親から不動産を相続して「税金は発生するのか」「支払う税金の額は大きいのか」など、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、親から相続する際に発生する税金の種類や財産を相続する際の流れ、支払う税金の算出方法について解説します。加えて節税するための控除や特例、相続した不動産の活用方法についても説明するため、これから相続する不動産がある人は、この機会に相続についての知識を深めていきましょう。
不動産相続で支払う税金
まずは、不動産を相続すると発生する税金について把握しておきましょう。発生する税金は一つだけではなく、主に2種類あります。以下で詳しく解説するため見ていきましょう。
相続税
亡くなった人(以下、被相続人)の財産を家族が引き継ぐ際に、一定額を超えた金額に対して発生するのが相続税です。相続税は法律によって基礎控除額が決められているため、相続する不動産の価値がその額を超えた場合は税金が課せられます。
相続税は、亡くなった人の死を知った翌日から10カ月以内に納める必要があるため、なるべく早急に取り掛かるようにしましょう。
登録免許税
不動産の所有者が変わる場合は、その不動産の情報を亡くなった人から相続者へ引き継がなければなりません。これを所有権移転登記といいますが、いわゆる名義変更のようなもため、この登記の際に登録免許税という税金が課せられます。
登録免許税は以下のような式で算出できます。
固定資産評価額は市町村で毎年見直しされるため、相続する不動産の管轄する市町村のHPや窓口で確認するようにしましょう。固定資産評価額は1,000円未満は切り捨てで、登録免許税は100円以下の金額に対しては切り捨てになります。
登録免許税は原則として現金で納付しますが、30,000円以下の場合は収入印紙での納付が可能です。収入印紙は金融機関で購入するか、管轄の法務局によっては法務局で購入できる場合もあります。実際は30,000円以上でも収入印紙での納税が可能なケースもあるため、その場合は管轄する法務局で確認の上、登録免許税を納付するようにしましょう。
不動産を含む財産を相続する手続きの流れ
では実際に、不動産を含む財産を相続する際の手続きの流れについて解説していきます。亡くなってからでないと分からないこともあり、相続するまでにはいくつかのステップを踏む必要があります。
また、中にはスムーズに相続できないケースもあるため、どのような流れで相続に至るのかを確認しておきましょう。相続までの主な手順は以下の通りです。
- 遺言書の有無を確認
- 相続人を決定させる
- 被相続人の遺産状況を確認
- 遺産相続の分割協議をする
- 相続登記を行う
- 相続税の申告と納税
では、順に見ていきましょう。
STEP1:遺言書の有無を確認する
まず被相続人が遺言書を残しているか確認しましょう。もし、自筆遺言書を残している場合は相続候補人全員に伝え、必ず家庭裁判所にて確認してもらう必要があります。万が一、家裁が検認する前に自筆の遺言書を開封してしまった場合は、遺言書の効力は無効にはならないものの、法律で5万円以下の過料が課せられる場合もあるため注意しましょう。
また公正証書で遺言書を残している場合は、公正人役場で遺言書の内容確認が可能になるため、家裁での確認は不要です。遺言書がない場合もこれらの確認が不要なため、次のステップへ進みましょう。
STEP2:相続人を確定させる
相続するためには、相続人を確定する必要があります。そのため、相続人となる人達を洗い出しましょう。まず、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本を取得して、親や兄弟姉妹、子ども、孫などの親族関係を洗い出して相続人を確定させます。
相続人の範囲では配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の人は以下の表の順位で法定相続人になります。
法定相続の順位 | 続柄 | 相続の内容 | 法定相続割合 |
1 | 被相続人の子ども | 子どもが亡くなっている場合は直系卑属の子どもや孫が選定される |
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2 | 被相続人の直系卑属(父母、祖父母) | 双方存命の場合は、被相続人の世代に近いほうが相続人として選定される |
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3 | 被相続人の兄弟姉妹 | 兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合はその直属卑属の子どもや孫が選定される
※第1位、2位になる人がいない場合に相続人となる |
|
”参考:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」”
また、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本と相続人の住民票を法務局へ提出することで、相続人情報一覧図を作成して相続人の証明ができる制度もあります。上記の表にもあるように、相続人の順位によって相続割合が異なるため、相続するにあたって自身の順位がどこになるのかを把握しておきましょう。
