Intelが米GLOBALFOUNDRIES(GF)を約300億ドル(3兆3000億円)で買収する契約を模索していることを業界関係者の話として米Wall Street Journal(WSJ)が報じている

GFは、アラブ首長国連邦アブダビ首長国連邦政府の国営投資会社Mubadala Investmentが所有しており、米国に拠点を置いている売上高世界第4位のファウンドリ。台湾TrendForceの調べでは、ファウンドリ業界でのシェアは7%で、14/12nmプロセスで微細化をやめてしまったため、その売り上げは減少傾向にある(ファウンドリ業界シェアの上位3社はTSMC、Samsung Electronics、UMC)

GFの広報担当は、Intelと売却交渉を進めている事実はないと否定しているが、Intelの実際の交渉相手がアブダビのMubadalaである可能性もあるという。Mubadalaは、2021年に入りGFの新規株式公開(IPO)を進める準備をしており、IPOを優先し、この買収が成立しない可能性もあるという。

このGFというファウンドリ企業、もともとはIntelのライバルであるAMDが半導体製造部門を分離したものである。このため、GFにとってAMDは、長年にわたり最大の顧客であったが、2018年、AMDは、先端プロセスを用いたプロセッサの製造委託先をそれまでのGFからTSMCに切り替えている。しかし、それ以外の部分の製造などに関する供給契約を2021年に入って、約16億ドルの複数年契約の形で合意しており、こうした事情を踏まえると、Intelによる買収はそう簡単にはいかないと半導体関係者は見ている。

IBMから損害賠償を請求されているGF

2021年7月時点の話だが、GFは契約不履行で25億ドルの損害賠償をIBMから求められている。

IBMは2014年当時、半導体製造事業から撤退を表明。老朽化したファブ群をGFにIBMが15億ドルを支払う形で引き取ってもらった。IBMは、GFが10/7nm以降の微細プロセスでの製造も継続し、IBMからの製造委託に応じることになっていたが、14/12nmプロセスで微細化競争から撤退してしまったことが契約違反に該当するという。IBMは現在、7nmプロセスでの半導体製造をSamsungに依頼している。

Intelは、2021年3月のIDM 2.0宣言を発した際、半導体先端技術開発でIBMと協業していくことを公表しており、それぞれの会社間の関係が複雑に絡み合っている。

Intelの狙いはどこにあるのか?

IntelのPat Gelsinger CEOは2021年3月、ファウンドリビジネスへの本格参入を発表し、米アリゾナ州に200億ドルを投じてファブを2棟建てるほか、欧州にもファウンドリビジネスのファブを建設する計画を発表している。

同社は、2010年代にファウンドリサービスに参入したことがあるが、IPコアの問題など、うまく事業として立ち上げることができず、ファウンドリビジネスを成功させるノウハウを持ち合わせていない。そのため、IDM 2.0宣言でのファウンドリサービス再参入に対しても成功を危ぶむ声が業界内にはある。今回のIntelの動きが本当であるのであれば、GFから製造受託のノウハウと顧客リストをもらい受けることで、ファウンドリでのシェアを急拡大させることでプレゼンスを示し、それにより最大手のTSMCに対抗していくという筋書きが見えなくはない。