利益と損失を確定できるのが、1つ目のメリットです。収益物件を所有している間は、借り手がいて空室がない限り、毎月決まった賃料収入が得られます。しかし所有している間も物件は老朽化していき、室内の設備や外壁の塗装などを修繕しなければなりません。
他にもローンを利用している場合は金利が上がることで、支払いの総額も上がるなどの金利上昇リスクもありますが、売ってしまえば損失が出ることがなくなります。
売却益を他の用途に使える
売却によりまとまった資金を手にすることができ、他の用途に使うことができます。例えば、ローンの残債があれば売却したお金で返済に充てたり、残債がなかった場合は収益性の高い物件に買い替えることで、さらなる利益を生むことも可能です。
収益物件を売却するデメリット
収益物件を売却するメリットもありますが、次のようなデメリットもあります。詳しく見ていきましょう。
- 収益が得られなくなる
- 現金化できるまでに時間がかかる
収益が得られなくなる
収益物件は所有して借り手がいる間は、毎月賃料として収益が得られます。しかし、売却してしまうとその収益が得られなくなることは、最大のデメリットといえるでしょう。
賃料がきちんと入る収益性の高い物件であるほど、その収入が途絶えると家計などに大きな影響を与える可能性があります。
現金化できるまでに時間がかかる
収益物件を売却しようとしてもすぐに売れるとは限りません。不動産は売却を決めてから買い手がつくまでに、通常3~6ヶ月かかり、買い手が現れなければもっとかかることもあります。
建物の場合は比較的築浅であれば話は別です。しかし築年数が経過してそのままでは売れにくい場合は、リフォームなどをする必要が出てきて、そうなるとさらに時間がかかる恐れがあります。
収益物件の売却方法
収益物件の売却方法には大きく分けて2つあります。それぞれの方法とメリット・デメリットについても紹介していきます。
- 不動産会社に仲介を依頼する
- 不動産会社に買取を依頼する
不動産会社に仲介を依頼する
1つ目の売却方法として、不動産会社に仲介売買を依頼して収益物件の買い手を探してもらう方法があります。仲介での売却では、不動産会社と媒介契約を締結することで物件の売却が可能です。
このときに結ぶ媒介契約の種類は下記の表の通り3つあり、依頼できる会社の数や売却活動についての報告回数などが異なります。それぞれの特徴を知ったうえで自分に合う契約方法を選んでください。
媒介契約の種類 | 依頼できる会社の数 | 売却活動の報告義務 | 契約期間 | 指定流通機構への登録義務 |
一般媒介契約 | 複数社 | なし | 3ヶ月以内 | なし |
専任媒介契約 | 1社のみ | 14日に1回以上 | 3ヶ月 | 契約した翌日から7日以内 |
専属専任媒介契約 | 1社のみ | 7日に1回以上 | 3ヶ月 | 契約した翌日から5日以内 |
仲介のメリット
- 相場の価格と変わらない金額で売却できる
- 自分で売り出し価格を決められる
仲介は相場に近い金額で売却できるので、より高く売却したいと考えている人におすすめです。
仲介のデメリット
- 売却までに時間がかかる
- 仲介手数料が必要
仲介での売却は3~6ヶ月かかることが多く、売却完了までに時間がかかります。収益物件は時間が経つほど経費もかかるため、長引くことで利回りが下がる可能性もあります。
仲介にかかる仲介手数料
「売却価格=手元に残る額」ではなく、差し引かれる費用もあります。買取とは異なり、仲介の場合は仲介手数料が必要です。仲介手数料は上限が決められていますが、下記の速算式で簡単に求めることができます。
例えば3,000万円で売却した場合の仲介手数料の上限額は、次のようになります。
媒介契約について、より詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。

仲介手数料について、より詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。

不動産会社に買取を依頼する
2つ目の売却方法として、不動産会社に直接収益物件を買い取ってもらう方法があります。買い取ったあとで、不動産会社がリフォームなどの手入れをしたあとに売却する仕組みです。
買取のメリット
不動産会社に直接買い取ってもらうメリットは下記の通りです。
- 短期間で売却できる
- 仲介手数料は必要ない
- 人に知られずに売却できる
買取は不動産会社に直接買い取ってもらえるため、条件さえ合えば早く売却できます。また、仲介ではないため、仲介手数料も必要ありません。そして売却のための活動をしないため、周りの人に知られずに売却できます。
上記のことから、買取はできるだけ早く売りたいと考えている人にはメリットがあります。
買取のデメリット
買取にはメリットもありますが、次のようなデメリットもあります。
- 相場の価格よりも安い
- 物件によっては買取できない場合もある
買取の最大のデメリットは売却価格です。不動産会社が直接買い取るため、仲介と比べて早く売ることができます。ただし不動産会社は買い取ったあとに、リフォームなどの費用をかけて再販するため、相場の7~8割程度の価格でしか買い取ってくれないことが多い点には注意が必要です。
よって、より高く売ろうと考えている人にはデメリットな方法といえるでしょう。
買取について、より詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。