STEP3:遺産の確認
相続人の確定ができたら、次に被相続人の遺産状況を確認しましょう。遺産はプラスになる財産もあればマイナスの財産もあります。それらの違いを以下の表にまとめたため、資産確認の参考にしてください。
財産分類 | 相続の分類 | 財産内容 |
プラスの財産 | 本来の相続財産 |
|
みなし相続財産 |
※被相続者の死亡に起因して得られる金銭 |
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マイナスの財産 |
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上記のように、プラスになる財産には本来の相続財産とみなし財産が存在します。また、マイナス財産の有無も確認しておきましょう。この際に双方の面で財産がある場合は、プラスの財産から葬儀費用やマイナスの財産を指しい引いた金額に、相続税が課せられることになります。葬儀代などの領収書は必ず控えておきましょう。
STEP4:遺産分割協議
遺言書があればその内容通りに遺産を分割します。もし遺言書がない場合は、相続人と相続する財産の内容を確認したら、相続人の間で相続する遺産の行き先を決める遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。
預貯金や簡単に現金化できるものに関しては、比較的スムーズに分割協議が進みますが、不動産を相続する場合は分割方法が複雑になりがちです。不動産の分割方法としては、以下のような方法があるため参考に一覧ください。
分割方法 | 分割の内容 |
現物分割 | 不動産をそのまま1人の相続人が相続すること |
代償分割 | 1人が相続するが、他の相続人に対して不動産の資産相応の金額を他の相続人に支払うこと |
共有 | 不動産をそのまま相続人同士で共有すること |
換価分割 | 不動産を売却して、その売却金を相続人で分配すること |
上記のような方法で分割方法を決定し、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。遺産分割協議書には法的な縛りはありませんが、相続人全員の署名捺印が必要です。相続人の中で了承が得られないと、相続の申告がスムーズに進まない可能性もあり、その場合は家裁にて遺産分割調停を申し立てる必要があることも知っておきましょう。
STEP5:相続登記
遺産分割協議が済んだら、所有権移転を移転するための相続登記が必要です。相続登記には、いくつかの必要書類があります。状況によっても必要な書類が異なるため、不動産を相続する場合はあらかじめ何が必要になるのか確認しておきましょう。
相続の状態 | 必要書類一覧 | 内容 |
法定相続人が1人または法定相続分で相続 | 戸籍謄本 |
|
住民票 | 法定相続人 | |
固定資産税評価証明書 | 相続する不動産 | |
遺産分割協議で決めた割合で相続 | ※上記の書類一式と以下の書類 | |
印鑑証明 | 法定相続人 | |
遺産分割協議書 |
相続登記は期限が定められていませんが、亡くなってから長期間時間を空けることで、被相続人の書類入手が難しくなります。被相続人の出生から死亡までの登記が必要になることから、書類入手にも思いのほか時間がかかるかもしれません。できるだけ早く上記の書類を集め、相続登記の申請書を作成して管轄する法務局に申請しましょう。
STEP6:相続税の申告・納税
亡くなったことを知った翌日から10カ月以内に申告する必要があります。期限が土日祝日と重なる場合はその翌日が期限日であるため、申告期限が10カ月以内であると同時に、納付期限も同じく10カ月以内です。
この申請は、被相続人の住所を管轄する税務署で行う必要があります。万が一納税に間に合わない場合は、税務署に相談して延納もしくは分割で納付してください。所定の期日までに支払われない場合は延滞金が発生する可能性があるため、あらかじめ相談しておきましょう。
不動産相続税を算出する流れ
ここまで相続する際の流れについて見てきましたが、この章では不動産相続税の算出方法の流れについて解説していきます。自身が相続する財産に対してどれほどの税金が課せられるのか、式に当てはめて目安を把握しておきましょう。
以下の解説では「プラスの財産が8,900万円でマイナスの財産が900万円、葬儀費用を300万円とし、法定相続人は子ども2人として平等に相続を分割する」というモデルケースを計算式に組み込んで紹介します。
遺産相続の額を算出する
まずは被相続者の所有していた全遺産額を足しましょう。全財産はプラスの財産とマイナスの財産を含めた資産を指します。算出方法としては以下のような式になるため、当てはめてみましょう。
以下、計算式内の【】はモデルケースの数字をあてはめています。
また相続税の対象とならない財産もあるため、以下の内容は省いた額で計算しましょう。
- 墓地や墓石、仏壇代
- 被相続人の生命保険金のうち500万円×法定相続人の数まで
