そして、カスプ磁場構造を適用して磁力線の形状を変化させたところ、プラズマ発生部壁面への粒子損失が減少し、推力が60mNから約80mNまで増大することが確認された。この際の燃料の質量流量、高周波電力、および推力計測結果から見積もった推進効率は約30%となり、これまでの最高性能20%から更新することに成功したという。
今回の実験で発生したプラズマは、閉じ込められている位置が確認されていることから、プラズマ発生モデルにこのカスプ磁場を組み合わせたモデルでの推力解析が実施されたところ、実験結果を説明できることが示されたともしており、この結果により、プラズマ発生部における粒子損失抑制と磁気ノズルによる推力発生機構を用いることで、無電極プラズマ推進機の高性能化が可能であることが示されたことから、将来的にイオンエンジンやホールスラスタに続く、次世代の大電力電気推進機の実現に寄与することが期待されると高橋准教授は説明している。
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ヘリコンスラスタの概略図。プラズマ生成・加熱(plasma production/heating)領域で生成されたプラズマが、磁気ノズル領域における種々の加速・運動量変換過程(Momentum conversion)を経て宇宙空間へと噴射(Plasma detachment)され、その反力として推力が発生する (出所:東北大プレスリリースPDF)
なお、高橋准教授は今後、作動環境の影響(スペースチャンバーのサイズや残留ガスの影響)の検証やエンジニアモデル・プロトタイプの開発、関連する物理現象の理解を国際共同研究も含めて進める予定としている。