収益物件を高く売却するためのポイント
収益物件を売却するのであれば、誰もがより高く売りたいと考えるものです。そのためには、次のようなポイントを押さえて売却活動をすることが大切です。
- 高く売れるタイミングを狙う
- 利回りを基準とした適正価格で売り出す
- 複数の不動産会社に見積もりを依頼する
- 収益物件の売却が得意な不動産会社を選ぶ
高く売れるタイミングを狙う
できるだけ高く売却するなら、次のようなタイミングを狙って売り出すことが大切です。
- 大規模修繕の前
- 不動産価格の相場が上がっているとき
- 収益物件が満室になっているとき
建物はある程度の年数を迎えると、さまざまな部分が劣化していくため、外壁の塗装・給排水管の工事・屋上の防止工事などの大規模修繕が必要になりますが、その前に手放すことで修繕費用はかかりません。売却金額と修繕費用を比べて、修繕費用のほうが高い場合は手放したほうが、より高く利益を得られるでしょう。
また、不動産の価格相場が上がっているときも、高く売れやすい可能性があります。売却を考える前から基準地価・公示地価などを確認して、不動産の値動きについて把握しておくことが重要です。
収益物件が満室状態になっているときも、高く売れやすいタイミングです。収益物件が満室のときは収益価格が高いとされています。空室が多い状態で売ろうとすると、買い手に値下げ交渉されることがあるため、できるだけ満室に近いに状態にして売却するのがおすすめです。
相場の調べ方について、より詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。


利回りを基準とした適正価格で売り出す
収益物件を売りに出すときの価格は、適正な価格で売り出す必要があります。相場よりも著しくかけ離れた価格で売買されることはほとんどありません。
収益物件の売却価格の付け方は、利回りを基準に考えるとよいでしょう。投資家が収益物件を購入するときは、利回りを基準として考えることが多いからです。
利回りについて、より詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。

複数の不動産会社に見積もりを依頼する
収益物件に限らず不動産を売却するときは、必ず複数の不動産会社に見積もりを依頼しましょう。1社のみの見積もりでは、顧客を獲得するために相場よりも高い金額を提示されたとしても、その価格が適正であるのか判断することができません。
さらに複数社に相見積もりを依頼することで不動産会社間で競争意識が芽生え、より公平に透明性のある査定額を出そうとします。そして価格の比較ができ、妥当な価格がどのくらいであるかがわかります。
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一括査定サイトについては次の記事がおすすめです。

収益物件の売却が得意な不動産会社を選ぶ
不動産会社にはいろいろな得意分野があります。不動産売買・賃貸・買取・農地・再販などがあげられますが、収益物件の売却を依頼するなら、収益物件の売買を得意とする会社を選びましょう。過去に多くの収益物件の売買を取り扱っている会社は、収益物件についてのノウハウがあるため、より早くより高く売れる可能性が高まります。
また、その会社に信頼できる担当者がいるかどうかも重要です。会社自体は実績豊富であっても、担当者が信頼できずに相性が良くなければ、安心して大切な財産の売却を任せることはできません。良い担当者に巡り合うことでスムーズに取引を行えるでしょう。
不動産会社の選び方については次の記事もおすすめなため、参考にしてください。