- 被相続人の退職手当金等のうち500万円×法定相続人の数まで
- 相続財産のうち申告期限までに国や自治体、特定の公益法人に寄付したもの
他にも香典返しや初七日法事などの費用は、葬儀代として含めることはできないため注意が必要です。この際に赤字になる場合は、相続税納付は必要ありません。
課税対象額の算出
遺産相続額を確認できたら、以下の手順で相続税の総額まで計算していきましょう。
- 基礎控除額の算出
- 課税対象額の算出
- 法定相続人の取得金額を算出
- 早見表を基に相続税の総額を算出
まずは、基礎控除の計算式を用いて課税対象額を算出しましょう。計算式は以下の通りです。
上記のように基礎控除額を算出したら、次は課税対象額を以下の式から求めます。
この際に、基礎控除額が遺産総額を上回る場合は相続税を支払う必要はありません。
上の式で算出された金額に対し、法定相続の割合をかけて各相続人の取得金額を算出します。法定相続人がモデルケースのように子ども2人の場合は、以下のような式で各々計算します。
ここで算出した法定相続分に応じて課せられる税率が異なり、さらに法定相続割合の金額に対する控除額も異なります。平成27年1月1日以降に発生した相続税に関しては、以下の早見表を用いて計算式に取り入れましょう。
法定相続分に対する取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
”参考:国税庁「No.4155 相続税の税率」”
上記の早見表を基に、各法定相続人の取得金額に対して税率をかけ、その金額から控除額を差し引いた金額を人数分足した金額が相続税の総額になります。
モデルケースを用いた計算式は以下の通りです。
法定相続人ごとの相続税額を算出して按分する
相続税の総額を割り出したら、次は法定相続人ごとで相続税額を算出して財産の割合に応じて按分します。今回のように、平等に1:1で負担する場合の各相続人の税額の計算式は以下の通りです。
さらに、この相続税の税額から個人で適用できる控除を利用して、税額を差し引くことができます。控除の一例としては以下のような内容になります。
- 配偶者控除
- 未成年者控除
- 障碍者控除
- 相次相続控除
- 外国勢控除
- 贈与税控除額
これらの控除を受けられるのは、上記の計算式で求めた各相続人の相続税額が算出できたときです。もしこれらの控除に当てはまるものがある場合は、計算式を用いて自身のケースに当てはめて算出しておくとよいでしょう。この控除について詳しくは、後述する相続税を安くするための控除や特例を参照してください。
不動産部分の相続税の算出方法
原則として相続税は時価で評価されますが、不動産などの土地や建物に関しては、公平性を保つために国や自治体によって評価が設定されています。これを相続税評価額といいますが、建物部分と土地部分で計算方法が異なります。
そこでこの章では、相続税評価額の割り出し方について紹介するため、状況に合わせて情報を押さえておきましょう。
土地の評価額
相続税を算出するために、土地の相続評価額を割り出します。算出方法は路線価方式と倍率方式の2通りあり、土地がある場所などによって用いる計算式が異なります。方式ごとに詳しく見ていきましょう。
路線価方式
路線価方式は主に市街地の計算に用いる方法で、路線価は毎年国税庁が1月1日時点の価格設定をして、7月上旬ごろに更新される仕組みです。
路線価とは、その土地の道路に面する1㎡あたりの価格を指し、千円単位で設定されています。国税庁の路線価図の数字を基に面積をかけて計算しますが、路線価に対してその土地の形状に応じた奥行価格補正率をかけることで、価格の補正が可能です。路線価方式で割り出す評価額の計算方法は以下の通りです。
他にも路線価方式は異なる方法で評価額を算出できますが、路線価方式についてさらに詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてみましょう。

倍率方式
倍率方式は、市街地以外の部分や校外などの計算時に使われる方式です。路線価方式の計算に比べると、面積や補正率を用いることがなくシンプルな計算式です。
国税庁の路線価図・評価倍率表に記載のある通り、国税庁が地域ごとに固定資産税評価額と倍率を設定しており、その数値を基に計算します。計算方法は以下の通りです。
建物の評価額
建物部分の評価額に関しては、不動産の住所を管轄している自治体から年に一度送られてくる、固定資産課税証明書で確認できます。紛失した際は、役場に届け出て手数料を払うことで再発行が可能です。既存の建物部分の計算式に関しては以下の通りです。
一方建設中の建物に関しては、自治体に対して完成申請が未提出のため、固定資産税評価額は設定することができません。そのため、既存の建物とは異なる計算式にて評価額を算出します。
マンションを相続した場合の評価額
マンションを相続した場合は、敷地部分(敷地権)と建物部分(専有部分)を足した額を相続評価額とします。各計算式を以下にまとめました。
土地部分のマンション全体の評価額については、「土地の評価額」で解説した土地部分の方式で算出しましょう。持ち分割合が不明な場合は登記簿にて確認できます。手元に登記簿がない場合は、法務局で取り寄せるなどして持ち分を確認してください。
