水素ガスタービンのNOx排出量低減技術を確立するため、今回の研究では、マイクロミックス燃焼技術を適用したドライ方式燃焼器に、さらなる改良が実施。初期設計のマイクロミックスバーナーの燃料噴射孔形状を変更するとともに、同様に川崎重工が独自開発した「追いだきバーナー」を追加することで、NOx低減と水素・天然ガス混合燃料への対応を実現したとする。なお追いだきバーナーとは、燃料の一部を分割し、燃焼器の途中から追加的に噴射して燃焼させるバーナーのことだという。

今回の実証では、これらの改良を適用したドライ方式燃焼器が実証プラントに搭載され、性能検証のための運転試験が実施された。その結果、NOx排出量については無負荷から定格負荷の全運転範囲において、大気汚染防止法の規制値の半分となる35ppm(O2=16%換算値)以下が達成された。この性能であれば、脱硝装置を設置せずともNOx規制値をクリアできる地域をより拡大できるとする。

  • 水素CGS実証プラント

    今回実証に成功した、水素CGS実証プラント (出所:川崎重工プレスリリースPDF)

また、水素・天然ガスの混合燃料に対しては、水素が発生熱量比で20%混合(20cal%)・水素が燃料ガスの体積比で50%混合(50vol%)まで低下させた運転に成功。水素混焼から専焼まで広い範囲にわたっての運転が実現された。

  • マイクロミックス燃焼器

    (左)マイクロミックス燃焼器(2020年)。(中央)マイクロミックス+追いだき燃焼器(2022年)。(右)マイクロミックスバーナーを用いた水素・天然ガス混合燃料の燃焼試験(燃焼器要素試験)の様子 (出所:川崎重工プレスリリースPDF)

研究チームによると、マイクロミックス燃焼技術は初期設計の燃焼器では水素専焼は可能だったものの、水素・天然ガス混合燃料への対応は困難だったというが、今回の改良によりその課題が克服され、混焼範囲の拡大に成功。ドライ方式水素ガスタービンにおけるNOx排出量の低減と混焼範囲の拡大に対する技術が確立され、社会実装の促進に対して貢献できることが期待されるとしている。

なお、川崎重工では今回の実証において、「マイクロミックス+追いだき燃焼器」の製品化に向けてさらなる検証を進めると同時に、2022年度末までに今回の開発成果を適用した水素ガスタービンによる熱電供給の実証を行う予定としている。