収益物件の売却で発生する税金
収益物件の「売却額=手元に残る金額」ではありません。売却額から不動産会社への報酬や税金などを差し引いた額が、手元に残るお金です。ここでは売却したときに支払う税金の種類や、どのくらいかかるのかについて説明していきます。
譲渡所得税(所得税・住民税)
収益物件を売却して出た利益から、取得費などを差し引いた所得を譲渡所得といい、それに対する譲渡所得税として所得税と住民税が課せられます。売却したときの利益が大きいほど譲渡所得税は高くなり、所有していた期間によっても税率が変わります。
譲渡所得の求め方は下記の通りです。
譲渡価格には、売却代金と固定資産税などの精算金があれば足してください。取得費とは収益物件の購入代金と、購入したときにかかった仲介手数料などの費用を指しますが、不明な場合は譲渡価格の5%として計算します。譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった仲介手数料や測量費などです。
次に譲渡所得税の求め方ですが、下記の計算式で求められます。
売却した年の1月1日時点で所有した期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年超の場合は長期譲渡所得になります。所得税と住民税の税率は下記の表の通りです。
種類 | 所得税率 | 住民税率 |
5年以下の短期譲渡所得 | 30% | 9% |
5年超の長期譲渡所得 | 15% | 5% |
復興特別所得税
2037年までに譲渡所得税を課されるときは、復興特別所得税が課されます。所得税と住民税は期間に応じて税率が変わりますが、この復興特別所得税は期間によって変わらず、一律2.1%です。
計算するときに注意したいのが、譲渡所得に直接乗じるのではなく、基準所得税額を求めてから算出することです。
印紙税
不動産を売却したときは印紙税がかかり、不動産売買契約書に記載された金額によって金額は変わります。作成する際に定められた額面の収入印紙を契約書に添付し、それを消印することで納税されるものです。
2022年3月31日までに作成される不動産売買契約書は、租税特別措置法によって税額が軽減されています。売買代金ごとの印紙税の一覧を下記の表にまとめました。
不動産売買契約書の記載金額 | 印紙税額 |
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 1万円 |
1億円以下 | 3万円 |
5億円以下 | 6万円 |
記載金額がない場合 | 200円 |
登録免許税
住宅ローンの残債が残っている収益物件には、抵当権が設定されています。そのままでは売却することができないため抵当権抹消登記を行う必要があり、その際に支払う税金が登録免許税です。
税額は不動産1筆につき1,000円で、例えば1戸建ての収益物件を売却するときは、土地と建物にそれぞれ1,000円ずつ支払います。
不動産売却に伴う税金については次の記事もおすすめです。

収益物件の売却に関するQ&A
最後に収益物件の売却に関するよくあるQ&Aをまとめました。不安や疑問を解消することで、収益物件の売却をスムーズに進められるため、ぜひチェックしてみてください。
収益物件の売却にかかる費用は?
収益物件にかかる費用と金額の目安は下記の表の通りです。
費用 | 金額の目安 |
譲渡所得税 | 譲渡益の39.63%もしくは20.315% |
印紙税 | 5,000円から6万円 |
仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
抵当権抹消費用 | 不動産1筆1,000円 |
ローン返済手数料 | 金融機関で異なるが無料から返済金額の2%まで幅広い |
書類の取得費 | 1通数百円から |
不動産の売却にかかる費用について、より詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。

入居者の支払った敷金や保証金はどうする?
収益物件を売却したときに、入居者から預かっている敷金や保証金については、関東地方と関西地方では異なる慣習があります。関東地方では、敷金は買主である新オーナーに引き継ぎ、退去する際に新オーナーから返金されます。
一方関西地方の場合は敷金持ち回りといって、保証金は物件の売買価格の中に含まれていると考えるため、売主・買主間の保証金の申し送りはありません。入居者への返金の義務(返還債務)のみ引き継ぎます。
収益物件が売れない場合は?
売れないときは、そのままにしておいても早く売ることはできないため、早めに次のような対処をしましょう。
- 価格の値下げ
- 魅力的な物件づくりをする
- 広告の写真を工夫する
収益物件の売り出し価格が高い場合は、相場に合わせた価格まで値下げすることで売れる可能性が高まります。また、内覧者はいるものの契約にまで至らないことが多い場合は、不動産会社の担当者と原因を分析し、室内を整えるなどして購入意欲をそそる物件づくりをしてみてください。
他にも、ポータルサイトの物件紹介では多くの写真を掲載したり、見栄えの良い写真を選んだりしましょう。
物件を早く高く売るコツについては、次の記事もおすすめです。


まとめ
収益物件を売ることで利益と損益が確定でき、売却益を他の用途へ流用することで、さらに収益性の高い物件へ投資できます。しかし必ずしもすぐに売れるわけではなく、得られた収入がなくなることにより、家計等に影響が出ることもあるため注意が必要です。
また収益物件の売却方法は仲介と買取があり、早く高く売るためには、売り出しのタイミングや価格の付け方などコツもあります。不動産会社の担当者と相談しながら、物件の状況やご自身の状況に合わせて選択しましょう。本記事を参考にして、ぜひ収益物件の売却を成功させてください。
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