また、以下の記事では相続した不動産に対する目安の時価についても紹介しているため、相続する際の参考にしてください。

貸家の場合の評価額
賃貸などに与している不動産を相続した場合は、一般的な不動産を相続する場合と比較すると、評価額は土地と建物それぞれで30%ほど軽減されます。賃家の場合の評価額の算出式は以下の通りです。
また土地部分に関しては、路線価方式または倍率方式のいずれかで土地の評価額を割り出して、以下の式で算出ください。
相続税評価額に対する借地権割合は、各自治体で設定しているため詳しい数字は異なりますが、おおよそ60~70%で設定されています。その例に当てはめると60%の場合は18%、70%の場合は21%の評価減です。
不動産を相続する際の相続税評価額について、以下の記事では詳細を記載しています。評価額の算出についてさらに詳しく知りたい人は、あわせてご覧ください。

相続税を安くするための控除や特例
相続税は相続する金額が大きいほど各法定相続人の税負担が増えますが、各相続人でそれぞれ控除を受けられます。ここでは、その詳しい控除の内容について紹介していきます。使える控除について知り、相続税を上手に節税しましょう。
基礎控除
基礎控除とは、遺産総額から無条件で引くことができる控除で、法定相続人の数に応じて変動します。基礎控除の算出方法については以下の通りです。
配偶者控除
配偶者の場合基礎控除に加え、配偶者控除によって相続税が軽減されます。この配偶者控除は、以下のいずれかに該当しない限りは無税になる制度であるため確認しておきましょう。
- 相続税総額が1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分
上記のように、配偶者控除は大変大きな減税制度であることが分かります。この控除を受ける際のポイントは以下の4点になるため、当てはまるか押さえておきましょう。
- 戸籍上の配偶者にあたる(亡くなる前3日のみの婚姻関係もこれに該当)
- 隠し財産など意図的な申告漏れの財産がないかどうか
- 遺産分割協議によって遺産の分割が確定している
- 相続税の申告書を提出している
上記の内容がクリアできている場合は、配偶者控除の恩恵を受けることができます。
未成年者控除
20歳未満の未成年者が法定相続人になった場合は、以下の条件を満たすことで相続税に対して控除を受けることができます。
- 遺産を相続したときに住所が日本国内であること
- 遺産を相続した際に20歳未満であったこと
- 遺産を相続したのが法定相続人
また、上記の条件以外にも相続時に住所が日本国内にない場合は、以下の条件を満たす必要があります。
- 日本国籍を持ち、なおかつその人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を置いていた
- 日本国籍を持ち、なおかつ相続開始前10年以内に日本国内に住所を置いていた
- 日本国籍を有していない人
以上の条件を満たすことで、以下のような控除を受けることが可能です。
ただし1年未満の期間は切上げになるため、計算時には注意が必要です。もし上記の計算式で未成年者の控除額から控除しきれない場合は、その扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。
障害者控除
障がい者控除は、被相続人が障害者であるかどうかが関係するのではなく、法定相続人となった85歳未満の障害者が、一定の条件を満たすことで受けられる控除で以下が条件です。
- 財産を相続した際に日本国内に住所を有する人
- 財産を相続した際に障害者である人
- 財産を相続した人が法定相続人
また控除額の算出方法は、以下の表のように段階に分けて2種類あるため確認しておきましょう。
段階 | 内容 | 控除の算出式 |
一般障害者 |
|
満85歳になるまでの年数×10万円 |
特別障害者 |
|
満85歳になるまでの年数×20万円 |
相次相続控除
相次相続控除は、10年以内に2回の相続が発生した人が受けられる控除で、2回目の相続時に過去1回目に支払った相続税の一部の控除が受けられる仕組みです。この控除も一定の条件を満たしている必要があるため、以下にて確認しておきましょう。
- 被相続人の相続人であること
- 相続開始10年以内に開始した相続により、被相続人が財産を取得していること
- 相続開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されていること
算出方法は他の控除と比較すると複雑なため、ここではA~Eまでのアルファベットを使用し、計算式を簡略化して説明します。計算式とアルファベットの内容は次の通りです。
相次相続控除の計算式 | 計算内容の項目 |
A×C÷(BーA)×D÷C×(10ーE)÷10
※BーAがCより小さい場合は、C=BーAとして計算
|
|
