RFID 挿絵

便利な世の中になった。それでも「21世紀にもなって」「平成も終わろうかと言うのに」「お前、もう35やぞ」というような状況に遭遇することも多い。

最後のは個人的な話なので置いておくが、突然の風雨に見舞われ、コンビニに駆け込んで購入した500円傘が開いた瞬間突風で大破したときなど、「ヴァーチャルリアリティとか出てきている世の中において、貴様の進化の無さはなんなのだ」と思わざるを得ない。

もちろん「VR傘」を出してくれという意味ではない。「もうちょっと便利になれるんじゃないか」という作業や物が、まだこの世には多いということだ。

使い物になるのに20年近くかかる上に、一生使えない物もよく混じっている人間の方が「もう少し効率的にならんか」という気がしないでもないが、人間が非効率な生き物な以上、システムや道具に効率的になってもらうしかない。

例えば、レジ。商品についたバーコード読み取りでの会計が当たり前となり、金額を手打ちしていたころに比べれば格段に早く正確になったが、未だに人間が一つひとつ商品のバーコードを読み取っているところがほとんどだ。よって、スーパーなど大量の商品を買う店では、大抵レジ待ちの列ができてしまっている。

それらを緩和するために、混雑状況を予測してレジに人を増やすシステムや、セルフレジなどが導入されているが、根本的解決とは言い難い。

ちなみに、セルフレジだが私の使ってみた感想は「息が上がる」だ。大量の商品のバーコードを読み取っちゃカゴに入れる、という作業は結構疲れるし、店員に比べて慣れてないから、時間も思ったよりかかる。

つまり「バーコードを1個1個読み取る」という作業自体、「もう少し何とかならねえのか」という話なのである。

そして、何とかする技術が、今回のテーマ「RFID」だ

画期的技術を「信用」できる?

「RFID」(radio frequency identifier) ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm~数m)の無線通信によって情報をやりとりするもの、および技術全般を指す。(引用:「RFID」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年1月22日 (月) 17:00)

この「ID情報を埋め込んだRFタグ」なるものが、従来のバーコードの代わりになるようだ。それを専用の機械で読み取るわけだが、その読み取り技術のすごさが今までとは違う。

まず、一つひとつ読み取らなければいけなかったバーコードと違い、「RFID」では一括読み取りが可能だそうだ。また、接近しないと読み取れないバーコードと違い、距離が離れていても読み取り可能である。レジから3メートル離れた客の商品を読み取る状況はなくても、棚卸しなど、高い位置にある商品の読み取りなどで活躍できる。

また「RFID」ではタグが見えている必要すらなく、箱に入った状態でも読み取ることができるそうだ。さらに、そのタグが五体満足でなくても大丈夫だという、多少汚れていたり、上にテープが貼られていたりしても、お構いなしに読み取るらしい。

今すぐ、すべてのバーコードをRFタグに貼り変えろ。そう言いたくなるが、もちろん「新しい物は高い」というお馴染みの問題がある。便利だが当然「RFID」の方がバーコードよりコストがかかるため、今すぐに全国普及、とはいかないようだ。

だが、すでにユニクロが在庫管理にこの「RFID」を導入していたり、コンビニ商品用タグの開発もされていたりするようなので、いつかは、スーパーのレジも「RFID」により一瞬で会計金額が表示され、行列が解消されるかもしれない。

それにしてもこの「RFID」、「かざすだけで、一括でデータが読み取れる」という技術が画期的すぎて、逆に「信用するのに時間がかかりそう」である。

「鉄の塊が飛ぶ」飛行機だって、「腹を割いて内臓をいじる」手術だって、最初は「大丈夫か、それ?」と思われていただろう。「RFID」も「一括でデータ取れました」と言われても「本当か?」と一つひとつチェックしてしまったり、箱から出さずに読み取れる、と言われても、心配だから箱から出してやってしまったりする気がする。

今でさえ、エクセルが計算したデータを一応電卓で計算しなおしてしまったりするし、実際それで間違いが見つかったりする。何故間違っていたかというと、計算式の入力が間違っていた等の「人為的ミス」からである。

「RFID」も元々人間が作ったものなのだから、過信はできない。

<作者プロフィール>

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カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年1月30日(火)掲載予定です。