相次相続控除の計算は、1回目、2回目と計算に使う数字が複数あることから難しくなりがちです。しかし評価額などを利用して計算式に当てはめることで、控除額の計算が楽になります。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例では、一定の要件を満たす居住用や事業用の不動産を相続した場合に、相続税評価額を最大で80%減額することが可能です。この小規模宅地等の特例は3種類の土地が該当します。被相続人が住んでいた土地、被相続人が事業を行っていた土地、被相続人が賃料を得るために貸していた土地の3種類です。
これらの利用区分によって、限度面積や減額される割合は50%もしくは80%になります。その中でも被相続人が相続直前まで住んでいる土地で特例を受ける場合は、以下のいずれかが適用要件の対象です。
- その土地の取得者として配偶者が相続するケース
- 相続は被相続者と同居していた相続人が行うケース
- 「家なき子」特例の要件を満たしているケース
また、この中でいう「家なき子」特例というものは、同居していなかった親族に対しても、要件を満たすことで特例を受けることができる制度です。しかし、この「家なき子」特例の要件は厳しく制定されており、この特例を受けるためには次の要件をすべてを満たしている必要があります。家なき子特例を利用して小規模宅地等の特例を受けたい場合は、しっかりと要件の内容を把握しておきましょう。
- 被相続人に配偶者も同居人もいない
- 3年以内に相続人が自己所有している家に住んでいない
- 3年以内に相続人が三親等以内の親族の家に住んでいない
- 相続開始3年以内に、相続人と特別な関係のある法人が所有している家に住んでいない
- 相続開始の時点で過去に住んでいた家を所有していない
- 相続した家を10カ月以内に売却していない
これらの要件に一つでも当てはまるものがない場合は、「家なき子」特例を使って小規模宅地等の特例で、控除を受けることができなくなるため注意が必要です。
生前贈与
土地の資産価値が高い場合は、生前贈与を利用した節税方法を検討してみるのもよいでしょう。被相続人が存命時に行う生前贈与するメリットは次の通りです。
- 贈与したい相手を決められる
- 贈与によって財産を減らすことで相続税を減額する
- 難解な手続きが不要で比較的短期間で贈与できる
土地の資産価値が元々高いと分かっている場合は、生前贈与にすることで相続税を減額できます。生前贈与が可能な場合は、相続する際の選択肢として入れておきましょう。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、限度額2,500万円まで何度でも控除することができる制度です。対象は60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の相続人になるであろう子どもや孫に対して贈与した場合に限られます。生前に渡したい資産の価値が高い場合は、この制度を利用することで税金の支払いを先延ばしにできます。
ただしこの制度を利用した場合はその後の贈与に関して、限度額まで相続時精算課税制度が適用されてしまう点には注意が必要です。相続税の特例でもある小規模宅地等の特例が使えないなどのデメリットもあるため、利用時には慎重に検討しましょう。
外国税額控除
外国税額控除は、日本以外で相続税を収めたことがある場合に使える制度で、国内で課税される相続税の納めた分に対して差し引くことができます。この控除の適用要件は以下の通りです。
- 相続または遺贈により財産を取得した
- 上記により取得した財産が日本国外にあること
- 上記において取得した財産が、その相続税を納めた所在国で相続税に相応する課税があったこと
国外で相続税を納めたことがある人は、この特例の要件を満たしているか確認しておきましょう。
相続した不動産の活用方法
被相続人が大切に管理していた不動産ですから、有効に活用しない手はありません。ここでは、相続してから有効に活用できる主な活用方法について紹介します。
- アパートや貸家などで収益化する
- 相続した自分や家族でマイホームとして住む
- 売却して財産にする
上記の活用方法はあくまで一例であるため、自身にとって納得のいく方法で活用しましょう。
土地の活用に関してさらに詳しく知りたい人は、以下の記事で詳細を紹介しているためあわせて読んでおきましょう。

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まとめ
不動産を相続するためには相続税評価額を求めるなど、いくつかの手順を踏んだうえで申告しなければなりません。申告までの流れや仕組みをあらかじめ知っておくことで、相続手続きをスムーズに進めることができます。
また相続の手続きを進めるためには、相続税評価額や控除額について計算する必要があり、提出期限や納付期限が定められている中で計算することは、手間に感じられるかもしれません。しかし本記事で紹介した算出方法を参考にしていただくことで、ご自身の条件を当てはめるだけで計算可能なため、ぜひ試してみてください。不動産を含めた相続の内容や特例について理解を深め、損のない不動産相続を目指しましょう。
不動産相続税については次の記事でも紹介しているため、これから相続する際の参考にしてみてください。


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